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【外科症例報告】12歳シニア犬の眼瞼腫瘤切除および重度歯周病治療〜局所浸潤麻酔によるリスク管理〜

今回は、まぶたの腫瘍と重度の歯周病を併発した、高齢犬の外科治療について解説いたします。12歳のミニチュアダックスフンドの患者さんが、まぶたの縁にできた「しこり」を主訴に来院されました。

患者情報と主な症状


  • 年齢・品種:12歳 ミニチュアダックスフンド
  • 体重:約8.0kg
  • 主訴:右眼瞼(まぶた)の腫瘤、腹部の複数のしこり、重度の歯石

検査結果と外科的介入の判断

初診時の身体検査では、右目の縁に小指の先ほどの大きさの腫瘍が認められました。腹部にも3箇所のしこりを確認しましたが、針生検(細胞診)の結果、これらはすべて良性の「脂肪腫」であることが判明しました。

一方、まぶたの腫瘍は増大傾向にあり、血液検査ではグロブリンの増加が認められたものの、総タンパク(TP)8.7g/dl、アルブミン(ALB)4.2g/dlと、全身麻酔に耐えうる状態でした。目と口の健康を守るため、眼瞼腫瘤の切除と重度歯周病に対するスケーリングを同時に行う判断を下しました。

「様子を見る」という選択肢に潜む残酷なリスク

外科手術には常にリスクが伴いますが、治療を避けることが「安全」とは限りません。もしこのまま放置していた場合、以下の事態が想定されました。

  • 眼球へのダメージ: 腫瘍が大きくなると瞬きのたびに角膜を傷つけ、激しい痛みや難治性の角膜潰瘍を引き起こします。最悪の場合、眼球摘出を余儀なくされます。
  • 全身疾患への波及: 重度の歯周病菌は、血流に乗って心臓や腎臓へ到達し、命に関わる内臓疾患を誘発する可能性があります。

高齢犬の麻酔リスクと当院の鎮痛戦略

12歳の高齢犬にとって、全身麻酔は決して軽視できるものではありません。当院では麻酔中の血圧低下や心拍変動を最小限に抑えるため、「局所浸潤麻酔」を徹底しています。全身麻酔の深度を浅く保ちつつ、局所で痛みを完全に遮断することで、術中・術後の身体への負担を劇的に軽減させています。

実施した術式と病理診断

手術は「眼瞼部腫瘤切除」と、視野を確保するための「外眼角切開」を併用しました。同時に重度の歯石を除去し、口腔環境を整えています。

摘出した組織の病理検査結果は、「マイボーム腺腫(良性)」および「肉芽腫性炎」でした。腫瘍の境界は明瞭で完全に取り切れており、今後の再発の可能性は極めて低いという、安心できる結果となりました。

【注意すべき合併症】
外科的な完全切除が成功しても、術後に患者さん自身が傷口を気にして擦ってしまうと、縫合不全や角膜損傷を招く恐れがあります。これらは再手術を要する重大な合併症となるため、術後の保護管理が不可欠です。

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術後管理と「夜間監視」に関する物理的限界

当院では、入院によるストレスを考慮し、原則1〜3日程度の早期退院を目指しています。点滴が不要になれば、住み慣れた家庭でのリハビリに移行します。

ただし、夜間の管理体制については事実を誠実にお伝えしなければなりません。夜間、院内は「スタッフ不在(無人)」となります。ペットカメラでの遠隔監視を行い、痛みの兆候があれば院長が深夜でも駆けつけますが、移動には約30分を要します。数分を争うような予期せぬ急変には、即座に対応しきれないという物理的な限界が存在します。この「嘘のない事実」を、当院ではすべての飼い主様にご説明しています。

当院の外科適応基準と紹介ポリシー

  • 【軟部外科・腫瘍】 今回のような眼瞼腫瘤や体表腫瘍、腹側の一般軟部外科には広く対応可能です。
  • 【完全紹介対象】 輸血が必要な大手術や、尿管結石、副腎摘出などの高度な専門設備を要する術式については、患者さんの安全を最優先し、信頼できる二次診療施設へご紹介いたします。

院長よりメッセージ

高齢だからと諦めるのではなく、適切な検査と論理的な麻酔管理を行うことで、痛みを取り除き生活の質を上げることが可能です。今回は、飼い主様の早期の決断が、患者さんの「目」を守る結果に繋がりました。


Case Summary (English)

A 12-year-old Miniature Dachshund underwent surgical excision of an eyelid mass (Meibomian adenoma) and dental scaling. Pathology confirmed a benign tumor with complete margins. To ensure safety in this senior patient, we employed a strict pain management protocol using local infiltration anesthesia to minimize the depth of systemic anesthesia. Our post-operative policy focuses on early discharge (1-3 days) to reduce stress, while maintaining transparency regarding our night-time management: remote monitoring via cameras without on-site staff, with a 30-minute response time for emergency interventions.

病例摘要 (中文)

一名12岁的迷你腊肠犬因右眼睑肿块和严重牙结石接受了手术切除及洁牙治疗。病理结果证实为麦氏腺瘤(良性),切缘干净。针对高龄犬的麻醉风险,我们采取了局部浸润麻醉,有效降低了全身麻醉的深度,确保了围手术期的安全。术后管理方面,我们提倡1-3天的早期出院以减轻动物压力。同时,我们如实告知夜间管理现状:通过监控摄像头进行远程监护,夜间无医护驻守,院长接到通知后的现场响应时间约为30分钟。我们致力于在诚实和逻辑的基础上提供最优质的医疗服务。