診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
複数の持病を抱える猫の飼い主様から、日々多くのご相談を受けます。
「血液検査の数値が少し悪化したから、点滴の頻度を増やすべきか」
「療法食をどうしても食べてくれないが、どうすればいいか」
愛する家族に1日でも長く元気でいてほしいと願うその深い愛情には、獣医師としていつも心を揺さぶられます。
臨床現場でのリアルな悩み:ある飼い主様と愛猫のケース
先日来院された飼い主様も、愛猫の検査結果に一喜一憂し、深い葛藤を抱えておられました。愛猫は慢性的な腎機能の低下(慢性腎臓病:CKD)に加え、慢性膵炎の既往があり、さらに心機能にもわずかな懸念を抱えています。
今回の定期検診では、腎臓の数値は以前よりも改善傾向にあったものの、膵臓の炎症マーカーが前回よりわずかに上昇していました。それを見た飼い主様はひどく落胆され、「やはりもっと積極的な治療をすべきでしょうか」と思い詰められていたのです。
さらに飼い主様を苦しめていたのが「食事のジレンマ」でした。実は、獣医学的に「腎臓病」と「膵炎」の併発は、食事管理において非常に厄介な矛盾を抱えています。
つまり、どちらの臓器にも完璧に配慮した魔法のフードは理論上存在しないのです。飼い主様が「療法食だけでは食べてくれず、トッピングをしてしまう」と強い罪悪感を抱えていた背景には、こうした限界がありました。
では、膵臓の数値を完全に正常値の枠に押し込めるために、あらゆる医学的手法を尽くすべきでしょうか。病態生理を紐解けば、答えは必ずしも「イエス」ではありません。

この炎症の連鎖を断ち切るために、どのような治療が必要になるでしょうか。
さらに忘れてはならないのが、精神的なストレスです。
私は飼い主様に、心エコー検査や血液検査の全体的な結果を踏まえた上で、こうお伝えしました。
「心エコーの所見は正常範囲内で美しく維持されており、血液の逆流もありません。また、院内での採血という強いストレス下でも血糖値は正常範囲に収まっており、現時点で糖尿病への移行リスクは極めて低いです。ご自宅での献身的な水分ケアのおかげで、今の愛猫ちゃんは絶妙なバランスが保たれています。嘔吐や下痢などの消化器症状が出ていない今の段階で、過剰に医療介入することは、かえって心臓や心に負担をかけます。今はあえて何もしない、『引き算の医療』を選択しましょう」


食事の悩みに対しても、明確な方針をお伝えしました。
ベースは療法食としつつも、食べてくれるための「現実的な妥協点(少量のトッピング)」を見つけることは、決して間違ったことではなく、現在の良好なコンディションを支えるために必要な工夫であると肯定させていただきました。
情報が氾濫する現代において、エビデンスの不確かなサプリメントを何種類も与えたり、わずかな数値の変動に対して過剰な処置を求めたりする風潮があります。しかし、複数の疾患を抱える動物にとって本当に必要なのは、病気を完全にねじ伏せることではありません。それぞれの臓器の小さな悲鳴に耳を傾け、病態生理のメカニズムを俯瞰し、絶妙なバランスを取りながら、ご家族と過ごす「穏やかで心地よい時間」を1日でも長く引き延ばすことです。
当院が目指すのは、単に検査データを正常値の枠に押し込める医療ではありません。医学的根拠に基づいた緻密な現状分析を行った上で、動物への負担を最小限にする「最適な引き算」をご提案することです。もし、愛するペットの治療方針に行き詰まりや迷いを感じていらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。数値だけでなく、目の前のその子自身の「生きる質(QOL)」を見つめる本質的な医療を、共に考えていきましょう。
Managing cats with multiple concurrent diseases—such as chronic kidney disease (CKD), chronic pancreatitis, and early-stage heart disease—often presents a complex dilemma. For instance, the dietary requirements for CKD (high fat) directly contradict those for pancreatitis (low fat). Moreover, aggressive interventions aimed at completely normalizing organ values can inadvertently cause harm; excessive IV fluids may trigger heart failure, and steroids used for pancreatic inflammation can induce insulin resistance and diabetes.
We emphasize the importance of looking beyond isolated blood test numbers. Unnecessary hospital visits and treatments induce severe stress and hyperglycemia, worsening the cat’s overall condition. Our philosophy is rooted in “subtractive medicine”—meticulously evaluating the animal’s physiological balance and knowing when to strategically withhold excessive interventions. By prioritizing enteral nutrition, minimizing clinical stress, and finding realistic compromises in dietary care, we aim to maximize your pet’s quality of life (QOL) and ensure they spend as many peaceful days at home as possible.
在兽医临床中,管理同时患有多种疾病(如慢性肾病、慢性胰腺炎和早期心脏病)的老年猫咪,往往面临复杂的治疗困境。例如,保护肾脏所需的“高脂饮食”与控制胰腺炎所需的“低脂饮食”存在直接冲突。此外,为了将某项血液指标恢复正常而采取的激进治疗,可能会带来医源性风险:过度的静脉输液可能引发心力衰竭,而用于抗炎的类固醇药物则可能诱发胰岛素抵抗甚至糖尿病。
我们强调,医疗不应仅仅停留在修正检查数值上。频繁的就诊和过度干预会给猫咪带来极大的精神压力,导致应激性高血糖,从而恶化全身状况。我们提倡“减法医疗”——在严谨的医学评估基础上,把握各器官之间的微妙平衡,适时减少不必要的过度治疗。通过重视肠道营养、减少临床应激,并在日常饮食管理中寻找切合实际的平衡点,我们致力于最大化宠物的生命质量(QOL),让它们能在家中度过更多平静、舒适的时光。