診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
本日は、中高齢の未去勢の男の子に多く発生する「会陰(えいいん)ヘルニア」という疾患と、当院での外科的治療についてお話しします。お散歩中などに、飼い主様が愛犬のお尻(肛門の周囲)の不自然な膨らみに気づかれて来院されることが多い病気です。今回は、中高齢のトイプードルの患者さんの症例を通じて、なぜ手術が必要になるのか、そしてどのようなリスクと向き合っていくのかを論理的にお伝えします。
ご来院時の各種検査の結果、この患者さんは肛門周囲の筋肉の隙間から「前立腺」と「膀胱」が脱出している「全周性の会陰ヘルニア」であることが判明しました。来院時点では幸いにも排尿や排便はできており、強い痛みは示していませんでしたが、膀胱が本来あるべきお腹の中(腹腔内)からペニスの下部(皮下)にまで逸脱している、非常に危うい状態でした。このように臓器が物理的に本来の位置からずれてしまっている状態は、お薬などの内科治療では治癒しないため、直ちに外科手術の適応であると判断しました。
「今は元気だし、年齢のこともあるから手術をせずに様子を見たい」とお考えになる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。しかし、会陰ヘルニアの放置は、動物に非常に残酷な結果をもたらします。
外科的介入を避けるということは、愛犬にこれらの「確実な苦痛と命の危機」を抱えたまま生活させることを意味します。
本症例では、再発を強固に防ぎ、脱出した臓器を正しい位置に戻すために、以下の術式を組み合わせて実施しました。
【麻酔・鎮痛プロトコルについて】
手術に伴う痛みを最小限に抑えることは、私たち外科医の絶対的な責任です。本症例では、麻酔導入にプロポフォールを使用し、術中から術後にかけては、持続性の高い鎮痛剤や制吐剤、抗生剤を適切に使用し、多角的な痛みのコントロールと感染予防を徹底しています。
当院の術後入院期間は、原則として「1〜3日」と短く設定しています。本症例でも術後早期に退院し、ご自宅でのケアへ移行していただきました。
これは、静脈点滴や尿カテーテルの管理が必須な急性期を過ぎれば、住み慣れた家庭環境での早期リハビリが、動物の精神的・肉体的な回復に最も寄与すると考えているためです。
嘘のない夜間管理体制
当院の夜間は「スタッフ不在(無人)」となります。これは飼い主様に包み隠さずお伝えすべき事実です。しかし、入院中の患者さんを放置するわけではありません。入院室にはペットカメラを完備し、院長自らが自宅から遠隔で徹夜の監視を行っています。画面越しに「痛みでハアハアしている」「眠れずに鳴いている」などの異常なサインを少しでも検知した場合は、深夜何時であろうと院長が直ちに病院へ赴き、追加の鎮痛処置を行います。「夜間無人だから痛みを我慢させる」という妥協は一切いたしません。
会陰ヘルニアの手術部位の周辺には坐骨神経や重要な動脈が走っており、高度な技術と慎重な操作が要求されます。また、人工物(メッシュ)を使用するため、術後に体が反応して「漿液(体液)」が貯留したり、局所の腫れや赤みが出たりする合併症のリスクがあります。本症例でも、術後にメッシュによる圧迫等で皮下への滲出液の貯留が見られたため、適切なケアと内服薬の処方を実施しました。
今後は、縫合部に過度な腹圧をかけないよう、便の軟化剤を継続して服用し、スムーズな排便をコントロールしていくことが生涯の管理として重要になります。









当院では、今回のような軟部外科(後腹膜より腹側の一般臓器の外科)や、体表腫瘍の切除などは広く対応可能です。しかし、動物の「命」を最優先に考えた時、自院の設備での限界を正しく見極めることも獣医師の重要な責任です。
以下の症例については、当院での手術適応外とし、速やかに二次施設(専門医)へご紹介しております。
院長からのメッセージ
会陰ヘルニアは、初期にはただの「お尻の膨らみ」に見えるため、どうしても見過ごされがちです。しかし、その内部では臓器が本来の位置を失い、いつ致命的な閉塞を起こしてもおかしくない時限爆弾のような状態になっています。もし、愛犬のお尻の不自然な膨らみや、便を出す時の苦しそうな様子(しぶり)に気づいたら、決して「高齢だから」と様子を見ず、すぐにご相談ください。私たちは、論理的な診断と徹底した痛みの管理をもって、ご家族の命に真摯に向き合います。
Case Report: Perineal Hernia Repair (Polypropylene Mesh & Organ Pexy)
This report discusses the surgical management of perineal hernia, a condition common in middle-aged to older intact male dogs. We detail a case requiring immediate surgical intervention due to the prolapse of the prostate and bladder. Left untreated, this condition poses fatal risks, including urethral obstruction and uremia. The surgery involved a robust repair using polypropylene mesh combined with colopexy, prostatepexy, cystopexy, and castration. We also outline our strict postoperative pain management protocols and realistic remote overnight monitoring system to ensure patient safety and comfort.
病例报告:会阴疝修补术(聚丙烯网片修补及器官固定术)
本报告探讨了中老年未绝育雄性犬常见的会阴疝的外科治疗方法。我们详细介绍了一个因前列腺和膀胱脱垂而需要立即手术干预的病例。如果延误治疗,该疾病会带来致命风险,包括尿道阻塞和尿毒症。手术采用了聚丙烯网片进行坚固修补,并结合了结肠固定、前列腺固定、膀胱固定以及去势手术。此外,我们还概述了严格的术后疼痛管理方案和夜间远程监控系统,以确保患者的安全与舒适。