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犬の心臓病 MR 僧帽弁閉鎖不全症

心不全の症状

僧帽弁閉鎖不全症になると、心拡大がおこり、気管支が圧迫されてが出ます。また、全身への血流がうまく回らず、元気も低下します。(運動不耐性)さらに心臓の動きが悪くなると、心臓に入る前の肺血管に血液がたまってきます。血管内に血液をためきれないと、肺に水分が漏れて呼吸困難に至ります(肺水腫)。心拡大が進むと心筋が伸び、刺激がうまく伝わらず、不整脈を起こします(脳に血液が回らず、失神します)。

一旦心臓病になると、もとの状態に戻すことはできません。症状にあった治療を行い、心臓病の進行を遅らせることが重要です。

治療

心臓の収縮力を強化する (強心薬 ピモベハート)(ピモベハートは血管を拡張させる機能も持っています。)。尿を排泄させて心臓に溜まる血液量を減らす(利尿剤)。強力に血管を拡張させる(カルシウム受容体拮抗薬 アムロジピン)。心臓病が重度になると、お薬の種類が増えてくることが一般的です。


ステージB2、つまり心拡大があったら治療スタートです

B2ではもう少し時間が経つと症状に現れる状態です。強心剤の投薬管理が必要です。

ステージCとDの治療

ステージCでは、血管拡張薬の投薬を継続し、必要に応じて強心薬や利尿剤の投薬治療が必要です。ステージDでは、血管拡張薬の投与を1日2回、利尿剤は増量し、強心薬は1日3回行います。必要に応じてさらに強い血管拡張薬(アムロジピン)の投薬が必要です。

心拡大は画像検査で評価します

エコー検査やレントゲン検査を組み合わせて心臓の大きさや心臓の内部の血流を確認します。

 

超音波検査

 

心臓のどの部位に異常があるのか、どの程度の逆流が起きているのかを細かく評価することが可能です。
横向きに寝かせて検査しますが、興奮して息が切れてしまったり、チアノーゼになる子はお座りの状態で、お顔元に飼い主様に付き添っていただき検査を行なっています。
僧帽弁が閉じているか、左心房の大きさはどの程度かを評価することに重点を置いています。

レントゲン

心拡大、肺水腫がないかを見ています。同時に、気管虚脱や、肺腫瘍などの合併症がないかを、評価します。
肺で酸素交換ができていると、黒く映ります。白くなっている場合、肺水腫を起こし、呼吸不全に陥っているサインです。利尿剤と鎮咳薬を投与し、酸素室に入れるなどの救急の処置が必要となります。

強心剤

心臓が拡大している場合は心臓を強く動かして全身に血液を送ることで、症状の進行を遅らせることができます。

ピモベハートは体重1kg当たり0.25mg以上の用量で、1日2回の投与が必要です。5kgまでは1.25mg、5kg〜10kgでは2.5mgが1回の投薬量になります。重症の子では体重1kgあたり、0.5mg、1日3回の投与が必要になります。

心拡大から約2年で心不全発症。

心拡大のみ(stageB2)でピモベンダンで心不全までの期間を遅らせ、生存期間2倍にします。4年に。投薬なしなら2年

突然投薬をやめると一気に心臓病が悪化することがあります。

1回量が足りないとまったく効きません。

体重の増減がある場合にも所定の量になっているかを確認してください。

大きい錠型の方が、割安です。

ピモベハートは分割線が入っているお薬なので、ご自宅で簡単に半分に割ることができます。

ピモベハートは1.25mg、2.5mg、5mgの錠型があります。大きいシートで処方をご希望の方はお申し出ください。

利尿剤

重度心不全の時に使います。血液をおしっこにする治療です。ルプラック(トラセミド)は1日1回で持続時間が長く、耐性ができにくい薬です。腎臓に負荷がかかっていないかどうかを血液検査(BUN,cre,電解質)で確認します。体重1kgあたり0.1mgで1日1回の投薬が最低必要量になります。5kgまでは1/8錠が1回に必要な量になります。投薬中に排尿量が減っていたら、利尿剤へ耐性を獲得してしまっている可能性があるため、増量又は他の利尿剤の増薬が必要になります。

フロセミドは速攻性があるため、肺水腫の症例で使っています。効く時間が短いです。状態に合わせて1日1回から2回を選んでいます。継続して利尿剤が必要な時にはルプラック(トラセミド)へ切り替えています。

血管拡張剤(アムロジピン)

血管を広げることで心臓から血液を送り出す負担を軽くします。血圧の低下に注意が必要です。ふらつきなどが見られたら、休薬して病院にご相談ください。

1kgあたり0.05mg以上、1日1から2回で投薬をお願いしています。5kgの子で1/8錠からスタートします。

シルデナフィル(バイアグラ)

肺の血管を広げる薬で
重度の心不全や肺高血圧症の症例で使用 します。0.5〜2mg/kg 1日2回から3回

食事療法

心臓病のペットには塩分制限が重要です。利尿剤使用前の過度な塩分制限は心臓に負荷をかけるため、注意が必要です。

利尿剤使用前は早期心臓サポートと関節サポートが推奨されます。利尿剤使用後は、心臓サポートに重点を置くことが重要です。

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胸部レントゲン評価の詳細

気管虚脱の評価では、頸部は吸気時、胸部は呼気時に注意深く確認します。

心拡大の評価では、Vertebral Heart Score(VHS)を使用します。

犬の平均VHSは9.7 (±0.5)、猫は7.5 (±0.3)ですが、

以下の犬種は平均から逸脱することがあります:

