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膀胱の移行上皮がんとは、犬にとって最も多い悪性の膀胱腫瘍の一つで、女の子の犬に多く発生します。
この病気になりやすい犬種としては、シェットランドシープドッグなどが挙げられます。
除草剤、殺虫剤による暴露などが、この病気を引き起こす危険因子として報告されています。
主な症状は、血尿、排尿困難、頻尿などで、一般的な膀胱炎と似ています。
また、骨への転移による跛行を示すことがあります。
尿沈渣中に腫瘍細胞が見つかることがあるため、
尿検査は重要ですが、診断にはそれだけでは不十分です。
胸部レントゲン検査で転移の有無を確認し、
超音波検査で腫瘍の位置や大まかな範囲、膀胱以外の尿路への浸潤、
領域リンパ節や他の臓器への転移の有無を確認することができます。
カテーテル吸引生検で確定診断が行われます。
また、尿を外部の検査センターに送り、移行上皮癌や前立腺がんで多い、
BRAF遺伝子変異の有無も調べることがあります。
これらの検査結果を基に、以下の臨床ステージングシステムが使われます。
膀胱がんには、T0からT3の4段階と、N0からN2、M0からM1の3つのステージがあります。
Tは腫瘍の大きさと広がりを表し、
Nはがんが広がっているリンパ節の数、
Mはがんが遠くの臓器に転移しているかどうかを表します。
犬の膀胱がんの多くは、膀胱壁に浸潤していることが多く、
また尿道や前立腺に波及することがあります。
膀胱がんの治療には、外科手術があります。
膀胱瘻チューブの設置、
膀胱部分切除術、
膀胱全摘出術および尿路変更術(尿迂回術)などの方法があります。
膀胱瘻チューブは、尿の流れをバイパスするために行われる、緩和的な治療であり、
膀胱部分切除術は、膀胱がんが肉眼的に全切除可能な場合に行う手術で、通常は根治目的ではなく、膀胱容積が減少して頻尿になることがあります。
膀胱全摘出術および尿路変更術は、膀胱全摘出後に尿路を変更する手術で、
膀胱がんの根治治療として最も可能性がある手術方法ですが、
侵襲が強く、術後は尿が常時出るなどの、飼い主 様側への負担が大きい治療です。
膀胱の移行上皮がんは、膀胱の三角部にできることが多く、尿管の出口が腫瘍によって詰まって、
水腎症を引き起こし、致命的な腎不全を引き起こすことがあります。
放射線療法は、現在では一般的な治療法ではありません。
化学療法は、再発率や転移率が高いため、
長期的な寛解や治癒を得るために推奨されます。
非ステロイド消炎鎮痛剤の効能が認められており、
腎臓の機能が正常であれば、投薬治療を行います。
近年東京大学の研究で、膀胱がんになった犬に対して、
分子標的薬の「ラパチニブ」が効くことがわかりました。
ラパチニブを使った治療を受けた犬のうち、
半数以上の犬ががんが小さくなり、生存期間も従来の治療法よりも2倍以上長くなりました。
また、尿に含まれるがん細胞を使って、ラパチニブが効くかどうかを調べるバイオマーカーが見つかったことも分かりました。
具体的には、HER2タンパク質が多くなっていたり、HER2遺伝子が増えていたら、ラパチニブが効きやすいことも明らかになりました。
ただし、難点なのが、高価な薬である事です。
ご希望の方は、当院でも処方可能なので、ご相談ください。