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「てんこ盛りの薬」で苦しませないために。動物たちの尊厳を守る「3ヶ月検診」という選択

いつも「さだひろ動物病院」をご愛顧いただき、大切なご家族の命を私たちに預けてくださり、本当にありがとうございます。院長の貞廣です。

最近、診察室で飼い主様から「なぜ定期検診の頻度が3ヶ月に1回と増えたのですか?」「費用の改定はどうしてですか?」というご質問をいただく機会が増えました。皆様が疑問に思われるのは当然のことです。


本日は、当院がなぜ「3ヶ月ごとの検診」をどうしても譲れない絶対のルールとさせていただいているのか、その背景にある「獣医療の厳しい現実」と「私たちが守りたいもの」について、お話しさせてください。

世界的な物資不足という「現実」

  • 連日ニュースで報道されている通り、緊迫する国際情勢や原油価格の高騰により、あらゆる物価が上昇しています。
  • 現在、動物たちの命を繋ぐための基本的な医療物資――特に、点滴や注射のルートを確保するための「留置針」などのプラスチック製品類――の供給が非常に不安定になっており、全国の動物病院で確保が難しいという危機的な状況が起きています。

訴訟社会化と「果てしない賠償金」がもたらす防衛医療

  • もう一つ、皆様に知っておいていただきたい現実があります。近年、獣医療過誤を巡る裁判が増加し、判決で命じられる賠償金の額が果てしなく高騰し続けています。
  • 現在起きているのは、万が一の不可抗力な急変(院内でのてんかん発作など)でさえも「管理体制の不備」として高額訴訟の標的にされる異常な事態です。
  • 終わりのない訴訟リスクから病院を守るため、現代の獣医療は「訴えられないための防衛医療」を強いられ、それが医療費をさらに押し上げる原因にもなっています。

選択肢の多さが生む「悲劇」と、動物の「尊厳」

  • この「防衛医療」と、高度化によって増えすぎた医療の選択肢が合わさるとどうなるでしょうか。
  • あらゆる疑念を数値で払拭するという動きに変わり、麻酔を必要とする検査までも過剰に行われていくことでしょう。
  • 命の引き際を決めるという一番重い責任が曖昧になり、飼い主様が「やれることは全部やらなきゃ」と追い詰められてしまいます。
  • その結果、言葉を話せない動物たちが、最期の日々を無数の管に繋がれ、まるで実験動物のように検査まみれになっていく。さらに恐ろしいのは「てんこ盛りの薬」です。
  • たくさんの薬は、それを解毒・排泄しようとする動物たちの小さな「肝臓」や「腎臓」を確実に破壊していきます。病気を治すための薬で内臓が破綻し、かえって苦しみながら最期を迎える。
  • 私は獣医師として、それはあまりにも「可哀想だ」と強く感じます。私たちが目指すのは、人間のエゴや社会の歪みを押し付ける過剰な延命治療ではありません。

優しく、穏やかな医療のための「3ヶ月検診」

  • 物資が不足し、訴訟リスクが蔓延する中で、不測の事態を防ぎ、かつ、あの子たちの内臓を「てんこ盛りの薬」から守るためにどうすればいいか。
  • 私たちがたどり着いた結論が、「病気が悪化する前に、先回りして最小限のコントロールをする」ことです。
  • 犬や猫の時間は、人間の約4倍のスピードで進みます。つまり、獣医療における「3ヶ月」は、人間の医療における「1年(年次健診)」に相当します。
  • 医学的な理想を言えば、人間の半年検診に相当する「1ヶ月半ごとの検診」を行うのがベストです。しかし、頻繁な通院は動物たちにとって大きなストレスになり、飼い主様のご負担も重くなります。
  • 動物たちの心身のストレス、ご家族のご負担、そして「絶対に急変を防ぐ」という絶対防衛ライン。これらをすべて天秤にかけ、私たちがギリギリまで熟考して導き出した最適解が、「3ヶ月に1回」なのです。

なぜ当院はスタッフを「使い捨て」にしないのか

  • 時折、「気に入らないスタッフはすぐにクビにして、新しい人を入れればいい」と言われることがあります。しかし、私は絶対にそのようなことはしません。
  • 日本の獣医療は「自由診療」です。もしスタッフを次々と入れ替えれば、毎月何十万円という人件費や数百万の教育コストが水の泡になり、それは皆様の「診察料」に上乗せされます。さらに私が新人教育に追われれば、最新の獣医療を勉強する時間が奪われ、動物たちへの不利益に直結します。
  • いま、私の隣で共に皆様の家族の命を守り抜いてくれているスタッフは、「かけがえのない戦友」であり、数百万、数千万円する最新医療機器以上の価値がある最大の財産です。
  • てんかん発作や呼吸不全でパニックになり揺れ動く身体を、極力ストレスをかけないようミリ単位の力加減で優しく保定し、介助する技術。言葉を話せない動物の些細なサインから緊急事態を見抜く能力。そして、安全かつ確実に採血や皮下点滴などの処置を遂行する技術。
  • 実のところ、どれほど時間をかけて指導を行っても、動物の動きを予測し呼吸を合わせる「臨床のセンス」がなければ、これらの技術は誰にでも習得できるものではありません。
  • これらは「受付で愛想が良い」といった表面的な接客スキルとは次元が違う、命を繋ぐための専門技術です。

