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【外科症例報告】進行した緑内障における眼球摘出術:局所麻酔の活用と対側眼の継続管理

外科症例報告:重度緑内障に対する眼球摘出術と内科的継続管理

【今日お話ししたいこと:疾患概要と目的】

今回は、13歳のトイプードルの患者さんの事例を取り上げます。以前より白内障を患っていましたが、数日前から急激に緑内障へと移行し、激しい疼痛を伴っていました。視覚を消失し、痛みによって生活の質(QOL)が著しく低下したため、左眼球の摘出術を選択しました。


「可哀想だから」ではなく「痛みから解放するために」下した決断の記録です。

検査結果と「外科的適応」の判断

初診時の検査において、以下の論理的な判断に基づき手術を決定しました。

  • 眼圧の異常:左眼の眼圧が42mmHgと、正常値を大きく逸脱していました。
  • 視覚の消失:威嚇瞬き反応において、右眼は反応するものの左眼は完全に無反応であり、回復の見込みがないことを確認しました。
  • 炎症所見:前房内に蛋白が漏出するフレア現象が認められ、重度の眼内炎を併発していました。

もしこのまま様子を見たら(放置の残酷なリスク)

外科手術を避け、現状維持を選択した場合のリスクを外科医として率直に提示します。

  • 絶え間ない激痛:緑内障による高眼圧は、人間でいう「群発頭痛」のような激痛をもたらし、食欲や元気を奪います。
  • 脳への波及:眼内の細菌や炎症が視神経を伝い、致死的な髄膜炎や脳炎へ進行するリスクが常に存在します。

基礎疾患による麻酔リスクと鎮痛プロトコル

患者さんは13歳と高齢であり、心雑音も認められました。当院では安全域を広げるため、以下の管理を徹底しました。

  • 局所浸潤麻酔の活用:眼球周囲へのブロック麻酔により、脳への痛みの信号を遮断。全身麻酔薬の使用量を最小限に抑え、心血管系への負担を軽減しました。
  • 徹底した血圧管理:術前より確実な静脈点滴ルートを確保し、高齢・心疾患リスクに伴う血圧低下へ即座に対応できる体制で臨みました。

選択した術式とその根拠、および致死的合併症

左眼球の摘出と同時に、体表の皮膚腫瘤の切除を行いました。外科医として留意すべき点は以下の通りです。

  • 術式の正確性:シーリングデバイス(血管閉鎖機器)を使用し、視神経根部を二重に結紮・止血することで、術中の大出血リスクを抑えました。
  • 致死的合併症の明示:術中、眼球を牽引する際に「眼球心臓反射」による突発的な重度徐脈・心停止が起こり得る点、また眼動脈からの制御不能な出血が命に関わる点について、常に高い警戒を維持しました。
👉 眼摘と臀部腫瘤摘出(横にスクロール)

術後の経過と「傷が落ち着くまで」のリアル

手術後の経過は以下の通りです。抜糸で終わりではなく、反対側の眼を守る新たな戦いが始まります。

  • 早期の安定:術後1日で退院。抗生剤の内服と軟膏処置により、術後21日で無事に抜糸を完了しました。
  • 対側の緑内障発症:抜糸時、残された右眼の眼圧が59mmHgと著しく上昇していることが判明しました。現在は点眼薬による厳格な内科的コントロールを継続しています。


術後管理と夜間監視の「リアルな限界」について

当院は誠実な医療を提供するため、夜間の管理体制についても事実を公開しています。

  • 早期退院の方針:動物の精神的ストレスを考慮し、静脈点滴が必要な期間のみの入院(原則1〜3日)としています。
  • 夜間監視の物理的限界:夜間はスタッフ不在(無人)となります。遠隔カメラで監視し、異常があれば院長が駆けつけますが、移動に30分を要するため、数分を争う突発的な急変には対応しきれない限界が存在します。

院長からのメッセージ

眼球を摘出するという決断は、飼い主様にとって身を切るような思いであったと推察します。しかし、外科医の責務は「見えなくなった眼」に執着することではなく、そこにある「激痛」から患者さんを解放することです。

手術により痛みを取り去り、本来の元気を取り戻した姿を見ることが、我々の願いです。残された右眼についても、論理的なデータに基づき、最後までQOL(生活の質)を維持できるようサポートを継続してまいります。

Summary (English / 中文)

[English Summary]
This report details a left-eye enucleation surgery performed on a 13-year-old Toy Poodle suffering from severe glaucoma and endophthalmitis. Due to pre-existing heart disease and age, we employed local infiltration anesthesia and strict blood pressure monitoring to mitigate risks. While the surgery successfully removed the source of chronic pain, subsequent glaucoma in the right eye necessitated lifelong medical management. We prioritize surgical honesty, acknowledging the physical limits of night-time monitoring and the necessity of prioritized life-quality (QOL).


[中文摘要]
本报告介绍了一例13岁贵宾犬因重症青光眼和内眼炎导致的左眼球摘除手术。考虑到患者的高龄及心脏杂音风险,我们采用了局部浸润麻醉和严格的血压监测协议,以最大限度地保障麻醉安全。虽然手术成功解除了疼痛,但术后右眼出现的继发性青光眼仍需长期的内科管理。我们坚持临床诚实原则,公开术后夜间管理的物理局限性,并以维持患者生活质量(QOL)为最终治疗目标。