診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
今回ご紹介するのは、地域猫(いわゆる野良猫)として保護された、年齢不詳の猫の症例です。保護主様が耳先にできものを発見し、当院に連れて来られました。耳介の先端部にかさぶた様の病変があり、慢性的な炎症、もしくは腫瘍が疑われる状態でした。
外観上、皮膚腫瘤を形成していることが明らかで、扁平上皮癌などの悪性腫瘍である可能性も否定はできませんでした。しかし、この猫は野良出身であり、飼育環境や長期的なケアが難しいことが予想されます。
また、保護主様の希望は、病変部位を除去してこの猫が少しでも快適に過ごせるようにすること(QOL改善)に主眼が置かれていました。
したがって、今回は術前血液検査、細胞診、術後の病理組織検査を行わず、あくまで腫瘍様病変の切除による症状緩和・QOL改善を目的としました。
当院では、全身麻酔下にて耳介の病変部を十分なマージン(安全域)を確保することを考慮しながら切除を行いました。過度な侵襲は避けつつ病変部をしっかりと除去しました。
切除後は、止血・縫合による創部閉鎖を行い、耳介の形は変わりましたが、出血やただれが続く状態は改善される見込みです。
術後は、疼痛管理と二次感染予防が重要です。
本症例では、注射製剤で長期間効果が期待できるコンベニア(Cefovecin)を用いて抗生物質カバーを行い、舐めによる自傷を避けるためエリザベスカラーの装着を指示しました。
痛み止めも適宜投与し、術後の不快感を軽減します。
術後は保護主様に、創部の赤みや腫れ、出血がないかを注意深くチェックしていただくようお伝えします。
猫が自分で患部を掻いたり舐めてしまうと、傷口の回復が遅れたり感染リスクが高まります。しばらくの間はエリザベスカラーやケア用品を用いて、適切な創部保護を行います。
この猫は野良出身であるため、将来的な再発リスクや新たな問題について詳細なフォローアップは難しいケースです。そのため、できる限り保護主様が観察し、異変を感じた際は再度獣医師に相談していただくことが望まれます。
今回の耳介切除術は、腫瘍性病変が疑われる耳介の一部を除去することで、出血やかさぶた形成など不快症状の軽減を図り、猫の生活の質(QOL)を向上させる目的で実施しました。
通常であれば、細胞診や病理組織検査による確定診断、そして根治的な外科的切除を目指すのが理想ですが、本症例のような背景(野良出身、長期フォローの不確実性)や保護主様の意向から、柔軟な治療方針をとりました。
術後管理と短期的な観察を丁寧に行うことで、この猫が少しでも快適に過ごせる時間が増えることを期待しています。
上記はボランティア活動の保護主様向けの手術費用例です。
通常の飼い猫に対する「耳介切除手術」は以下の通りとなります。
•耳介切除手術(通常の飼い猫):165,000円(税込)
上記手術費用以外に、以下の項目が追加となります。
•入院(1泊):4,400円(税込)
•血液検査:8,800円(税込)
•胸部レントゲン(5kg以下):3,850円(税込)
•病理検査:11,000円(税込)
※病理検査の結果は約1週間ほどで判明します。