カスハラからスタッフを守り抜くことが、皆様の利益に直結する理由

  • だからこそ、私は一部の「心ない言葉(カスタマーハラスメント)」や理不尽な要求から、この大切なスタッフを全力で守り抜きます。
  • もし、心ない言葉によってこの貴重な戦力が心を削られ、当院を去るようなことがあればどうなるか。私一人では、年間数千頭にも及ぶ動物たちの治療をこれまで通りに行うことは不可能になり、結果として「救えたはずの命が失われる」という最悪の結末を招きます。
  • 私がスタッフを守り、共に成長していく道を選ぶのは、決して身内贔屓ではありません。当院を信じて通ってくださる「大多数の善良な飼い主様と、その大切なご家族の命(最大の利益)」を死守することに直結しているからです。

「電話対応」という幻想と、私たちが本当に時間を割くべき相手

  • もう一つ、私たちが「表面的なサービス」を切り捨てた背景には、動物病院の電話を取り巻く不条理な現実があります。
  • 現在、日本全体で犬や猫の飼育頭数が減少している背景もあり、動物病院の経営不安を煽るコンサルティング会社や業者からの営業電話が爆発的に増えています。
  • 皆様は驚かれるかもしれませんが、病院に鳴り響く電話の多くは、助けを求める飼い主様からのSOSではなく、「この病院からいかに金をむしり取ろうか」と狙うスパムのような電話ばかりなのです。
  • 目の前で苦しんでいる動物たちや、本当に時間を割くべき目の前の飼い主様を蔑ろにして受話器を取れば、延々と続く長いセールストークが始まります。
  • 命の最前線で戦う私たちにとって、これほど貴重な時間を奪う無駄はありません。だからこそ、私はこうしたスパム対応に時間を奪われるのが馬鹿馬鹿しくて、従来の「いつでも愛想よく電話に出る」ということをきっぱりとやめました。

「アットホーム」という、残酷な勘違い

  • 最近、動物病院の広告でよく目にする「アットホームな雰囲気」という言葉。私は、これほど滑稽で、動物たちを無視した言葉はないと感じています。
  • はっきり申し上げます。皆様の大事な「ふわふわ」たちは、病院のことをアットホーム(家庭的)だなんて、1ミリも思っていません。
  • 消毒液の匂い、他の動物たちの警戒フェロモン、そして自分に針を刺しに来る人間。彼らにとって病院は、どう足掻いても「非日常の恐ろしい場所」であり、生存を脅かす戦場なのです。
  • 「お家みたいで安心だね」と微笑むのは、飼い主様だけです。それは動物の幸せを願っているようでいて、実は「自分が見ていて辛くないように、殺伐とした医療の現実をデコレーションしたい」という、人間のエゴに過ぎません。
  • 病院は、家族ごっこをする場所ではありません。病気を治し、命を繋ぎ止めるための、冷徹で神聖な「聖域」です。
  • 本当の優しさとは、愛想笑いでその場を誤魔化すことではありません。動物たちが「ここは怖い場所だ」と絶望しているその時間を、1秒でも短くするために、最短・最速で正確な治療を叩き込むこと。それこそが、プロとしての、そして命を預かる者としての「究極の愛」だと私は信じています。
  • 「アットホーム」という幻想を捨て、どうか目を覚ましてください。私たちはあなたの「お友達」ではありません。あの子の命を死神から奪い返すための、「冷徹な専門家」でありたいのです。

皆様の存在が、私たちに「建前を捨てる勇気」をくれました

ただ幸運なことに、私たちに治療を任せてくださる当院の多くの飼い主様は、ご自身の犬や猫のために「何をしてあげるべきか」を本当に一生懸命に考えてくださる方ばかりです。時に、「頑張りすぎて病んでしまわないか」とこちらが心配になるほどです。

お尻に体温計を刺されて震えている「ふわふわ」たち。

採血のために真顔のスタッフたちに囲まれ、キョトンとしながらチクンと針を刺される「ふわふわ」たち。

私は彼らにとって痛いことばかりをするので、もちろん怖がらせる存在です。しかし、検査が終わると一目散に受付へ突進していく犬や、自分の安心できるケージ内へそそくさと入っていく猫たちの姿は本当に愛おしいものです。

そして、建前を取り去って私たちと真のチームワークを築いてくださる飼い主様たち。検査結果に一喜一憂しながらも、「ふわふわ」たちのために真っ直ぐに前を向くその姿に、実は私たち自身が日々大きな元気をもらっています。

