047-700-5118
logo logo

診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診

banner
NEWS&BLOG
大きな腫瘍を摘出した後の傷の閉鎖法🐕🐈🌸

傷の閉鎖方法

大きな腫瘍除去手術後の傷を治癒させるための方法として、保存的治療と外科手術による閉鎖があります。

保存的治療は時間がかかる可能性がある一方で、外科手術はRandom pattern flapとAxial pattern flapの二つの方法が主に用いられます。
皮弁手術は、大きな腫瘍摘出後の傷を適切に閉鎖するための有効な方法です。ペットの健康状態や傷の特性によって、適切な皮弁法を選択し、慎重な手術を行うことが重要です。術後のケアもまた、ペットの快適性と回復に不可欠です。

皮弁の詳細

Random Pattern Flap(ランダムパターンフラップ): この方法では、体の任意の部位から皮膚を採取し、傷を覆います。しかし、血行が不安定になりやすいため、主に小規模な傷に適しています。

Axial Pattern Flap(軸状パターンフラップ): 特定の血管に沿って皮膚を採取し、より大きな傷を覆います。血管軸を損傷しない限り、皮弁壊死のリスクは低いですが、作成できる部位には制限があります。

これらの手法は、個々のペットの状態や傷の特性によって選択されます。適切な選択と管理により、効果的な治癒とペットの快適性が実現されます。

治療成功のための注意点

感染の管理: 感染した傷は皮弁手術の適応外です。手術前には感染をコントロールし、必要に応じてデブリードマンを行います。

血液供給の重要性: 皮弁の生着と壊死を防ぐためには、適切な血液供給が必要です。血管の損傷を避けることが重要です。

基礎疾患のリスク

特定の基礎疾患を持つ動物では、皮弁手術のリスクが高まることがあります:

低アルブミン血症や貧血: これらの状態は皮弁の生着率を低下させる可能性があります。術前の検討が必要です。

凝固障害や血栓形成: これらの疾患は皮弁壊死のリスクを高めるため、慎重な術前評価が求められます。


肘に腫瘍ができた場合

肘はわんちゃんが歩く時に動く場所で、皮膚自体が伸びにくいところなので、傷を閉鎖しても裂けてしまうことがあり、通常の閉鎖方法では、うまくいかないことが多いことが、難点です。

また、腫瘍外科の場合には、初回の外科手術で、しっかり取らないと、再発しやすく、さらに悪性度が増すため、さらに完全切除をすることが困難となります。

軸状皮弁について

当院では軸状皮弁という、栄養血管があり、皮膚が延びやすい部位から一部皮膚を切開して、移植する方法で傷の閉鎖を行っております。栄養血管は皮弁の根本であれば、十分な栄養を皮膚に運ぶことができますが、皮弁の先端に行くと、栄養不足になり、皮弁が壊死することが術後の合併症として注意する点になります。

もし、傷が開いた場合には、洗浄、消毒を行い、健康な肉芽が形成されるのを待つことになります。


肘ヒダ皮弁法

肘ヒダ皮弁は、ちょうど脇の下のたるみのある皮膚を一部採取して、肘の腫瘍切除部位に移植します。血管が栄養を運び、移植先に生着するのを期待する治療方法です。

肥満細胞腫や軟部組織肉腫の症例で多い治療方法になります。

縫合とその後の処置

皮弁がうまく適合できないと壊死することがあります。その場合には範囲に応じて、洗浄や、再切除を選択します。実際の外観はこのような感じです。

手術前の状態

手術前の猫ちゃんの写真です。頬が壊死していたので、腐った組織を摘出し、頭部の皮弁(浅側頭動脈皮弁)と、首からの前進皮弁の2つの皮弁を作成して、大きな傷を閉鎖しました。

手術直後の状態

手術直後の猫ちゃんの写真です。術直後は、ドレーンを数日設置して、膿の排出を促します。

術後2ヶ月目の様子

術後2ヶ月が経過した猫ちゃんの様子です。治療の成果をご確認いただけます。

追加治療について

膿が溜まった場合、抗生物質の治療だけでは不十分なことがあります。周囲の筋肉や皮膚が壊死してしまい、治癒能力を失ってしまうため、膿を取り除いて正常な皮膚を移植することで傷を閉鎖します。頭部の大きな腫瘍を摘出した場合も、同様に皮弁を利用して傷を閉鎖します。再度膿が溜まらないように、ドレーンを設置して、排膿(膿の排出)を促し、膿を培養感受性検査に提出して正しい抗生剤を選びます。術後は適切なケアと追加治療が必要です。抗生剤の投薬が難しい子はコンベニア(セフェム系抗生剤)2週間毎に注射して、抗菌管理を行うことができます。(耐性菌ではない場合)

チワワの腰の肥満細胞腫手術

チワワの腰に拳大の肥満細胞腫ができたため、水平マージンを3cm、垂直マージンは筋肉を含めて摘出しました。単純な閉鎖方法ではテンションがかかり、皮膚の引き攣れを起こし、術後に足の動きが制限される可能性がありました。
そこで、隣接する部位に、VY切開を加えて皮膚を移動させ、傷を閉鎖しました。
この方法により、皮膚の動きが滑らかになり、創傷治癒が促進されました。
イラスト:マイナーサージェリー書籍より転載

手術前の状態

手術前のチワワの腰部の状態を示す写真です。

手術中の状態

筋肉上の腫瘍を取り残さない様に筋膜をメスで切除します。


手術の様子

単純閉鎖法では傷が寄らないため、近接部位に切開を加えて、皮膚を移動させて閉鎖しました。

術後の様子

手術後の外観の写真です。