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【外科症例報告】繰り返す尿道閉塞に対する「会陰尿道瘻造瘻術」:痛みに妥協しない外科治療と当院の管理体制

繰り返す尿道閉塞は、猫ちゃんに強い苦痛と命の危険をもたらす深刻な状態です。内科管理を尽くしても再発を繰り返す場合、外科治療は生活の質と安全性を大きく変える選択肢になります。

今回ご紹介するのは、何度も尿道が詰まり、そのたびにカテーテル処置や入院を繰り返してきた11歳の男の子の猫ちゃんの症例です。

食事療法や投薬といった内科的なケアを丁寧に続けていても、体質的に尿道が細く、ストルバイト結石や細胞の残渣(プラグ)によって短期間のうちに再び閉塞してしまう子がいます。


「また詰まるのではないか」という恐怖を断ち切り、命に関わるリスクから守るために、根本的な治療として会陰尿道瘻造瘻術を選択しました。

繰り返す尿道閉塞から脱却するために

猫ちゃんの尿道閉塞は、飼い主様にとって非常につらく、緊張の続く病気です。突然おしっこが出なくなり、何度も救急処置が必要になるたびに、猫ちゃん自身も大きな痛みとストレスにさらされます。

今回の猫ちゃんは、閉塞と解除を繰り返しながら、そのたびにカテーテル処置や入院を受けてきました。内科的な管理を継続しても再発が止まらず、このままでは次の閉塞が命取りになる可能性があると判断しました。

そのため、「いま詰まりを解除する」だけではなく、「今後詰まりにくい体に変える」ことを目的として、外科的に新しい尿の出口を作る手術を選択しました。

外科的介入が必要と判断した理由

本症例では、以下の臨床所見から、内科管理のみで安全に維持していくことは難しいと判断しました。

  • 繰り返す閉塞
    数ヶ月の間に何度も尿道閉塞を起こし、その都度救急対応が必要な状態でした。単発の閉塞ではなく、再発を前提に考えなければならない経過でした。
  • 尿検査での異常
    尿pHの上昇(pH 7.0〜8.0)がみられ、多数のストルバイト結晶、さらに潜血やタンパク尿などの炎症所見も認められました。閉塞を起こしやすい尿環境が持続していたと考えられます。
  • カテーテル挿入の困難
    閉塞部位は尿道の先端付近で、非常に狭くなっていました。細いカテーテルを通す際にも強い抵抗があり、その場しのぎの解除自体が徐々に難しくなっていました。
  • 慢性腎臓病の徴候
    基礎疾患として慢性腎臓病(CKD)の兆候がありました。そこに尿道閉塞による急性腎不全が重なると、一気に全身状態が悪化し、救命が難しくなる危険があります。

これらの点を総合し、「また詰まってから対応する」では間に合わない可能性があると判断し、飼い主様と危機感を共有したうえで、外科的な新しい出口を作る選択に進みました。

このまま様子を見ることの危険性

尿道閉塞は、単に「おしっこが出なくてつらい」というだけの病気ではありません。時間の経過とともに、全身に深刻な影響が及びます。

  • 急性尿毒症
    尿が出ないことで老廃物が体内に蓄積し、短期間のうちに食欲不振、嘔吐、意識の低下へと進行し、命に関わる状態になります。
  • 膀胱破裂
    尿が排出できないまま膀胱が過度に拡張すると、膀胱壁が耐えられず破裂し、腹腔内に尿が漏れ出す致命的な事態を招くことがあります。
  • 高カリウム血症による心停止
    閉塞により電解質バランスが崩れ、特にカリウムが急上昇すると、不整脈や突然の心停止を起こす危険があります。
  • 激しい痛みの持続
    閉塞中は強い腹部不快感と排尿困難が続き、猫ちゃんにとって極めて大きな苦痛になります。
  • 再発のたびに増す負担
    閉塞と解除を繰り返すことで、尿道粘膜の炎症や損傷が蓄積し、ますます詰まりやすくなる悪循環に入ることがあります。

