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【症例報告】犬の乳腺腫瘍広範囲切除

犬の乳腺腫瘍 広範囲摘出手術のご報告

左第5乳腺部位にしこりが発生し破裂、感染を起こしていたワンちゃんの症例です。触診を行うと、右側第2~5乳腺まで多発性の乳腺腫瘍が認められ、特に左第5乳腺には大きなしこりがあり感染が重度でした。

初診時の状態と感染

初診時、破裂部位からの化膿が著しく、採取した検体を培養同定検査に提出し、細菌に有効な抗生剤を選択しました。

CRP(C反応性蛋白)は計測上限を超えるほど高く、炎症反応は非常に強い状態でした。

術前準備と内科治療

1週間の抗生剤治療を行うことで、炎症を抑え、左乳腺に及ぶ大きな腫瘤は周囲との境界がやや明瞭になりました。これにより切除範囲の判断がつきやすくなり、外科的アプローチが可能な状態へと持ち込むことができました。

外科的摘出術

計画を綿密に立て、感染源となっていた左第5乳腺を中心に、右側第2~5乳腺まで広範囲にわたる腫瘍摘出を行いました。十分なマージンを確保することで再発リスクを抑え、病変部位を包括的に切除する方針を採用しました。

術後管理

術後は入院下で点滴管理を行い、感染コントロールと疼痛管理に努めます。縫合部の状態や全身状態(食欲、元気度、血液検査結果)を綿密に観察し、必要に応じて追加的な処置や投薬を行います。退院後も定期的なフォローアップが重要で、再発や新たな病変の有無を確認します。

まとめ

今回の症例では、強い感染と炎症を伴う乳腺腫瘍に対して、まず内科的治療で炎症をコントロールし、その後広範囲摘出手術を行いました。この戦略により、外科処置の成功率を高め、再発リスクを最小限に抑えることが可能となりました。

乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が重要であり、感染や破裂を伴うケースでは、迅速な対応と適切な治療計画が必要です。


病理レポートは、
「乳管上皮由来の悪性腫瘍(腺管癌/Tubular adenocarcinoma)」

「良性乳腺腫瘍(Benign mammary tumor)」
の両方が見つかり、
鼠径(そけい)リンパ節への転移
が確認されたという内容です。

悪性腫瘍(腺管癌)と良性乳腺腫瘍が同時に存在し、さらに
リンパ節転移を起こしている点が重要です。
再発や遠隔転移のリスクが高まるため、慎重な経過観察や追加治療の検討が必要となります。


悪性と良性の両方が混在する例は珍しくありませんが、
腺管癌の転移が既に確認されている
ため、早期かつ十分な範囲での外科的切除をはじめとする
積極的な治療が求められます。

大まかな内容

1. 腺管癌(悪性)について

  • 乳管上皮細胞から発生する悪性腫瘍で、不規則な増殖や壊死、細胞の形態異型などが見られます。
  • 周囲組織への浸潤性増殖を示し、正常組織との境界が不明瞭です。
  • リンパの流れに乗って
    鼠径リンパ節への転移が確認され、
    肺など遠隔臓器への転移も懸念されます。

2. 良性乳腺腫瘍について

  • もう一つの腫瘍は良性と診断され、悪性ほどの強い異型性や侵襲はありません。
  • 周囲との境界が比較的はっきりしており、
    成長速度は緩やかですが、大きくなると組織圧迫などを起こす可能性があります。

3. リンパ節転移と再発リスク

  • すでに転移が確認されているため、再発や他臓器への転移リスクが高まります。
  • 追加的なリンパ節摘出や化学療法などの検討が必要になる場合があります。
  • 経過観察(定期的な画像検査・血液検査)を行い、再発の早期発見を目指すことが大切です。

まとめと臨床的な意味

今回は同じ乳腺領域に
悪性の腺管癌良性乳腺腫瘍
が同時に見つかったケースです。悪性腫瘍は
リンパ節へ転移しており、
再発・遠隔転移の可能性が懸念されます。

早期に広範囲の外科的切除を行い、必要に応じた追加治療(化学療法や放射線治療など)も検討します。
術後の経過観察(レントゲン・超音波・血液検査)を継続的に行うことで、再発を早期に見つけることが重要です。

悪性乳腺腫瘍のリスクを下げるためには、避妊手術のタイミング
定期的な健康診断が有効とされています。
飼い主さんの早期発見と獣医師による適切な治療計画が、
ペットのQOL向上と寿命の延長につながります。

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