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犬の椎間板ヘルニア

犬の椎間板ヘルニアとは、

犬の背中にある骨と骨の間にあるクッションのようなものが、

突然ズレたり壊れたりして、脊髄に圧迫をかける状態のことです。

 

症状としては、歩行が困難になったり、足の力が弱くなったり、

痛がったりすることがあります。

 

犬の種類によって発症しやすい傾向があり、ダックスフントやシーズーなどの小型犬種に多く見られます。

犬が椎間板ヘルニアになる原因としては、

加齢や肥満、過度の運動、遺伝的な要因が挙げられます。

症状が軽い場合は、安静にして薬を飲ませたり、物理療法を行うことで回復することがありますが、症状が重い場合には手術が必要になることもあります。

 

椎間板ヘルニアを診断するためには、いくつかの検査があります。

まず、神経学的検査では、犬の神経反射や姿勢を検査して、体の麻痺を測定し、

脊髄のどこに障害があるのかをおおよそ検討します。

次に、レントゲン検査では、椎間板ヘルニア自体を直接診断することはできませんが、

他の疾患がないか、背骨が曲がっていないか、椎間板が石灰化していないかなどを確認していきます。

 

脊髄造影検査では、ヘルニアの部位を確認するために、

腰の骨と骨の間に針を刺して脊髄の周りに造影剤を注入し、

椎間板の圧迫している部分を観察します。この検査は、椎間板ヘルニアの診断率が95%と高く、確定診断に役立ちます。

 

また、CTやMRI検査では、ヘルニアの診断だけでなく、

脊髄障害の程度や、造影検査では見つけることが難しい疾患を特定するのに役立ちます。

特にMRI検査は、重度の椎間板ヘルニアによって引き起こされる脊髄軟化症の診断が可能となります。

 

椎間板ヘルニアの治療方法は、病気の進行度合いによって違います。

症状があるけれど歩行はできる場合は、内科治療または外科治療が使われます。

再発のリスクが少なく進行性のない場合は、内科治療で治療を行います。

後ろ足が歩行困難な場合は、内科治療または外科治療で機能を回復させます。治療期間が長くなるため、歩行障害の症状によっては外科治療を選択することもあります。

 

歩行困難から排尿障害まで進行する場合は、

外科治療で治療を行います。内科治療だけでは十分な効果が得られないためです。

 

深部痛覚を失った場合は、内科治療の効果は期待できません。

この場合は、緊急手術を行う必要があります。手術が行われる時間が重要で、48時間以内であれば50%ほどの治療効果が期待できますが、48時間以降は成功確率が非常に低くなります。

 

椎間板ヘルニアが重度で中程度から重度の麻痺が出ている場合、

または症状が軽くても改善が見られない場合、脊髄に圧迫がかかっている場合には、外科手術によって圧迫物質を取り除く治療が行われます。

これによって、早期の機能回復を目指します。

手術方法には、胸腰部では片側椎弓切除術がよく使われ、

頸部ではベントラルスロット術がよく使われます。

また、複数箇所に椎間板ヘルニアがある場合は、椎体固定が必要になることもあります。

再生医療とは、

細胞や組織を修復・再生させることで、病気やけがの治療を行う医療の一種です。

具体的には、細胞や組織の再生を促す治療法を用いることで、

病気やけがの原因となる細胞や組織を回復させることができます。

幹細胞療法には、自分の細胞を使う自家幹細胞療法と、

他の動物の細胞を使う他家幹細胞療法があります。

自家幹細胞療法では、動物を全身麻酔して脂肪から幹細胞を取り出し、2週間かけて増殖させてから治療に使用します。治療を開始するには最低でも2週間かかることが、デメリットとなることがあります。

他家幹細胞療法では、あらかじめ細胞を冷凍保存しておき、解凍してすぐに治療に使用できます。

自家幹細胞療法と比較しても、治療効果に大きな違いはありません。

 

