診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
左第5乳腺にしこりができ、破裂と感染を起こしたワンちゃんの症例です。触診では、右側第2~5乳腺にも多発性の腫瘍が認められ、特に左第5乳腺には大きなしこりと重度の感染が確認されました。
初診時は破裂部位からの化膿が著しく、検体を培養検査に出して効果的な抗生剤を選択しました。CRP(C反応性蛋白)は計測上限を超えるほど高く、炎症反応が非常に強い状態でした。
1週間の抗生剤治療により炎症が落ち着き、左乳腺の大きな腫瘤とその周囲の境界が明瞭になりました。これにより切除範囲の判断がしやすく、外科手術が可能な状態となりました。
入念な計画のもと、感染源であった左第5乳腺を中心に、右側第2~5乳腺まで広範囲の腫瘍摘出を実施しました。十分なマージンを確保し、再発リスクを低減するため、病変部位を包括的に切除しました。
術後は入院中に点滴管理を行い、感染コントロールと疼痛管理に努めました。縫合部および全身状態(食欲、元気、血液検査の結果など)を丁寧に観察し、必要に応じて追加処置や投薬を実施。退院後も定期フォローアップにより、再発や新たな病変の有無を確認しています。
本症例は、激しい感染と炎症を伴う乳腺腫瘍に対し、内科治療で炎症を抑えた上で広範囲摘出手術を実施したものです。この戦略により外科処置の成功率が向上し、再発リスクを最小限に抑えることができました。乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が鍵となるため、迅速かつ適切な対応が求められます。
病理検査の結果、乳管上皮由来の悪性腫瘍(腺管癌/Tubular adenocarcinoma)と良性乳腺腫瘍(Benign mammary tumor)が認められ、鼠径リンパ節への転移が確認されました。
悪性腫瘍と良性腺腫瘍が同時に存在し、さらにリンパ節転移が見られる点は特に重要です。再発や遠隔転移のリスクが高いため、慎重な経過観察と追加治療の検討が必要です。
悪性と良性が混在する例は決して稀ではありませんが、腺管癌の転移が確認されているため、早期かつ十分な範囲での外科的切除を含む積極的な治療が求められます。
1. 腺管癌(悪性)について
2. 良性乳腺腫瘍について
3. リンパ節転移と再発リスク
今回の症例は、同一乳腺領域に悪性の腺管癌と良性乳腺腫瘍が同時に認められたケースです。悪性腫瘍はリンパ節へ転移しており、再発や遠隔転移のリスクが懸念されます。早期の広範囲外科的切除と、必要に応じた追加治療(化学療法・放射線治療)を行い、術後は定期検査で再発を早期に発見することが重要です。
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