診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
皆様、こんにちは。本日は、雄猫に非常に多く見られる「尿道閉塞」と、それに伴う急性腎障害、そして最終的な外科的解決策である「会陰尿道瘻造瘻術(えいいんにょうどうろうぞうろうじゅつ)」についてお話しします。
今日お話ししたいこと
今回の症例は、過去に特発性膀胱炎や血尿の病歴を持つ雄の患者さんです。内科的な治療やカテーテルによる導尿で維持していましたが、再発を繰り返し、最終的に命に関わる重篤な尿道閉塞を引き起こしたため、外科手術へと踏み切りました。なぜその決断に至ったのか、また術後の腎臓のケアはどうしていくのかを、実際の数値の推移を交えて論理的にお伝えします。
この患者さんは、数日排尿ができず、嘔吐や食欲廃絶を伴う「腎後性腎不全」の状態で来院された過去があります。当時の血液検査では、腎臓のダメージを示す数値が異常値を示していました。
腹部エコー検査では、膀胱内に大量の結石やデブリ(浮遊物)が確認されました。この時は静脈点滴とカテーテル留置により数値を改善させましたが、「次に閉塞した場合は会陰尿道瘻の手術を行う」という方針を立てました。その後、再び重度の閉塞が発生しました。
この時点でカテーテルも通りづらく、抜去後にすぐ再閉塞を起こしたため、これ以上の内科的アプローチは不可能かつ動物への苦痛が大きすぎると判断し、緊急の外科的適応としました。
尿道が詰まり、おしっこが出ない状態を「様子を見る」ことは、絶対にやってはいけません。尿として排出されるべき老廃物やカリウムなどの電解質が体内に逆流・蓄積し、「尿毒症」を引き起こします。血液が酸性に傾き、嘔吐、痙攣、不整脈が現れ、早ければ数日で命を落とします。また、パンパンに膨れ上がった膀胱が破裂する危険性もあり、動物は極限の痛みを味わうことになります。外科医として、この無用な苦痛を見過ごすことはできません。
選択した術式は「会陰尿道瘻造瘻術」です。雄猫の尿道は、陰茎の先端に向かって非常に細くなっています。この術式は、細い部分を切り落とし、骨盤付近の太い尿道(尿道球腺部)を引っ張り出して皮膚に直接縫い付け、メス猫のような広い尿道口を新たに作成するものです。
















【周術期のペインコントロール】
手術は強い痛みを伴うため、術前からの先制鎮痛、適切な麻酔薬の組み合わせによるマルチモーダル鎮痛を実施し、覚醒時の痛みを最小限に抑えるプロトコルを組んでいます。痛みを我慢させることは、回復を遅らせる要因にしかなりません。
当院では、【早期退院】を原則としています。術後の入院は通常1〜3日とし、静脈点滴や厳密なカテーテル管理が必要な期間のみにとどめます。動物にとって病院は決して心休まる場所ではありません。精神的なストレスを軽減し、住み慣れた家庭内でのリハビリへ早期に移行することが、結果的に回復を早めると考えているからです。
【夜間監視とペインコントロールの徹底】
包み隠さずお伝えしますが、当院の夜間は「スタッフ不在(無人)」となります。しかし、決して動物を放置するわけではありません。入院室には高精度のペットカメラを設置し、私が自宅から遠隔で常時監視しています。もし、姿勢がおかしい、鳴いているなど、動物が疼痛で眠れていない異常を検知した場合は、深夜であっても私が直ちに病院へ赴き、追加の鎮痛剤投与などの対応を行います。「痛みを絶対に見過ごさない」という覚悟を持って、夜間の管理にあたっています。
この手術によって「詰まる」という致命的なリスクは大幅に軽減されますが、以下の合併症のリスクは隠さずに提示します。
この患者さんの場合、術後は自力排尿が可能となり、腎数値も安定しました(BUN: 28.0 mg/dl, CRE: 1.58 mg/dl)。ただし、これまでの度重なる閉塞によるダメージから慢性腎臓病(CKD)へ移行しているため、現在は血管拡張薬(ラプロス)の投与や定期的な皮下補液による生涯ケアを継続しています。
当院では、動物の命を最優先に考え、自院の対応範囲と専門施設への紹介ラインを明確に引いています。
外科手術は魔法ではありません。メスを入れるということは、それ自体が体に大きな負担をかける行為です。しかし、論理的な根拠に基づき、最悪の事態(放置による死や極限の苦痛)を回避するために「やるべき時」があります。
私たち獣医師の仕事は、動物が言葉にできない痛みを取り除き、ご家族と過ごす穏やかな時間を一日でも長く確保することです。今後も、誠実に、そして覚悟を持って一つ一つの命と向き合ってまいります。もし、泌尿器のトラブルで悩まれていることがあれば、手遅れになる前にご相談ください。
Summary in English
This case report details a perineal urethrostomy performed on a male cat suffering from recurrent and severe urethral obstruction, which led to life-threatening post-renal acute kidney failure. We proceeded with surgical intervention because repeated conservative treatments were no longer viable, and leaving the obstruction untreated would certainly result in fatal uremia. The surgery widened the urethral opening to prevent future blockages. Our clinic focuses on early discharge (1-3 days) to minimize the animal’s stress, alongside a rigorous multimodal pain management protocol. Although our clinic is unstaffed at night, we use remote camera monitoring and will promptly intervene if any signs of pain are detected. While we handle general soft tissue surgeries, complex cases such as deep abdominal resections are swiftly referred to specialized secondary facilities. Our ultimate goal is to logically and honestly address the animal’s pain and secure quality time for the family.
中文摘要
本病例报告详细介绍了一只雄性猫因反复发生严重的尿道阻塞(已导致危及生命的肾后性急性肾衰竭)而接受会阴尿道造口术的过程。由于反复的保守治疗已不再有效,且不处理阻塞将导致致命的尿毒症,我们果断采取了外科手术。该手术通过拓宽尿道口来防止未来的阻塞。我们诊所主张尽早出院(1-3天)以减少动物的压力,并配合严格的多模式镇痛方案。虽然夜间诊所无人值守,但我们使用远程摄像头进行监控,一旦发现动物有疼痛迹象,会立即亲自介入处理。虽然我们能处理一般的软组织外科手术,但对于需要深层腹腔切除等复杂病例,我们会迅速转诊至专业的二级医疗机构。我们的最终目标是基于逻辑和诚实,解决动物的痛苦,为家庭争取更多的高质量时间。