幹細胞療法は、椎間板ヘルニアや脊椎損傷などの症状に対して、

新しい治療方法として使われます。具体的には、足が立たなかったり痛がったりする子、

下半身麻痺や骨折の癒合不全、

自己免疫疾患、慢性腎不全、関節炎などが挙げられます。

椎間板ヘルニアでは、症状が軽いうちは飲み薬で治療しますが、

改善しない場合や重度の場合は手術が必要です。

しかし、幹細胞療法は手術以外の治療方法として、

麻痺が進行した子でも効果が期待できます。

手術を主軸に治療を提案していますが、

手術を望まない飼い主様には幹細胞治療が有益な選択肢となります。

 

進行性脊髄軟化症

 

  • 進行性脊髄軟化症は、急性の脊髄損傷や椎間板疾患により発生し、72時間以上かけて上行性下行性に進行する。
  • 人医療においては通常認められない病態であり、通常致死的な転機を取ることのない人の椎間板ヘルニアとの相違点は、しばしば獣医療トラブルの原因ともなる。

発生状況

  • HansenⅠ型椎間板ヘルニアGradeⅣ(対麻痺)以上の症例において、3-10%程度の確率で発生が認められる。
  • 後肢の運動機能が残存している症例(GradeⅢ)においては、基本的に発症しない。
  • 進行性脊髄軟化症の発症の有無は、対麻痺発症時にほぼ決まっており、手術の時期は脊髄軟化症の発生に影響を与えない。
  • 進行性脊髄軟化症の発症は、椎間板ヘルニアの発症から24時間以内に深部痛覚の消失に至った症例において顕著に高い。

病態

  • 正確な病態発生にメカニズムは解明されていない。
  • 予測的には、急性椎間板逸脱によって、脊髄神経細胞および脊髄血管系の直接的な障害(一次性損傷)が起こる。一次性損傷の重症度は、脊柱管内に脱出した椎間板物質の量と速度、また圧迫の程度と時間に依存する。一次性損傷によって脊髄に虚血性障害が起こると、組織を障害するカスケード反応によって二次的損傷が誘発される。
  • 二次的損傷発生の過程において放出される血管作用性物質は、重篤かつ進行性の血管痙攣、血栓を引き起こし、脊髄軟化症は上行性または下行性に広がり、進行性脊髄軟化症を発現する。

臨床症状

  • 沈うつ、食欲不振、嘔吐などの非特異的症状
  • 知覚の過敏
  • 神経学的異常の経時的変化

・ 当初横断性脊髄病変に伴う神経学的異常だったものが、多病巣性に変化。

・ 下行性に脊髄軟化が波及することで、後肢のLMNsや会陰反射の消失。

・ 上行性に脊髄軟化が波及することで、皮筋反射消失の頭側への移動、呼吸不全、ホルネル症候群、前肢屈曲反射の消失 など

・ 最終的には呼吸不全に伴う窒息により死に至る

  • 病態の発症は、対麻痺発現から5日以内に明らかとなり、3-7日にわたって進行する。5-7日を超えてからの発症は認められない。

予後

  • 治療法はなく、基本的にはほぼ全例で死に至る。
  • 極まれに、死に至らず病態の進行が止まることもある。
  • 脊髄軟化が広がらず局所(1-2脊髄分節)にとどまる場合は局所性脊髄軟化症であり、手術時の局所的脊髄軟化は、必ずしも予後不良を示すものではない。

対応法

  • 来院時、既に進行性脊髄軟化症を示唆する臨床症状が認められる場合には、手術を回避し、飼い主に対して予後不良な旨を説明する。
  • 手術後、進行性脊髄軟化症を示唆する臨床症状が発現した場合には、速やかに飼い主に対して予後不良の旨を説明する。
  • 進行性脊髄軟化症発現時には常に安楽死が考慮される。

・  ホルネル症候群や会陰反射の消失が認められた場合には、速やかに予後不良の判断をし、飼い主に説明すると同時に、安楽死もしくは自宅での死亡待機を検討する。