  • ヨークシャー・テリア: 9.9 ± 0.6
  • スピッツ: 10.21 ± 0.13
  • キャバリア: 10.6 ± 0.5
  • ポメラニアン: 10.5 ± 0.9
  • パグ: 10.7 ± 0.6
  • ラブラドール・レトリーバー: 10.8 ± 0.6
  • ウィペット: 11.0 ± 0.5
  • ボストン・テリア: 11.7 ± 1.4
  • ブルドッグ: 12.7 ± 1.7
  • ダックスフント: 9.7 ± 0.5
  • シーズー: 9.5 ± 0.6
  • ビーグル: 10.3 ± 0.4

肺水腫の識別も重要で、特に犬では肺の後葉から発生するパターンが一般的です。レントゲン画像で肺が白く映る場合、肺水腫の存在を疑います。

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動物看護師のためのエコー検査ガイド

LA/AOは2.5以上になると、肺水腫のリスクが高まるため、正常の基準(1.5)を越えたら、強心剤をスタートします。

左心室の収縮力や拡張機能、肺動脈、大動脈、僧帽弁、三尖弁の逆流の評価、左心房の拡大などを重点的に確認します。

動物に負担をかけないように、救急エコーのスタイルで右胸壁から当てて検査を行います。必要があれば左胸壁でも検査を実施し、E波、A波や逆流速度の評価を行います。

肺動脈の逆流や三尖弁に逆流がある場合、心室中隔壁が押し潰されている場合は、重度の肺高血圧症の兆候です。これらのサインを見逃さないように注意が必要です。

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肺水腫の治療: 看護師向けガイド

心臓病が原因で起こる肺水腫では、呼吸困難や浅い呼吸、努力呼吸などの症状が見られる、咳が出ることもある。治療方針としては、急性肺水腫の治療には酸素療法と循環管理が主に行われる。

呼吸が困難な場合は、即座に酸素療法を開始する。酸素療法にはいくつかの方法があるが、病気が進行している場合や極度に体力が落ちている場合は、気管挿管をして陽圧呼吸管理を行うこともある。

①初期治療
犬や猫の心不全の治療にはフロセミドが使用される。
フロセミドは尿を増やし、体から余分な水分を排出する効果がある。
フロセミドの投与量は、静脈注射で0.2ml/kg。2mg/kgから始めて、8mg/kgまで1時間ごとに増量し、呼吸数の減少や排尿の有無で効果を判定する。
継続的な投与量は0.7mg/kg/hrで、ACVIMでは1mg/kg/hrまで可能。

②酸素室の準備
保冷剤をたくさん入れることが重要。フェイスマスクによる酸素化は、再呼吸で二酸化炭素を吸入するデメリットがある。排尿の確認は2時間以内に行い、腎臓の機能も考慮する必要がある。

③強心剤と利尿剤の混合点滴
ドブタミン(強心剤)とフロセミド(利尿剤)を混ぜた点滴を作成。
具体的な混合割合
ソルラクト50ml + 5%グルコース50ml + フロセミド 1ml + ドブタミン 1.2ml。
流速は0.5ml/kg/hr
で調整し、持続的に薬を投与する。

④呼吸の確認
呼吸が速い時は40回/分くらい。
落ち着いてくると徐々に呼吸回数が減ってくる。
呼吸数は15秒カウントして、呼吸回数を算出する。

⑤問診の注意
呼吸の状態(興奮時のパンティングは普通、安静時に速い、寝れないなどの時は注意)
肺水腫は呼吸が止まってしまう可能性がある。
電話で呼吸が苦しそうと言われたらすぐに来院を促す。

心臓病による肺水腫の治療: 薬剤の詳細

心臓病による肺水腫の治療において、複数の薬剤が重要な役割を果たします。

  • ①ドブタミン
    心拍出量を増加させる強心剤で、5-8μg/kg/minの投与量から始め、必要に応じて15μg/kg/minまで増量可能。血管拡張作用がありますが、心筋の酸素要求量を増加させ、不整脈を誘発する可能性があるため、ECGモニタリングが必要です。
  • ②ミルリノン
    PDEⅢ阻害薬で、ピモベンダンと同じく血管拡張作用と陽性変力作用を持つ。ミルリノンはドブタミンほど心拍出量を増加させないが、0.375-0.75μg/kg/minの投与量で使用されます。
    副作用として、低血圧、腎機能障害、血小板減少、肝障害、心室細動、心室頻脈、心房細動、期外収縮がある。
  • ③カルペリチド®️ハンプhANP
    遺伝子組換えヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドで、RAA系の抑制と利尿作用を持ちます。低血圧やショック症例には使用できない。0.05μg/kg/minで投与し、フロセミドやシルデナフィルとの併用には注意が必要です。
    副作用として、血圧低下、低血圧性ショック、徐脈、不整脈、電解質異常、赤血球増多、血小板増加・減少、肝機能障害、顔のほてり、めまい、白血球増加、BUN上昇、胸部不快感、呼吸困難がある。

これらの薬剤は肺水腫治療において重要ですが、各薬剤の特性と患者の状態に応じた適切な使用が求められる。