診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
外科医としての冷徹な事実と論理的な誠実さをもって、本症例を報告します。
【背景:経過観察が招いた慢性化の代償】
今回の患者さんは、肛門嚢(こうもんのう)が破裂した後、他院にて「そのまま瘡蓋(かさぶた)になるから大丈夫」という説明を受けていました。しかし、現実は説明とは異なり、瘡蓋になるどころか排膿が止まらず、患者さんは数ヶ月間、慢性的な疼痛と不快感に晒され続けることとなりました。この「様子を見る」という判断が、結果として組織の壊死を招き、手術をより侵襲的なものへと変えてしまったという臨床的事実を、私たちは重く受け止める必要があります。
「様子を見る」という言葉が、時に最も残酷な選択肢になることがあります。
今回ご紹介するのは、約11歳の小型犬の患者さんです。難治性の化膿を伴う肛門嚢疾患に対し、外科的切除を実施しました。肛門周囲の疾患は便による汚染が避けられず、外科治療においても極めてシビアな管理が求められます。本報告の目的は、不適切な放置が招く組織破壊の現実と、それを挽回するための外科治療に伴う致死的リスクについて正しく理解を深めていただくことです。
外科手術を避け、さらに様子を見続けた場合、患者さんは以下のリスクに直面します。
この患者さんには「気管虚脱」という呼吸器系の基礎疾患がありました。これは麻酔時や覚醒時に気道が塞がり、窒息死するリスクが極めて高いことを意味します。このリスクに対し、当院では以下の制御を行いました。
壊死した組織を完全に取り除くため、以下の処置を断行しました。









手術が成功しても、すぐに元通りになるわけではありません。術後1日目には傷口からの静脈性出血があり、連日の点滴と止血管理が必要でした。また、排膿が止まらず抗生剤の種類を変更し、飼い主様にはご自宅で毎日患部を洗浄する処置を継続していただきました。術後11日目にようやく出血が止まり、瘡蓋が形成され始め、排便も確認できるようになりました。これが外科の現場におけるリアルな「回復」の過程です。
「様子を見ましょう」という判断が、時に最も残酷な結果を招くことがあります。手遅れになれば、本来守れたはずの筋肉まで失うことになります。当院は、たとえ厳しい現実であっても、論理的な誠実さをもって真実をお伝えし、命を最優先した提案をいたします。
This report details the surgical treatment of chronic anal sac rupture in an 11-year-old dog. Due to deferred treatment at a previous clinic, the infection became chronic, leading to necrosis of the external anal sphincter. We performed bilateral anal sac excision and partial sphincter resection, combined with dental extractions. Despite the respiratory risks associated with tracheal collapse, the procedure was safely managed using multimodal analgesia (including local infiltration anesthesia) and continuous blood pressure monitoring. Post-operative recovery involved managing hemorrhage and persistent suppuration through medication changes and home-care irrigation, eventually leading to successful healing. This case highlights the clinical risks of excessive “waiting” and the necessity of timely surgical intervention.
本病例报告了一只11岁小型犬的慢性肛门囊破裂的外科治疗过程。由于在之前的医院仅采取观察措施,导致感染慢性化并引发肛门外括约肌坏死。我们实施了双侧肛门囊切除术及部分括约肌切除术,并同时进行了拔牙手术。考虑到患者患有气管塌陷,麻酔过程中采用了多模式镇痛(包括局部浸润麻酔)和持续血压监测以确保安全。术后恢复过程中出现了出血和持续化脓,通过更换抗生素和家庭日常冲洗护理,最终伤口成功愈合。本案例警示:过度“观察”可能导致病情恶化,适时的外科干预对于挽救患宠生命至关重要。