「少し様子を見よう」という判断は、こうした激痛と急変のリスクを背負わせ続けることにもつながります。そのため、再発を繰り返す段階では、根本的な対策を真剣に検討する必要があります。

選択した手術:会陰尿道瘻造瘻術とは

会陰尿道瘻造瘻術は、非常に細く閉塞しやすいペニス部分の尿道を切除し、より太くて詰まりにくい位置にある尿道を皮膚へ縫合して、新しい尿の出口を作る手術です。

この手術の目的は、いま起きている閉塞を解除することだけではありません。今後も繰り返される可能性の高い閉塞の連鎖を断ち切り、猫ちゃんが穏やかに排尿できる状態を長期的に確保することにあります。

もちろん、外科手術である以上、慎重な適応判断と丁寧な術後管理が必要です。しかし、本症例のように尿道の先端部が繰り返し問題となっている場合には、非常に理にかなった根本治療となります。

当院が重視する周術期の鎮痛管理

当院では、手術の技術そのものと同じくらい、「どれだけ痛みを減らせるか」を重要視しています。外科医としての論理的な誠実さは、痛みを見過ごさないことにも表れると考えています。

  • 多剤併用麻酔による負担の分散
    本症例では、腎臓への影響にも配慮しながら、ドミトール、ケタミンなどを組み合わせた多剤併用麻酔を行いました。単一の薬剤に依存せず、必要な鎮静・鎮痛・麻酔深度をバランスよく確保します。
  • 術中の抗生剤投与
    ABPC(アンピシリン)などを術中に投与し、感染リスクをできる限り下げるよう努めています。
  • 術後の痛みを見越した追加鎮痛
    術後に痛みが強くなりやすいタイミングを逃さず、必要に応じて鎮痛剤を追加します。痛みが強く出てから対処するのではなく、先回りして抑えることを大切にしています。
  • 痛みを「仕方ないもの」にしない姿勢
    猫ちゃんは痛みを我慢して見せないことがあります。そのため、表情、体勢、呼吸、落ち着きのなさなどの小さな変化も含めて評価し、見逃さないことを重視しています。

術後管理と夜間の見守り体制

会陰尿道瘻造瘻術では、手術が無事に終わったあとも、その後の管理が非常に重要です。特に排尿状態、出血、疼痛、全身状態の変化を丁寧に見ていく必要があります。

  • 早期家庭復帰を意識した入院方針
    病院という環境は、多くの猫ちゃんにとって大きなストレスになります。そのため当院では、静脈点滴が必要な期間を中心に、必要最小限の入院にとどめる方針を取っています。一般的には1〜3日程度を目安にし、状態が安定し次第、住み慣れたご自宅での回復に切り替えていきます。
  • 夜間は無人でも、放置ではありません
    当院では夜間にスタッフが院内常駐する体制ではありません。しかし、それは「見ていない」という意味ではありません。24時間ペットカメラで入院室を遠隔監視し、呼吸の様子、動き、落ち着きのなさなどに異変がないかを確認しています。
  • 院長による深夜対応
    カメラ越しに「痛みが強そう」「眠れていない」「様子がおかしい」と判断した場合には、深夜であっても院長自ら病院へ向かい、追加の鎮痛や必要な処置を行います。無人の時間帯があるからこそ、見守りの質と判断の速さを重視しています。

私たちは、手術をしたら終わりではなく、術後のつらさをできる限り軽くし、安全に回復へ導くことまでが外科治療だと考えています。

起こり得る合併症と術後の見通し

会陰尿道瘻造瘻術は、繰り返す閉塞に対して非常に有効な手術ですが、万能で一切のリスクがないわけではありません。大切なのは、期待できる効果と、起こり得る問題点の両方を正直に理解しておくことです。

代表的な合併症のひとつが、術後狭窄です。 傷が治っていく過程で出口が再び狭くなってしまうことがあり、これを防ぐためには、手術時の繊細な剥離と、粘膜と皮膚を丁寧に合わせる縫合技術が重要になります。

