診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
こんにちは。院長の貞広です。
日々診察をしていると、年齢を重ねた動物たちが直面する「非常に残酷な現実」をお話ししなければならない場面に遭遇します。
今日は、あるご家族(Aさん)と愛猫(Bちゃん)のケースを通して、複数の病気を抱えた動物に対する「究極の選択」と、当院が大切にしている「命との向き合い方」についてお話ししたいと思います。
先日、長年通院してくれているBちゃんの診察を行いました。
Bちゃんは、生まれつき胸の骨が内側に凹んでいる「漏斗胸(ろうときょう)」という疾患を抱えています。長年、物理的に狭い胸腔で呼吸を続けてきた結果、肺の血管に強い圧力がかかる「肺高血圧症」となり、血液を送り出す右心室が限界を迎える「右心不全(肺性心)」を引き起こしていました。
そこに追い討ちをかけるように、急性膵炎の再発、腎臓の尿濃縮能の低下、さらに過去に患った尿路結石(ストルバイト)の再燃リスクが重なってしまったのです。
Aさんは「この子のために、できる限りの治療をしてあげたい」と深くBちゃんを愛していらっしゃいました。しかし、この状態のBちゃんに待ち受けていたのは、現代獣医療が抱える、病態生理学的な「大きなジレンマ」でした。
複数の臓器が同時に限界を迎えると、医学的に「完全に矛盾する治療」を強いられることになります。
例えば、膵炎の治療において最も重要なのは「積極的な水分補給(輸液)」です。膵臓の微小な血流を維持し組織の壊死を防ぐためには十分な水分が不可欠であり、これは腎臓の保護や、尿路結石を洗い流すためにも必須のアプローチです。
しかし、Bちゃんが抱える「心不全」にとって、この水分負荷は『命取り(絶対禁忌)』となります。
これが、限界を迎えた動物の体で起きている残酷な物理的現実です。
「高度な医療設備を持つ大学病院などの二次診療施設へ紹介すれば、すべて解決するのではないか」と思われる方もいらっしゃいます。しかし、二次診療施設での精密検査や循環器治療は、ご家族に莫大な経済的負担を強いるだけでなく、長距離の移動や長時間の保定という致命的なストレスを与えます。今のBちゃんの心臓では、全身麻酔を伴う検査や手術台の上で命を落とすリスクが極めて高いのが現実です。
「すべてを完璧に治す魔法」が存在しない時、私たち獣医師の使命は、ご家族に「正確で残酷な現実」を隠さずにお伝えし、動物が一番苦しまない道をご家族と一緒に選ぶことです。
当院では、このような状態の患者様に対し、無理な延命や無用な検査を強いることはありません。Aさんとも客観的な事実をもとにじっくり話し合い、私たちは以下の決断を下しました。
病気を『治す』ことから、
これ以上『苦しませない』ことへ目標をシフトする
高度な医療で命の長さを追求するよりも、住み慣れたお家で、大好きなご家族と一緒に穏やかな時間を1日でも長く過ごさせてあげること。それこそが、今のBちゃんにとっての本当の幸せだと考えたからです。
動物たちの「最期の時間」をどうデザインするか。それは、ご家族の愛情の形そのものです。
当院では、医学的な根拠に基づいた客観的なリスクをすべてお伝えした上で、ご家族と動物にとって「後悔のない、最良の選択」ができるよう、とことん向き合います。愛犬・愛猫の複雑な病状や、今後の治療方針で深く悩まれている方は、決して一人で抱え込まず、どうか一度当院へご相談ください。
一緒に、その子にとっての「一番の正解」を探していきましょう。
A senior cat with pectus excavatum developed right heart failure due to long-term pulmonary hypertension. Concurrently, the cat suffered from pancreatitis and a history of struvite urolithiasis. Treating the latter requires aggressive IV fluids, but for a failing heart, such fluid overload is strictly contraindicated and can lead to fatal pulmonary edema.
Faced with this medical dilemma where treating one organ destroys another, the family and our clinic chose “subtraction medicine.” We decided to stop aggressive treatments like fluids to prevent fatal respiratory distress, focusing instead on palliative care. Our goal shifted from “curing” the disease to “preventing suffering,” ensuring the cat can spend its remaining days peacefully at home surrounded by family.
一只患有漏斗胸的老年猫因长期的肺动脉高压引发了右心衰竭,同时伴有急性胰腺炎和鸟粪石结石病史。治疗胰腺炎和结石需要大量输液,但这对于衰竭的心脏来说是绝对的禁忌,会导致致命的肺水肿。
面对这种“治疗一个器官就会摧毁另一个器官”的医学两难境地,家属与我们诊所共同选择了“减法医疗”。我们决定停止输液等激进治疗,以防止引发致命的呼吸窘迫,转而专注于姑息治疗。我们将治疗目标从“治愈疾病”转变为“减轻痛苦”,尽最大努力让猫咪能在充满爱的家里安宁地度过余生。