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愛犬・愛猫の心臓病で使われる「ピモベンダン」というお薬。この記事では、なぜこのお薬が獣医療で中心的な役割を果たしているのか、そのユニークな特徴と優れたエネルギー効率について、他の強心薬と比較しながら分かりやすく解説します。
さらに、2020年以降の最新研究でわかってきた猫への効果や、治療を開始する最適なタイミングなど、飼い主さんが知っておきたい大切な情報もアップデートしています。
心不全の治療薬は時代と共に進化してきました。ピモベンダンは2000年頃から獣医療で注目され始め、今では犬の心臓病治療に欠かせない存在です。心臓のポンプ機能を助ける「強心薬」でありながら、血管を広げる作用も併せ持つ、バランスの取れたお薬です。
ピモベンダンの最大の特徴は、2つの方法で心臓をサポートする点です。
ピモベンダンは万能薬ではなく、心不全の進行度によって効果や注意点が異なります。マウスの実験では、初期の心不全と末期の心不全では、最適な薬の量が違う可能性が示されました。特に、末期の心不全では高用量の投与が不整脈のリスクを高めることもあるため、その子に合ったステージを見極める正確な診断が非常に重要です。
ピモベンダンが他の多くの強心薬より優れている最大のポイントは、心臓のエネルギー効率にあります。
他の強心薬(ドブタミンなど)は、心臓の仕事量を増やすと同時に、酸素消費量も大幅に増やしてしまい、心臓を疲れさせてしまうことがあります。
一方、ピモベンダンは、心臓の酸素消費量をほとんど増やすことなく仕事の効率をアップさせることができます。これは、まるで燃費の良いエンジンでパワフルに走るようなもの。心臓に負担をかけずにサポートできる、この「省エネ」効果が大きな強みなのです。
近年、症状が出る前の肥大型心筋症の猫への効果を調べる大規模な研究(REVEAL試験)が行われましたが、残念ながら、心不全の発症などを遅らせる明確な効果は確認されませんでした。現時点では、症状のない猫ちゃんへの一律な投与は推奨されていません。
心臓に雑音があっても、まだ心拡大が見られない「ステージB1」のワンちゃんへの投与は、現在も推奨されていません。心エコー検査などで心拡大が確認された「ステージB2」からが治療開始のタイミングです。
かつては適応外使用とされていましたが、研究が進み、特にドーベルマンなどの犬種では、症状が出る前の段階からピモベンダンを投与することで長生きできることが証明されています。今では世界的に標準的な治療法として確立されています。
ピモベンダンは、心臓に負担をかけにくい「省エネ」な働きで心機能をサポートする、非常に優れたお薬です。特に犬の心臓病治療では、その中心的な役割は揺るぎません。
「薬を活かすも殺すも、適応となる患者を正確に見極めることが重要」
という言葉の通り、獣医師による正確な診断のもとで、その子に合った適切な使い方をすることが何よりも大切です。