診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
日々、愛猫の病態について深く学び、言葉を持たない動物たちのために最善を尽くされているご家族の皆様に、心より敬意を表します。
当院には、複雑な病態を抱えた動物たちが数多く来院します。先日も、慢性腎臓病の治療として定期的な皮下輸液を行っている猫の診察がありました。「前回の点滴の後、ひどく興奮し、呼吸が荒くなっていた」というお話を伺い、私たちは即座に心臓と肺の評価(胸部レントゲンおよび心エコー図検査)を実施しました。幸い、心筋の異常な肥厚や左心房の著しい拡大(LA/Ao比の異常)、肺水腫や胸水の貯留といった心不全の兆候は認められず、現行の輸液量を維持して問題ないという判断に至りました。
しかし、このエピソードは、慢性腎臓病と心疾患のリスクを併せ持つ動物の管理がいかに綱渡りであるかを如実に物語っています。今回は、心臓と腎臓の相反する治療の難しさと、ご自宅での観察の重要性について解説いたします。
慢性腎臓病の管理において、適切な水分補給(輸液)は腎血流量を維持し、尿毒症性物質を排泄するために不可欠です。しかし、加齢や基礎疾患によって心機能が低下している、あるいはそのリスクがある状態(大動脈への逆流や心筋の肥厚など)では、輸液管理が極めて慎重なものとなります。
皮下へ投与された輸液は、数時間かけて徐々に毛細血管から吸収され、全身の循環血液量(静脈還流量)を増加させます。健康な心臓であればこの水分負荷に対応できますが、機能が低下した心臓にとっては過酷な労働となります。心臓が血液を前方に送り出せなくなると、肺の毛細血管から水分が滲み出し、肺水腫や胸水を引き起こします。
さらに、動物が恐怖や興奮を感じると、交感神経系が急激に活性化します。これにより心拍数と血圧が上昇し、心筋の酸素消費量が増大することで、ただでさえ余裕のない心臓に致命的な負荷(後負荷の増大)をかけることになります。移動中の車内での興奮や、ご自宅での無理な処置によるストレスは、単なる「嫌がっている」という状態を超え、病態生理学的に心不全の引き金となり得るのです。

時折、「動物のストレスになるから検査は最小限にして、点滴だけを続けてほしい」というご要望をいただくことがあります。しかし、医療において不完全なデータに基づく盲目的な処方は、極めて危険な行為です。
腎臓病の進行度(BUN、クレアチニン、電解質のバランス)や、心臓の器質的・機能的変化は常に変動しています。これらの客観的な評価を怠り、漫然と点滴を続けることは、ある日突然の致死的な肺水腫を招くリスクを孕んでいます。安全に処置できる裏付け(エビデンス)がない限り、私たちは点滴を実施することはできません。
もし、動物が通院や検査に過剰なストレスを感じる場合、あるいはご家族が通院の負担に耐えきれない場合は、無理に処置を強行するのではなく、設備の整った安全な施設へ入院管理を引き継いだり、医療スタッフに処置を完全に委ねるなど、役割分担を見直すことが最良の医療となる場合が多々あります。
心疾患のリスクを抱える腎臓病の猫に点滴を行った場合、ご家族にお願いしたい最も重要なミッションは「点滴後の呼吸状態の観察」です。
この基準と比較して明らかに呼吸回数が多い、胸や腹部を大きく使った努力性呼吸をしている、あるいは犬のように口を開けてハーハーと息をしている(開口呼吸)場合は、胸が苦しいサイン、すなわち心不全の兆候である可能性が高く、一刻を争う事態です。
また、「吐いている」「食欲がない」といった症状が見られる場合、「いつも通り点滴だけすれば元気になるだろう」と自己判断することは大変危険です。これらは腎不全の急激な悪化(尿毒症)や、心不全による消化器うっ血のサインかもしれません。このような状況下では、必ず再検査を行い、安全を確認した上で治療方針を再構築する必要があります。自己判断による投薬の中止や休薬も、循環動態を急激に悪化させる原因となるため絶対におやめください。
私たちは、医療の最前線で多くの命の終焉に向き合っています。ごまかさずにお伝えしなければならないのは、心不全や腎不全の末期は、決して穏やかに眠るように訪れるものではないということです。
肺水腫に陥れば、動物は陸上にいながら溺れているような、絶望的な呼吸困難に苦しみます。尿毒症が進行すれば、コントロールの困難な絶え間ない吐き気や、全身の痙攣発作が起こります。これが、病態が悪化した際に直面する残酷な現実です。
だからこそ、ご家族にお伝えしたいのです。ご自宅で動物を押さえつけ、無理な処置を繰り返し、「完璧な看護師」になろうとして心身をすり減らさないでください。動物たちが最期のつらい時期に本当に求めているのは、注射針を持つ手ではなく、これまで愛し育ててくれた「安心できる家族」の温かい撫でる手です。
医療的な処置や判断は私たちプロフェッショナルに委ねてください。ご家族の皆様には、どうかいちばん近くで、動物たちが心から安らげる存在であり続けてほしいと願っています。皆様ご自身の心身の健康があってこそ、動物たちも穏やかな時間を過ごすことができるのです。
当院からのお願い
現在、当院では診療時間中のお電話によるご相談対応を完全に終了しております。
動物の健康状態に関するご相談や、ご自宅で撮影された症状の動画の確認等は、正確な状況把握と安全な判断のため、必ずご来院いただき、対面での診察時に直接獣医師にお見せくださいますようお願い申し上げます。