もうひとつ注意が必要なのが、細菌性膀胱炎です。 出口が広くなることで、以前より細菌が膀胱内へ上がりやすくなる場合があります。そのため、手術が成功して排尿がスムーズになったあとも、定期的な尿検査や尿の状態の確認が大切です。

それでも、無事に回復できた場合には、「いつまた詰まるかわからない」という日々の恐怖から大きく解放されます。救急対応を繰り返す生活から離れ、穏やかに排尿できる時間を取り戻せることは、この手術の大きな価値です。

当院の外科体制と紹介ポリシー

当院では、自院で責任を持って対応できる外科の範囲を明確にし、その範囲の中では丁寧で現実的な管理を重視しています。一方で、より高度な設備や専門性が必要な場合には、無理をせず、二次診療施設へ速やかにつなぐことを大切にしています。

  • 当院で対応している主な軟部外科
    今回のような尿道手術、体表腫瘍の切除、腹部の一般外科、肝臓の辺縁切除までの対応など、日常診療の中で必要となる軟部外科は幅広く行っています。
  • 専門病院への紹介を優先するケース
    輸血が不可欠な重度の貧血症例、副腎摘出のような最深部アプローチが必要な手術、専門的なプレート固定を要する整形外科などは、命の安全性を最優先し、二次診療施設へご紹介しています。

「自院でできること」と「紹介したほうがよいこと」を曖昧にせず、猫ちゃんにとって最も安全で合理的な選択をすることが、私たちの基本姿勢です。

院長からお伝えしたいこと

外科手術は、決して万能な魔法ではありません。しかし、内科管理だけでは限界が見えてきたとき、確実に苦痛を減らし、命を守るための力強い手段になります。

「何度も詰まってかわいそう」「また夜中に急変するのではないか」と悩まれている飼い主様にとって、その不安はとても現実的で切実なものです。そうしたループを断ち切る勇気が、猫ちゃんの明日を変えることがあります。

私たちは、その決断に対して、論理的な判断、外科的な技術、そして痛みを見過ごさない誠実な管理で向き合いたいと考えています。

現在お悩みの方へ

もし、ご家族の猫ちゃんが尿石症や繰り返す膀胱炎、排尿困難、何度も繰り返す尿道閉塞でお悩みであれば、現在の尿道の状態を一度きちんと評価することが大切です。

内科管理を継続すべき段階なのか、外科的な介入を検討すべき段階なのかは、症状の頻度、尿検査所見、カテーテルの通りやすさ、基礎疾患の有無などを踏まえて判断します。

セカンドオピニオンも随時受け付けております。繰り返す閉塞に不安を感じている場合は、どうか我慢せずにご相談ください。

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English Summary

This case involved an 11-year-old male cat with recurrent urethral obstruction. Despite careful medical management, including diet control and medication, he repeatedly developed blockage due to a naturally narrow urethra, struvite crystals, and urethral plugs.

Repeated obstruction, alkaline urine (pH 7.0-8.0), abundant struvite crystals, inflammatory findings on urinalysis, difficulty passing even a small urinary catheter, and signs of chronic kidney disease indicated that medical management alone was no longer sufficient. Because the next episode could have become life-threatening, we decided to proceed with a perineal urethrostomy.

Urethral obstruction is not simply a painful inability to urinate. It can rapidly lead to acute uremia, bladder rupture, severe hyperkalemia, and even sudden cardiac arrest. Continuing to “wait and see” means leaving the cat at constant risk of extreme pain and fatal deterioration.

Perineal urethrostomy removes the narrow penile urethra and creates a new, wider urinary opening by suturing a broader part of the urethra to the skin. The goal is not only to relieve the current blockage, but also to reduce the chance of repeated future obstruction.

Our hospital places strong emphasis on perioperative pain control. In this case, we used a balanced multi-drug anesthetic protocol, including Domitor and ketamine, while considering kidney function. Intraoperative antibiotics such as ampicillin were also administered, and postoperative analgesics were added without delay whenever needed.