「ああ、もう表面的な建前なんてやめていいんだ」。私がそう決断できたのは、他でもない、この病院を信じて伴走してくださる皆様から勇気をもらったからです。

私の前半の獣医師人生は、正直に申し上げると「とにかく飼い主様に嫌われないこと」が最大のテーマでした。しかし、皆様から勇気をもらった今、私の後半の獣医師人生のテーマは明確に変わりました。

それは、「本当に守り抜きたい仲間(スタッフ)と、心から貢献したいと思える大好きな方々(飼い主様とあの子たち)に、とことん真っ直ぐに向き合うこと」です。

私の野心は、もう広く浅いものではありません。
私はただ、自分の「半径5メートル」にいるふわふわと、その子たちを取り巻く家族の生活を全力で支えるサポーターでありたいのです。

その範囲の外側にいる、価値観の合わない誰かにエネルギーを割く時間は、私には1秒も残されていません。

脆く繊細な命を守るため、本当の「パートナー」であるために

皆様にはお伝えしづらい現実ですが、私たち動物病院が1週間休診をすると、休み明けには必ずと言っていいほど「亡くなりました」という悲しいお知らせを受け取ります。命は、皆さんが思っている以上に脆く儚いものです。

私たちは常に時間と戦っています。病院への疑念や確認作業に膨大な時間が割かれるような関係性では、この繊細な命を守り抜くことは不可能です。

だからこそ、皆様に強くお伝えしたいことがあります。ご自身の考えや価値観に合わない病院、合わない獣医師に対して時間を費やすことは、動物たちの限られた命の時間を削る「致命的な無駄」です。

目の前の不安だけでなく、中長期的にご自身の人生とあの子の命をどう進めていきたいのかをよく考え、本当に心から信頼し、一緒に伴走できる医師とスタッフを一刻も早く見つけてください。私たちもまた、自分たちの手が届き、信じて任せてくださる方々に対して、最大の貢献ができるよう全力を尽くしてまいります。

今後、果てしなく物価が上がっていく過酷な世界の中で、私たちが何としても守り抜きたい「景色」はひとつだけです。

それは、皆様が仕事から帰ってきたとき、玄関で犬や猫が「お帰り!」と嬉しそうに出迎えてくれる世界。

その当たり前でかけがえのない日常を、1秒でも長く、当院の大切な患者さんたちに届けたい。
そのために、私たちは「表面的な愛想」や「サービス」はいたしません。

命の最前線で共に戦う、本当の意味での「パートナー」として信頼していただけるよう、これからも私とスタッフは、真摯に命と向き合ってまいります。

どうか、この想いに共感していただける飼い主様と共に、大切なご家族の命を守らせてください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

さだひろ動物病院 院長


English Summary

Our clinic mandates a 3-month regular check-up schedule to protect your pets from the harsh realities of modern veterinary medicine, which include global supply shortages and the risks of over-medication driven by defensive medicine. By catching issues early, we avoid subjecting animals to excessive treatments that compromise their dignity. Furthermore, we fiercely protect our highly skilled veterinary staff from harassment, as their irreplaceable clinical sense is essential to saving lives. We have also eliminated traditional, “always-friendly” phone reception to stop wasting time on spam calls from consulting firms exploiting industry anxieties over declining pet populations, dedicating 100% of our focus to the patients in front of us.

The first half of my veterinary career was themed around “not being disliked by owners at all costs.” However, the immense courage and energy I receive from our dedicated owners and their brave “fluffies” have profoundly changed me. The theme of the second half of my career is clear: to fiercely protect the team I care about, and to dedicate myself entirely to the clients and animals I truly love and want to serve. We strongly urge you not to waste your pet’s precious time on incompatible clinics; find a medical team you can truly partner with. We will dedicate our utmost efforts to maximizing our contribution to those within our reach, striving to be your true professional medical partners so your furry family members can happily greet you at the door for as long as possible.

中文摘要

我们医院规定每三个月进行一次定期体检,这是为了在当今兽医界面临全球物资短缺和防卫性医疗导致过度用药的严峻现实中,更好地保护您的宠物。通过及早发现问题,我们避免让动物接受过度治疗,从而保护它们的尊严。此外,我们坚决保护我们技术精湛的员工免受任何客户骚扰,因为他们不可替代的临床直觉是挽救生命的关键。我们还停止了传统的“总是热情接听”的电话接待方式,不再将时间浪费在那些利用宠物数量减少的行业焦虑来推销的咨询公司的垃圾电话上,而是将100%的精力集中在眼前的患者身上。

我前半段的兽医职业生涯,主题一直是“尽量不被宠物主人讨厌”。然而,从我们用心的主人和勇敢的“毛茸茸”们身上获得的巨大勇气,彻底改变了我。我现在后半段职业生涯的主题非常明确:那就是全心全意地去面对我真正想要守护的团队,以及我真心想要为之贡献的、我深爱的患者和家人们。我们强烈建议您不要将宠物宝贵的时间浪费在不合适的医院身上;请尽早找到能真正与您携手共进的医疗团队。我们将倾尽全力,致力于成为您真正的专业医疗伙伴,尽最大努力让您毛茸茸的家人能尽可能长久地在门口迎接您回家。