診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
がんは進行すれば確実に動物の命を奪う疾患であり、外科手術や抗がん剤治療にも常に致死的なリスクが伴います。当院では、過度な期待を持たせるような美談は語りません。本日は、趾端(足の先端・踵付近)に発生した腫瘤の切除から始まり、数ヶ月後に判明した腰下リンパ節への悪性腫瘍転移に対する外科的・内科的アプローチへと移行した複合症例について、事実に基づいたリスクと論理的な治療選択の過程を詳細に解説します。
【症例概要】
シニア期のミニチュア・シュナウザー。右足根関節付近の腫瘤自壊による切除手術の後、腹腔内の腰下リンパ節への転移が発覚。外科的な局所介入と内科的な全身化学療法を組み合わせた治療を実施しました。
初診時、患者さんの右足根関節内側(かかとの内側)に腫瘤が認められました。当初の細胞診では良性が疑われたため経過観察としていましたが、その後、患者さん自身が舐め壊したことで腫瘤が自壊。排膿を伴う感染状態に悪化しました。
















足先の腫瘤切除から数ヶ月後、定期検診の腹部エコー検査において、腰下リンパ節が2.5cm〜3cmほどに顕著に腫大していることが判明しました。再度、針生検(細胞診)を実施したところ、リンパ節の正常な構造は消失しており、異型性の強い「上皮性悪性腫瘍」の細胞が多数検出されました。これは、体内のどこかに存在する原発巣から、悪性腫瘍がリンパ節へ転移したことを示唆する重篤な所見です。



「高齢だから手術がかわいそう」という情緒的な理由で経過観察を選択することは、穏やかな死を意味しません。腰下リンパ節の転移巣を放置した場合、以下の残酷な結末が待っています。



本症例はシニア期特有の高脂血症や気管虚脱を抱えており、全身麻酔時の低血圧や呼吸器トラブルのリスクが通常より高い状態でした。当院では麻酔の安全域を最大化するため、以下の論理的アプローチを徹底しています。
試験開腹の結果、腫瘍は腸腰筋に強固に癒着し、腹部大動脈のすぐ背側に位置していることが確認されました。無理な剥離は大動脈破裂による即死を招くため、当院では執刀中に戦略を「完全切除」から「局所化学療法」へと切り替えました。







当院では動物のストレスを考慮し、術後入院は原則1〜3日とし、速やかに家庭内リハビリへ移行する方針をとっています。また、夜間管理の事実についても包み隠さずお伝えします。
【院長からのメッセージ】
がんの外科治療において、解剖学的な限界を見極め、引き際を判断することも重要な責任です。無理な切除による術中死を避け、局所治療と内科治療に切り替えたのは、生存確率とQOLを天秤にかけた論理的な決断でした。私たちは都合の良い幻想を語るのではなく、現実的なリスクをすべて共有し、その子にとって最善の道を共に歩みたいと考えています。
This case report details a senior Miniature Schnauzer presenting with a benign toe tumor (Trichoepithelioma) and subsequent metastatic sublumbar lymph node enlargement (epithelial malignancy). Due to surgical risks near the abdominal aorta, an intraoperative ultrasound-guided injection of Carboplatin was performed as a localized intervention, combined with systemic chemotherapy (Toceranib/Cyclophosphamide). We emphasize the importance of identifying surgical limits and maintaining transparency regarding the physical constraints of overnight monitoring in a primary care setting.
本案例报告了一只老年迷你雪纳瑞的治疗过程。该犬最初因足端良性肿瘤(毛包上皮瘤)接受切除术,随后发现腹腔内腰下淋巴结出现上皮性恶性肿瘤转移。由于肿瘤紧邻腹主动脉,手术风险极高,因此采取了术中超声引导下局部注射卡铂的姑息性疗法,并辅以全身化疗(托塞拉尼/环磷酰胺)。我们在此强调识别外科极限的重要性,并坦诚告知基层动物医院在夜间监护方面的物理局限性。