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【外科症例報告】重度尿道閉塞に伴う急性腎不全と、会陰尿道瘻造設術によるアプローチ

【外科症例報告】重度尿道閉塞に伴う急性腎不全と、会陰尿道瘻造設術によるアプローチ

今日お話ししたいこと


今回は、重度の尿道閉塞によって命の危機に陥った患者さん(オス猫)の外科手術症例について解説します。来院時、この子は嘔吐(2回目は唾液のみ)を呈し、血尿と強い腹痛を訴えていました。オスの猫において、尿が出ない状態は数日で命に関わる緊急事態です。外科医として、いかにしてこの物理的閉塞を解除し、全身状態を回復させたのか、その論理的なプロセスをお伝えします。

検査の結果と「外科的適応」の判断

  • 血液検査:腎臓の数値を表すBUNが61.7 mg/dl、CREが4.43 mg/dlと異常な高値を示しており、尿毒症を伴う「急性腎不全」に陥っていました。
  • 超音波(エコー)検査:腹水が認められ、膀胱には過剰な尿が蓄積し、さらには腎盂の拡張も確認されました。
  • 初期治療の限界:通常の治療であるカテーテル導尿を試みましたが、閉塞が強固で全く通りませんでした。
  • 緊急処置:膀胱穿刺を行い、70mlの血尿を直接抜去して内圧を下げました。しかし、物理的な閉塞が解除されない限り尿毒症は進行するため、翌日に「会陰尿道瘻造設術(えいいんにょうどうろうぞうせつじゅつ)」を実施する判断を下しました。
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もしこのまま様子を見たら(放置した場合のリスク)

「手術をせずに様子を見る」という選択肢は、この疾患においては「確実かつ残酷な死」を意味します。尿道が詰まり尿が体外へ排出できなくなると、本来捨てるべき老廃物や毒素が血中に溢れ返り、激しい吐き気と苦痛を伴う尿毒症を引き起こします。さらに、限界まで膨らんだ膀胱が破裂するリスクや、致死的な不整脈を招くこともあります。非常に強い痛みと苦しみを伴いながら亡くなるため、決して放置してはならない状態です。

選択した術式とその根拠

  • 術式:会陰尿道瘻造設術(尿道の出口を外科的に広げ、新しく作り直す手術)
  • 選択根拠と術中所見:手術にて確認したところ、ペニスの先端から約3cmの位置で完全に閉塞していました。この狭い尿道を切除し、より骨盤側にある太い尿道(尿道球腺部)で切開して開口させました。その後、恥骨結合の奥の筋膜と皮膚を縫合し、再閉塞しにくい広い尿道口を新たに形成しています。
  • 周術期の鎮痛管理:当院では痛みを最小限に抑えることを重視しています。本症例でも適切な麻酔薬を使用し、術中もこまめに鎮痛剤の追注を行いながら、痛みのコントロールを徹底しました。
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術後管理と夜間監視について

術後、腎臓の数値はBUNが16.4 mg/dlから12.9 mg/dlへと低下し、CREも0.84 mg/dlから1.10 mg/dlへと速やかに正常化の傾向を示しました。術後には自然排尿も確認できています。

  • 早期退院の方針:当院では、静脈点滴や厳密な管理が必要な期間(通常1〜3日)を過ぎれば、カテーテルを抜去して速やかに退院とする方針をとっています。動物にとって、見知らぬ病院のケージで過ごす精神的ストレスは計り知れません。早期に住み慣れた家庭環境でのリハビリへ移行することが、回復を早めると考えています。
  • 夜間監視とペインコントロール:当院の夜間はスタッフが不在(無人)となります。しかし、入院中の患者さんをただ放置するわけではありません。ペットカメラによる遠隔監視を徹底しており、モニター越しに「痛みで眠れていない」「鳴いている」などの異常を検知した場合は、深夜であっても院長自らが病院へ赴き、追加の鎮痛剤投与を行います。動物の痛みを絶対に見過ごさないことが、当院の術後管理の要です。

起こり得る合併症と、術後の見通し

本手術により命の危機は脱しましたが、今後の生涯において以下の合併症リスクに向き合う必要があります。

  • 尿道狭窄:新しく作った尿道口が、治癒の過程で再び狭くなってしまうリスクがあります。
  • 細菌性膀胱炎:尿道が短く、かつ広くなるため、外から細菌が侵入しやすくなります。
  • 皮膚炎:尿の出口が変わるため、周囲の皮膚に尿が触れて炎症を起こすことがあります。

これらを防ぐためにも、術後の定期的なチェックと、適切な食事管理による尿質コントロールが不可欠です。


当院の軟部外科体制と高度連携ポリシー

当院では、今回の会陰尿道瘻造設術のような「後腹膜より腹側の一般軟部外科」や「体表腫瘍(皮弁含む)」の手術には広く対応可能です。しかし、同じ泌尿器の疾患であっても、さらに深部へのアプローチが必要となる「尿管結石摘出」や、術前に重度貧血が想定され「輸血」の準備が必要な症例など、当院の設備において100%の安全性を担保できないと判断した適応外の症例につきましては、命を最優先とし、ためらうことなく適切な二次診療施設(専門病院)へご紹介いたします。

院長からのメッセージ

外科手術は、魔法ではありません。身体にメスを入れる以上、必ずリスクと引き換えになります。しかし、今回のように「手術をしなければ確実に命を落とす、あるいは激しい苦痛が続く」という状況において、論理的に状況を分析し、最適な外科的介入によってその苦痛を取り除くことが私たちの使命です。大切なご家族の排尿に異変を感じた際は、手遅れになる前に、早期の受診をご検討ください。

Summary (English)

This surgical case report details the treatment of a male cat suffering from life-threatening acute kidney injury secondary to severe urethral obstruction. Initial attempts to relieve the blockage via catheterization were unsuccessful due to a firm obstruction located approximately 3 cm from the tip of the penis. To alleviate the immediate danger and prevent fatal uremia, a perineal urethrostomy was performed. The narrowed portion of the urethra was surgically removed, and a wider stoma was created by suturing the pelvic fascia and skin to the bulbourethral gland region. Post-operatively, the patient’s kidney values normalized quickly, and natural urination was restored. Our clinic prioritizes strict pain management, utilizing continuous remote monitoring at night to ensure immediate intervention if any discomfort is detected. We advocate for early discharge (usually within 1 to 3 days) once intravenous fluids are no longer required, minimizing the patient’s stress and promoting recovery in a familiar home environment.

摘要 (中文)

本外科病例报告详细介绍了一只因严重尿道阻塞导致危及生命的急性肾衰竭的雄性猫的治疗过程。由于阻塞物坚硬且位于距阴茎尖端约3厘米处,初步的导尿尝试均未成功。为了解除眼前的危险并防止致命的尿毒症,我们为其进行了会阴尿道造口术。手术切除了狭窄的尿道部分,并通过将骨盆筋膜和皮肤与尿道球腺区域缝合,建立了一个更宽的造口。术后,患者的肾脏指标迅速恢复正常,并恢复了自然排尿。我们诊所高度重视严格的疼痛管理,利用夜间远程监控系统,确保在发现任何不适时能立即进行干预。我们提倡尽早出院(通常在1到3天内),一旦不再需要静脉输液,就让动物回到熟悉的家庭环境中,以减少压力并促进康复。