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「様子を見ましょう」で手遅れにしないために。獣医師が解説する子犬のパテラ治療と手術のタイミング

「最近、うちの子が散歩中にスキップのような歩き方をするんです」

「時々、後ろ足をピョコッと上げて歩くことがあって…もう慣れてしまったみたいですが、大丈夫でしょうか?」


診察室で、小型犬の飼い主様からこのようなご相談を受けることは非常に多いです。片方の後ろ足をかばうような歩き方(間欠的跛行)が見られ、「このまま様子を見ていれば治るのでしょうか?それともすぐに手術が必要なのでしょうか?」と、大変不安なご様子でお話しされます。

実は、このような症状の裏には「膝蓋骨脱臼(通称:パテラ)」という疾患が隠れていることがほとんどです。

膝蓋骨脱臼(パテラ)とはどのような状態か

これは大腿四頭筋から膝蓋骨(膝のお皿)、そして脛骨(すねの骨)へと繋がる「伸筋機構」の配列が一直線になっておらず、膝のお皿が大腿骨滑車溝という本来のレールから逸脱してしまう疾患です。

  • 痛みが一時的であることの怖さ: すぐに元通りに歩き出すことも多いため、「治ったのかな?」と自己判断されてしまうことが多いのが、この疾患の非常に怖いところです。

成長期における「保存療法」と「二次的損傷」のリスク

診察の結果、片側の膝蓋骨が常に外れっぱなしの状態(グレード3)に進行しているケースが多々あります。ここで、整形外科的な観点から非常に高度な判断が求められます。成長期の子犬の場合、骨の成長を司る「骨端線(成長板)」がまだ開いている状態です。

  • 待つことの意義(保存療法): この時期に脛骨の骨を切るような大がかりな手術を行うと、骨端線を損傷し、足の骨が正常な長さに育たなくなるリスク(成長停止や反張膝などの変形)を伴います。そのため、生後10ヶ月頃に骨の成長が落ち着くまでは、体重管理や運動制限を行いながら「待つ」ことが一つの選択肢となります。
  • 待つことの極めて深刻な危険性: グレード3のように膝が常に外れた状態で骨が成長すると、脛骨が内側に強く捻じれ、大腿骨や脛骨そのものがO脚状にグニャリと曲がって成長する「骨格の不可逆的な彎曲変形」を引き起こします。
  • 前十字靭帯断裂への連鎖: 外れた膝蓋骨が関節軟骨を削り落としながら動くことで重度の骨関節炎が進行し、膝の安定性を保つための「前十字靭帯」に過度な負荷がかかります。パテラの放置は、歩行困難に直結する致命的な二次損傷を引き起こす確率を激増させます。

つまり、成長期の重度パテラは「骨端線を守るために待つべきか」、それとも「骨格変形と靭帯断裂を防ぐために早期に手術に踏み切るべきか」という、非常にシビアな見極めが必要なのです。

手術と重症管理に特化した当院の根本治療

当院では、パテラに対して漫然と「ただ様子を見る」ことは決していたしません。当院は外科および重症管理に特化した診療体制を敷いており、リスクを徹底的に排除したアプローチを行います。

  • 厳密なモニタリング体制: 成長期の子犬に対しては、筋肉量の発達や骨格の変形度合いを毎回細かくモニタリングします。月に一度の評価を行い、もし「3日以上足を挙上している」状態が続くなど、関節への負担や変形の兆候が見られた場合は、次回の予約を待たずに即座に受診していただく厳密なルールを設けています。
  • 最適な外科的アプローチの選択: 保存療法の限界を迎え、いざ手術が必要だと判断した際には、骨格の成長段階と変形度合いに応じた最適な術式を組み合わせます。
  • 軟骨を温存しながら溝を深くする「滑車溝深化術(ブロック法など)」
  • 骨の配列を真っ直ぐに矯正する「脛骨粗面転位術」
  • 内側筋膜のリリースと外側関節包の縫縮など、軟部組織のテンションを緻密に調整し、再脱臼を防ぐ根本的な再建を図ります。

インフォームド・コンセントの徹底

治療のメリットとデメリット、そして手術を行わなかった場合の将来的なリスクを包み隠さずお伝えし、飼い主様が心から納得できるインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)を何よりも大切にしています。

愛犬の歩き方に少しでも違和感を覚えたら、「そのうち治るだろう」と放置せず、まずは一度ご相談ください。早期の正確な診断と、タイミングを見極めた治療戦略が、愛犬が一生涯、自分の足で元気に走り回るための鍵となります。


English Summary

The Ultimate Choice in Treating Patellar Luxation in Growing Dogs

Many small breed dog owners visit our clinic concerned about their puppies occasionally skipping or lifting a hind leg. This is often a sign of patellar luxation, a condition where the kneecap dislocates from its normal groove. If left untreated, especially in severe cases (Grade 3), it can lead to irreversible skeletal deformities and a significantly higher risk of cranial cruciate ligament rupture.

Treating growing puppies requires a highly delicate orthopedic decision: deciding between waiting for the growth plates to close (to avoid stunting bone growth during surgery) and intervening early to prevent severe bone deformation. At our clinic, we do not simply “wait and see.” We strictly monitor muscle development and skeletal changes monthly. When surgery is deemed necessary, our specialized surgical team utilizes advanced techniques—such as trochlear block recession and tibial tuberosity transposition—tailored to the dog’s growth stage to achieve a fundamental joint reconstruction. We prioritize thorough informed consent to ensure your dog can run happily on their own four legs for a lifetime.

中文摘要

生长期幼犬髌骨脱位的治疗抉择

许多小型犬主人因为发现幼犬在散步时出现类似“跳绳”或偶尔抬起后腿的动作而前来就诊。这通常是髌骨脱位(膝盖骨脱离正常滑车沟)的征兆。如果放任不管,特别是在重度(3级)的情况下,会导致不可逆的骨骼畸形,并极大地增加前十字韧带断裂的风险。

治疗生长期的幼犬需要极其严谨的骨科判断:是在骨骺线(生长板)闭合前进行保守治疗以避免影响骨骼生长,还是为了防止严重的骨骼变形而尽早进行手术。在我们医院,我们绝不会盲目地“观察等待”。我们会每月严格监测幼犬的肌肉发育和骨骼变形程度。当判断必须进行手术时,我们专业的骨科团队会根据狗狗的生长阶段和骨骼状态,采用滑车加深术和胫骨粗隆移位术等最合适的术式组合,进行根本性的关节重建。我们高度重视知情同意,致力于为您爱犬一生的健康行走保驾护航。