047-700-5118
logo logo

診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診

banner
NEWS&BLOG
消化器疾患のご飯





愛するペットの消化器疾患と療法食:飼い主様向け完全ガイド


愛するペットの消化器疾患と療法食:飼い主様向け完全ガイド

1. 下痢とは何か?:定義と特徴

下痢は病名ではなく、「症状」を指す言葉です。それは、うんちに含まれる水分が通常よりも増えてしまった状態を言います。
  • 水分量 : 健康なうんちの水分量は約60〜70%ですが、下痢の場合は80%以上になります。
  • 特にひどい水下痢は「水分90%以上」の状態です。

2. 消化管の働きと下痢のメカニズム

小腸・大腸の主な働き

食べ物がどのように消化吸収され、体に必要のないものが排出されるかを見てみましょう。

働き 小腸 大腸 両方
栄養素の消化と吸収
ミネラルの吸収
水分の吸収
うんちの貯蔵

体内で吸収される水分の約80%は小腸で吸収されます。(大腸よりも小腸の方が水分を多く吸収します)

食事の吸収と下痢の発生メカニズム(浸透圧の関与)

【正常な吸収】栄養素が吸収されるときの「濃度の差」(浸透圧)の力で、水も一緒に体の中へ引き込まれ吸収されます。
【下痢が起こる仕組み】 食べ物が消化されず残る(未消化の栄養素)と、腸管内(うんちの通り道)の液体の濃度が高くなります。濃度を薄めるために身体から水が引き込まれ(水分必)、うんちの水分が増えて下痢が発生します。

3. 犬と猫における下痢の分類と特徴

下痢は、小腸の不調が原因か、大腸の不調が原因かで、症状が大きく異なります。

特徴 小腸性下痢(吸収不良タイプ) 大腸性下痢(貯められないタイプ)
主な原因 栄養や水が小腸でうまく吸収できない 大腸がうんちを十分に貯めておけない
うんちの量 大量(水っぽい便になる) 量はあまり変化しない
排便回数 比較的少ない(正常〜3倍) 多くなる(3倍以上)
しぶり ない 頻繁に見られる(排便を何度も試みるが、ほとんど便が出ない)
粘液便 まれ よく見られる(大腸で粘液が多く分泌されるため)
体重変化 体重が減りやすい(栄養の吸収不良のため) 体重が減ることはまれ
その他 未消化の食べ物や脂肪便が見られることがある

4. 犬と猫の消化器疾患に対する療法食一覧(主要3社対応)

下痢のタイプや、その原因となっている病気(基礎疾患)に合わせて、最適な食事のタイプと、それに対応する主要3社の療法食をまとめました。

犬と猫の消化器疾患対応表

食事管理の目的 対象となる疾患・症状 ロイヤルカナン ヒルズ ドクターズケア
高消化性 / 高栄養 急性・慢性下痢、体重減少、子犬/子猫、食欲不振 消化器サポート(高栄養) 犬猫用 i/d(アイディー) 犬猫用 ストマックケア
低脂肪 膵炎、リンパ管拡張症、高脂血症、小腸性下痢 消化器サポート(低脂肪) 犬用 i/d ローファット、犬用 i/d コンフォート 犬用 ストマックケア低脂肪
ストレス配慮 ストレス性の消化器症状、不安を伴う慢性腸症 犬用 i/d コンフォート
大腸性下痢・便秘 大腸性下痢、便秘 犬用 消化器サポート(高繊維)、猫用 消化器サポート(可溶性繊維) 腸内バイオーム 猫用 ストマックケア(可溶性繊維)
アレルギー対応 食物アレルギー、炎症性腸疾患(IBD) アミノペプチドフォーミュラ、低分子プロテイン、セレクトプロテイン z/d(ゼットディー)など アミノプロテクトケアなど

食物繊維の種類と働き

不溶性食物繊維(例:セルロース)

水に溶けにくい繊維で、うんちの量を増やしたり、腸を刺激する働きがあります。

  • 食事のカサを増やす
  • うんちの量を増やし、腸を刺激する
  • 腸内の余分な水分を取り込み、便の形を整える

可溶性食物繊維(例:サイリウム)

水に溶けてゲル状になる繊維で、便の質を改善します。

  • うんちをヌルヌルにして出しやすくする(粘滑性の増加)
  • 良い菌(善玉菌)を増やす
  • 「短鎖脂肪酸」を作り出す(大腸の粘膜の栄養源になる)

※ サイリウムは水分を吸収してゲル状になり、もとの量の10倍まで膨張する特徴があります。

猫の便秘に対する食事管理

【目的】 うんちの水分と粘性を保ち、腸が動くのを助けること。

【推奨される方法】

  • 巨大結腸症などのリスクを考慮し、うんちをヌルヌルにして出しやすくする可溶性繊維を増やす方が良いとされます。
  • 推奨療法食: 消化器サポート(可溶性繊維)など。

【注意点】

  • 猫の便秘は慢性腎臓病の初期症状であることもあるため、腎臓サポートなどの療法食が必要になる場合があります。
  • 腫瘍や腸の機能不全など、食事だけでは改善が期待できない病気(器質的要因)による便秘には、この食事管理はおすすめしません。

5. 液体療法食と電解質サポート

液体療法食(リキッドタイプ)

自力で食事ができない場合や、食事量を厳密に管理したい場合に利用されます。

主な特徴

  • すぐに使えるリキッドタイプ(200 ml入り)。
  • 電子レンジOK、チューブを通しての給与も可能。

専門的な内容

  • 経管チューブは3Fr(極細のサイズ)も通る設計。
  • シリンジで直接吸える特殊キャップ(針不要)付き。

電解質サポート

下痢や嘔吐などで失った水分を補給**するためのものです。

  • 目的: 水だけでなく、体に必要な電解質(Na、K、Clなど)や糖分、グリシンを含んでおり、失われた体液に近い組成で補給します。
  • 用量: 1袋をぬるま湯約500mlに溶かして飲ませます。

6. 消化器疾患の診察時のチェックリスト

獣医師が正確な診断と適切な治療法を選ぶために、以下の情報をできるだけ詳しく記録して伝えてください。事前にメモをしておくとスムーズです。

✅ 診察時の重要チェック項目

1. 最新の記録

年齢、体重、性別、品種、不妊手術を受けた日または最終発情、ワクチン接種歴、駆虫歴

2. 症状の開始時期

  • いつから症状が始まったか。
  • 食後から症状(下痢・嘔吐)までの時間。
  • 過去に同じ症状があったか?(ある場合:いつ、治療)。

3. 嘔吐について

  • いつから。
  • 食後から症状までの時間。
  • 食べた物が含まれているか(色や形も)。
  • 量、硬さ/色、血液は混じっていないか。

4. 下痢/便秘について

  • ずっと続いているか、時々起こるか。
  • 排便の頻度、量。
  • 硬さ/色、血液は混じっていないか。

5. 食事について

  • 市販の食事(タイプ、製品名)、自家製食(組成、調理法、保存法)。
  • 自由採食(いつでも食べられる)か時間を決めた食事か。
  • 食事の回数/日、最後に食事を変更した日、変更する頻度。
  • 一回の食事の量、飲水。
  • おやつや、他の動物の食事を摂取していないか、誰かが余分に食べ物を与えていないか。