Postoperative care is just as important as the surgery itself. We aim for early return home once intravenous fluids are no longer necessary, usually after one to three days depending on recovery. Although staff do not stay overnight in the hospital, the ward is monitored continuously by pet cameras, and if pain or abnormal behavior is detected, the director comes to the hospital even during the night to provide additional treatment.

Possible complications include postoperative narrowing of the new opening and bacterial cystitis due to easier ascending infection. Even so, when recovery is successful, this surgery can dramatically reduce the fear of repeated obstruction and restore a more stable daily life.

At our hospital, we handle a wide range of soft tissue surgeries such as urinary surgery, superficial tumor removal, and general abdominal surgery up to partial liver edge resection. Cases requiring transfusion, adrenalectomy, or advanced orthopedic fixation are referred promptly to specialty centers to prioritize patient safety.

For cats trapped in the cycle of repeated urinary blockage, surgery is not a magical cure, but it can be a highly effective and honest option to relieve suffering and protect life. Second opinions are always welcome.

中文摘要

本病例是一只11岁的公猫,长期反复发生尿道阻塞。虽然已经认真进行饮食控制和药物治疗,但由于尿道先天较细,加上鸟粪石结晶和细胞碎屑形成的堵塞物,仍然反复出现排尿完全受阻的问题。

综合检查结果可见:短时间内多次复发、尿液偏碱性(pH 7.0-8.0)、大量鸟粪石结晶、尿检存在潜血和蛋白尿等炎症表现、导尿时阻力明显,且同时有慢性肾脏病的迹象。这些情况说明单靠内科治疗已经很难安全维持,因此我们判断需要进行外科干预,并选择了会阴尿道造口术。

尿道阻塞并不只是“排不出尿很难受”这么简单。持续阻塞可迅速引发急性尿毒症、膀胱破裂、高钾血症,甚至导致心脏骤停。如果一再选择继续观察,猫咪就会持续承受剧烈疼痛以及随时可能恶化的致命风险。

会阴尿道造口术的核心,是切除最狭窄、最容易堵塞的阴茎段尿道,把更宽的尿道部分与皮肤缝合,重新建立一个更宽的新排尿出口。这个手术的意义,不仅是解除当前堵塞,更是尽可能减少今后再次堵塞的机会。

我们医院非常重视围手术期镇痛。本病例在兼顾肾脏负担的前提下,采用包含多美托咪定(商品名可对应为Domitor)和氯胺酮在内的多药联合麻醉方案。术中也会给予氨苄西林等抗生素,尽量降低感染风险;术后则根据疼痛情况及时追加镇痛,避免让疼痛发展到难以控制。

术后管理和手术本身同样重要。我们通常只在需要静脉输液的阶段安排住院,一般约1到3天,状态稳定后尽早回家休养,以减少住院应激。虽然夜间院内没有工作人员常驻,但住院区会通过宠物监控持续观察。一旦发现疑似疼痛、难以休息或行为异常,院长会在夜间亲自到院处理。

术后可能出现的并发症包括新尿道口狭窄,以及由于开口变宽而更容易发生细菌性膀胱炎。因此,即使术后排尿顺利,也仍需定期复查尿液。

如果恢复顺利,这项手术能够明显降低反复堵塞的风险,让猫咪和家属从“随时又会堵住”的恐惧中解脱出来,重新回到更稳定、更平静的生活。

本院可负责多种软组织外科手术,例如泌尿外科、体表肿瘤切除以及一般腹部外科(包括肝脏边缘切除范围内的手术)。对于需要输血、肾上腺切除或高难度骨科内固定的病例,我们会优先转诊至专科中心,以确保安全。

对于反复尿道阻塞的猫咪来说,手术不是“万能方法”,但在内科治疗已经走到极限时,它往往是减轻痛苦、保护生命、提高生活质量的重要选择。我们也随时欢迎第二诊疗意见咨询。