Managing a cat with both chronic kidney disease (CKD) and cardiac risks requires an extremely delicate balance. Subcutaneous fluid therapy is essential for CKD, but excessive fluid volume can overwhelm a compromised heart, leading to fatal pulmonary edema or pleural effusion. Furthermore, stress and excitement activate the sympathetic nervous system, increasing heart rate and blood pressure, which places severe additional strain on the heart.
Therefore, administering fluids without regular, comprehensive diagnostic testing (such as blood panels, thoracic radiography, and echocardiography) is medically blind and dangerous. We cannot perform fluid therapy safely without confirming the current cardiac and renal status.
At home, it is critical to monitor the cat’s resting respiratory rate and effort, especially approximately 4 hours post-fluid administration, as this is when the fluid shifts into the bloodstream and the cardiovascular load reaches its peak. A normal resting respiratory rate for a cat is about one breath every 2 seconds (roughly 30 breaths per minute). If the respiratory rate is noticeably higher than this baseline, or if you observe increased abdominal effort or open-mouth panting, it is a sign of severe chest discomfort indicating potential heart failure—a medical emergency. Symptoms like vomiting or anorexia are also red flags that require immediate veterinary reassessment, not just routine fluid therapy.
We urge pet owners not to exhaust themselves trying to be a “perfect nurse” at home through forced medical treatments. The final stages of these diseases can be harsh. Let the veterinary professionals handle the medical interventions, so you can remain the comforting, loving family member your pet needs most. Please note that we no longer accept phone consultations during clinic hours; all medical inquiries and symptom video reviews must be done in person during a consultation.
管理同时患有慢性肾脏病(CKD)和心脏病风险的猫咪需要极其微妙的平衡。皮下输液对于治疗肾病至关重要,但如果输液量过大,会使功能下降的心脏不堪重负,进而引发致命的肺水肿或胸水。此外,压力和兴奋会激活交感神经系统,导致心率和血压上升,这会给心脏带来严重的心室后负荷。
因此,在没有进行定期、全面的诊断检查(如血液检查、胸部X光和超声心动图)的情况下,盲目进行输液是极其危险的。如果没有确切的检查数据证明当前身体状况可以承受,我们将无法为您进行输液治疗。
在家里,必须密切观察猫咪的呼吸状态,特别是在输液后约4小时,皮下的水分会大量转移至血管内,此时心脏的负荷达到最高峰,请务必密切关注。猫咪在安静状态下的正常呼吸频率约为“每2秒1次(即每分钟约30次)”。如果发现呼吸频率明显高于这个标准,或者出现用力起伏胸腹的呼吸、像狗一样张口喘气的情况,这极有可能是心力衰竭的征兆,属于需要争分夺秒抢救的紧急情况。出现呕吐或食欲不振等症状时同样不能仅凭经验继续输液,必须立即复诊。
我们恳请家属不要为了在家里勉强进行医疗操作而耗尽心力,试图成为一名“完美的护士”。这些疾病的末期现实往往是残酷的。请将医疗处置交给我们的专业团队,让您自己回归为宠物提供温暖和安全感的“家人”角色。最后提醒,本院已全面停止营业时间内的电话咨询服务;所有医疗咨询及症状视频确认,请务必在来院面诊时进行。