症例報告:腹腔内腫瘤と診断された猫の治療経過(詳細版)
はじめに
今回は、腹腔内の腫瘤(しこり)とそれに伴う様々な症状を示した猫の症例について、その後の経過と治療内容をより詳しくご報告します。個人情報保護のため、飼い主様のお名前や猫の名前は伏せて記載いたします。
症例
- 患者: ミックス猫、去勢オス、初診時約6歳
- 主訴: 健康診断・ワクチン接種希望、顔周りのイボと顎ニキビの確認
- 元気・食欲: あり
- ウイルス検査: 猫エイズ・白血病ウイルス検査は陰性
初期症状と検査 (2024年12月以前)
- 症状: 顔周りや耳のかゆみ、赤み、脱毛、下痢、喘息様の咳
- 治療: 抗生物質(コンベニア)とステロイド(プレドニゾロン)を症状に応じて用量調整しながら投与
腹腔内腫瘤の発見と試験開腹 (2024年12月)
- 腹部エコー検査にて中腹部に拳大の腫瘤を確認
- 細胞診と細菌培養検査を実施し、培養で大腸菌を検出
- 抗生物質(アモキクリア)と整腸剤(ディアバスター)で治療開始
- 再度エコー検査で膀胱近くにも腫瘤を確認
- 手術による切除または生検を検討
- 2024年12月13日に試験開腹手術を実施
- 腫瘤と大網の一部を生検し閉腹
病理組織検査結果 (2024年12月17日受付)
- 生検組織の病理検査で「炎症性肉芽組織」と診断、好酸球の多い強い炎症と線維化を認めた
- 非腫瘍性の「消化管好酸球性硬化性線維増殖症」が示唆され、悪性所見は認められなかった
診断後の治療と投薬量の変化 (2024年12月以降)
- 細菌感染制御:抗生物質(アモキクリア)と整腸剤(ディアバスター)を継続
- 免疫抑制:プレドニゾロンを1日5mg→10mg(1月)、10mg→5mg(3月)、5mg→2.5mg(4月)へ慎重に調整
考察
本症例は、消化管好酸球性硬化性線維増殖症という非腫瘍性で稀な疾患が疑われた。
治療は細菌感染制御の抗生物質と免疫抑制のステロイドが主体となり、用量調整が鍵となる。
内科的治療により腫瘤の縮小傾向が認められたが、長期的な管理とフォローが必要である。
注意
- これは一例であり、すべての猫に当てはまるわけではありません。
- 体調に異変を感じた場合は必ず獣医師にご相談ください。