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猫の乳腺腫瘍🐱手術ノート

1. 片側全切除時の手順

片側全切除時は、2〜3乳腺間で分割します。

頭側の乳腺は正中には存在していないため、第2乳頭より頭側の切皮ラインは正中から徐々に外側に切り込んでいきます。

頭側に剥離を進めると、第2〜3乳頭間に浅前腹壁動静脈が現れるので、これを処理します。

メッツェンバウム剪刀(曲)を深胸筋の直下に入れ、胸骨側の切開ライン上でメッツェンバウム剪刀を持ち上げ、そのままガイドにしてその上を電気メス(凝固モード)で切開すると、出血をコントロールしながら綺麗に離断することができます。

2. 外側胸動静脈の確認と処理

脂肪が多く外側胸動静脈を認識しづらい場合は、内側からライトを当て、皮膚側から透かして見ると血管を確認できます。

外側胸動静脈は第1〜2乳腺間の外側の皮下組織内、深胸筋尾側と広背筋との間から伸びています。

外側胸動静脈が十分に露出するまで剥離を進めます。

外側胸動静脈に並走して、リンパ管外側胸神経が走行しています。

3. 血管とリンパ節の結紮離断

腋窩動静脈から分岐している外側胸動静脈を、腋窩動静脈を損傷させないように注意しながら結紮離断します。

(腋窩動静脈を誤って結紮すると肢が壊死します。気管の神経も隣接するため、切除する際に、これらの部位に損傷が加わると、呼吸不全を起こす可能性があります。)

腋窩リンパ節は、腋窩動静脈と外側胸動静脈の分岐部周囲に存在するため、リンパ節より近位で血管を処理します。

助手は、鉤やアリス鉗子で浅胸筋を頭側に牽引することで、術者が腋窩部の操作を行いやすくなります。

外側胸動静脈の外側をメッツェンバウム剪刀もしくはメスで切開していきます。このとき、リンパ管や副腋窩リンパ節を意識しながら離断します。

4. 副腋窩リンパ節の確認

副腋窩リンパ節は、外側胸動静脈沿いに存在しています。複数認められる場合もありますが、腫大していない場合は認識しづらいです。

5. 頭側の組織の離断と切除の完了

頭側まで切開を進めたら、腋窩リンパ節を確実に切除側に入れ、頭側に付着している筋肉や皮下組織を離断します。

最後に皮膚側を切除し、頭側の乳腺、リンパ節(腋窩リンパ節、副腋窩リンパ節)、リンパ管の一括切除が完了します。

外側胸動静脈沿いに皮膚も含めて切除を進めると、腋窩部の皮膚を切除しすぎてしまう可能性があります。腫瘍による皮膚固着などがなければ、頭側の皮膚と乳腺部を違うラインで切除してもよいです。(頭側の皮膚を残すことで縫合が容易になります)

6. 切除後の処置と縫合

切除後の外観は、比較的広範囲に皮膚欠損が生じています。手袋を交換し、温めた滅菌生理食塩液にて十分に洗浄を行い、器具を一式交換します。

皮膚縫合の前に皮下組織を十分に剥離します。剥離の際は、皮下組織と筋膜直上の間に外科剪刀を入れ、横ではなく縦に広げることで、血管の損傷を最小限に抑えられます。

剥離後、筋肉断端を含め術創全体に、覚醒後の疼痛緩和目的でブピバカインを散布します。

浅胸筋、深胸筋を吸収糸にて連続縫合します。連続縫合の間は2〜3本の単結節縫合で補強します。

ペンローズドレーンを多孔式にして設置します。(J-VACなどの閉鎖式低圧持続吸引ドレーンでもよい)ドレーンの頭側は深胸筋の下に設置します。

皮膚を寄せやすくするため、前後肢の保定を緩め、頭側から皮下組織を吸収糸にて連続縫合します。鼠径部では深部より皮下組織をすくうことで、死腔を減らすことが可能です。

皮膚が寄せづらい場合は、タオル鉗子で均等に寄せておくと、縫合部にかかるテンションを分散でき、縫合しやすくなります。また、組織の乾燥や体温低下を抑制できます。

縫合後に締め付けが強く、呼吸制限などの合併症の危険を感じた場合は、スリット(メッシュ)を入れて減張します。猫は犬と比較して皮膚が寄りやすいため、片側全切除でスリットが必要になるケースはほとんどないと思われます。


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