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【症例報告】猫の乳腺腫瘍(自壊あり、腎不全の合併)

腎不全を合併した15歳猫の乳腺腫瘍摘出手術について

はじめに

こんにちは。今回は、15歳の猫ちゃんに確認された乳腺腫瘍の摘出手術について、術前検査から術後管理までの流れをご紹介いたします。
この猫ちゃんは慢性腎不全を抱えており、手術や麻酔には通常よりも高いリスクが伴いました。少しでも同じようにお悩みの飼い主さまの参考になればと、謹んで症例をご報告させていただきます。

症例概要

  • 年齢・性別:15歳、メス
  • 体重:約3.1~3.4kg
  • 主訴:乳腺付近にしこりが認められ、触れると猫ちゃんが嫌がる様子
  • 既往症:慢性腎不全(血液検査でBUNやクレアチニンの上昇を認める)
  • 手術内容:右側乳腺の全摘出、左側乳腺の尾側部分を同時に摘出

術前検査

  • 血液検査:
    BUNやクレアチニン値が高く、腎機能の低下が認められました。
    白血球、赤血球の数値、総蛋白やアルブミンなどを評価し、全身状態を確認いたしました。
    (グロブリンの上昇と腎数値の高値が見られました。)

  • レントゲン検査:
    胸部レントゲンにより、転移の有無や心肺状態、腎臓の大きさの変化をチェックしました。


  • 細胞診:
    乳腺部のしこりから細胞を採取し、腫瘍の性状を推定した結果、摘出手術の必要性が認められました。

手術の流れ

  • 麻酔管理:
    腎臓への負担を軽減するため、麻酔薬の種類や投与量を慎重に選定。
    術中は点滴による循環管理を徹底し、血圧、心拍、呼吸のモニタリングを行いました。
  • 摘出方法:
    再発防止の観点から、右側は乳腺全体をまとめて切除し、左側は尾側部分の乳腺を同時に摘出。
    周囲組織も含め、広めに切除しました。

術後管理

  • 術後は鎮痛剤や抗生物質を用い、痛みの軽減と感染予防に努めました。
  • 点滴治療を継続し、食欲や排泄状態をこまめに観察しました。
  • 内科的治療や適切なフードの提供により、腎臓への負担を最小限に抑えるよう配慮しました。
  • 創部の管理として、包帯やエリザベスカラーを用い、定期的な診察のもとで処置を行いました。

術後の注意点と今後の展望

  • 慢性腎不全は長期管理が必要です。定期的な血液検査や食事療法を行い、飼い主様はご自宅で毎日皮下点滴をされていました。
  • 傷も飼い主様自身が消毒を行ってくださり、清潔な術創を維持して下さったことで30cmに及ぶ傷は1箇所も膿むことなく、2週間で抜糸を行うことができました。
  • 入院中の様子

術後1週間の傷の様子

飼い主様が毎日クリゲンとヒルドイドでケア

病理検査結果

  • 診断名:腺癌(Tubular adenocarcinoma)
  • 「腺癌」とは、乳腺などの腺組織から発生する悪性腫瘍(がん)のことです。
  • 「Tubular(管状)」という言葉から、腺の構造が管状に形成されるタイプのがんであるとわかります。
    • 乳腺由来のがん細胞が、不規則に増殖している。
    • がん細胞が組織の深い部分まで侵入(浸潤)している。
    • 一部では壊死や脱落細胞がみられる。
    • リンパ節や他の臓器(肺など)へ転移する可能性がある。


今回の病理検査結果では、「乳腺由来の悪性腫瘍(腺癌/乳腺腺管癌)」であることがわかりました。悪性度が高く、再発や転移のリスクがあるため、術後の経過観察と必要に応じた追加治療が重要となります。


術後2週間の追加手術

術後2週間の段階で残りの2つの乳腺を摘出しました。

術後の様子

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