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【YouTube動画スクリプト】猫の黄疸

愛猫のサインを見逃さないで。猫の黄疸と関連疾患について

皆様、こんにちは。

大切な家族である猫ちゃんの健康は、飼い主さんにとって何よりも気掛かりなことですよね。今回は、猫の体調不良のサインの一つである「黄疸(おうだん)」と、その背景に隠れている可能性のある病気について、詳しく解説していきます。

Point 1: 猫の黄疸、主な原因は?

猫の黄疸でまず疑われるのは、胆管肝炎膵炎です。

特に、黄疸と胆管の肥厚が確認されると、以下の3つの臓器が同時に炎症を起こす「三臓器炎」の可能性を考えます。

  • 💛 膵炎(すいえん)
  • 💛 胆管炎(たんかんえん)
  • 💛 腸炎(ちょうえん)

【知っておきたい検査のこと】

総胆汁酸(T-Bil)の数値に異常がある場合、追加の胆汁酸試験(TBA試験)は不要です。また、腸炎の治療は、人のIBD(炎症性腸疾患)と同じようなアプローチで行います。

Point 2: 検査で気をつけたいこと

  • 🐾 PLI(膵リパーゼ免疫活性検査)は、時に偽陰性(本当は異常があるのに正常と出てしまうこと)になるため、結果の解釈には注意が必要です。
  • 🐾 炎症性の病気では、約50%が肝臓や腸にも炎症が広がっていると言われています。
  • 🐾 細胞検査で好中球が多ければ細菌感染を疑い抗生物質を、リンパ球プラズマ細胞が多ければIBDと同様の治療を検討します。

Point 3: 胆管肝炎と検査のリスク

胆管肝炎が疑われる場合、超音波検査で様子を見ながら細胞を採る検査(細胞診・FNA)を行うことがあります。しかし、その前には必ず血液が固まる機能(凝固系)のチェックが不可欠です。

  • 🐾 胆管肝炎では、血液を固まりにくくする異常(PTやAPTTの延長)が見られることがあります。
  • 🐾 これは、胆汁の流れが滞る「胆汁鬱滞(たんじゅううったい)」により、脂溶性であるビタミンKが吸収できなくなることが原因です。
  • 🐾 ビタミンKが不足すると、血液を固めるための重要な因子(第2, 7, 9, 10因子)が作れなくなってしまいます。

この状態を改善するため、ビタミンKを注射で補い、血液が固まる時間を定期的にチェックします。胆汁の流れが元に戻れば、凝固系の異常も正常化していきます。

Point 4: もっと詳しく調べるには?生検の方法

より正確な診断のために組織の一部を採取する「生検(バイオプシー)」には、いくつかの方法があります。

  • 超音波ガイド下生検
    肝臓のみ採取可能。腸はできません。
  • 腹腔鏡下生検
    お腹に小さな穴を開けて行う検査。膵臓・肝臓・腸の全てから採取できますが、腸は技術的に1箇所のみです。
  • 外科的生検
    開腹手術による方法。全ての臓器から、さらに消化管は複数箇所の採取が可能です。同時に栄養チューブの設置もできます。

📋 実際の症例ケース

急な食欲不振で来院した4歳の男の子(去勢済)


症状:急性の食欲不振、触診で腸の肥厚あり。

検査:細胞検査でリンパ球優位の混合炎症。リンパ腫は否定。

治療:ビタミンB12の注射、加水分解食(アレルギー対応食)、プレドニゾロン(ステロイド)による治療を行いました。

Point 5: 黄疸の3つの分類と原因

猫の黄疸は、原因となる場所によって大きく3つに分類されます。

  • 【肝前性】肝臓より前の問題
    主に血液の病気(溶血性貧血)が原因です。貧血がなければ、この可能性は除外します。(原因例:ヘモプラズマ感染、自己免疫疾患、ワクチン関連など)
  • 【肝性】肝臓自体の問題
    肝臓の細胞が壊れたり、機能が低下したりすることが原因です。(原因例:肝リピドーシス、胆管肝炎、リンパ腫、FIP、感染症、中毒など)

    ※薬物性では人の風邪薬に含まれるアセトアミノフェンによる中毒が最も多いので絶対に与えないでください。

  • 【肝後性】肝臓より後の問題
    胆汁の通り道(胆管)が詰まることなどが原因です。(原因例:膵炎が最多、胆管の病気、腫瘍など)

猫の黄疸について、少し詳しく解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

「いつもと違うな」と感じたら、それは大切な愛猫からのサインかもしれません。気になることがあれば、早めに動物病院に相談してくださいね。

ご一読いただき、ありがとうございました。