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びっこ(跛行はこう)の診断

アプローチの基本方針(Problem Oriented Approach)

まずレントゲン検査に進む前に、何が問題なのかを明確にし、正しい質問や必要な情報を得て、正しく触診を行い、計画を立てることが重要です。


カルテには以下の4段階を記載しましょう:

  • (a) 何が問題なのか: 例:右前肢の跛行、触診時の疼痛
  • (b) 鑑別診断リスト: 発生する順に列挙、年齢とサイズを考慮
  • (c) 診断計画: 身体検査、画像診断(レントゲン、エコーなど)
  • (d) 治療計画

初期情報として、年齢・品種・体重、主訴・経過・治療反応を確認します。偏見を持たないよう注意しましょう。

歩行・立ち方の観察と診断の流れ

  • 前方・後方から動画撮影し、診察時に使用。
  • 前肢跛行 → が上下に動く(ヘッドボブ)。

  • 後肢跛行 → が上下に動き、痛む足が地面につく際に腰を持ち上げ負担を軽減。
  • 尾が患肢側に傾く場合あり。
  • O脚・X脚の有無、腰仙関節の伸展痛(馬尾症候群)、骨盤周囲の腫瘍などを考慮。
  • 旋回歩行時の跛行 → 円心側(外側)の肢に問題が多い。
  • 足を擦る場合 → 神経性障害を疑う。

立ち方の撮影のポイント

  • 自然に立っている時の前肢・後肢の間隔を撮影。
  • 均等でない場合、異常の可能性あり。
  • 痛くない足に重心を移動し、患肢の幅は狭くなる傾向。


  • 足先の方向が異なる場合も異常を示唆。


病変部を見つけるための触診法(ファーストステップ)

  • 曲がっている関節 → 伸展時に痛み
  • 伸びている関節 → 屈曲時に痛み

除外診断の流れ:

  • 関節疾患(脱臼、不安定性、伸展痛、関節液増量)→ エコー検査
  • 疾患(骨折、圧痛、腫脹:腫瘍、汎骨炎、骨髄炎)→ X線検査
  • 炎症性関節疾患(体温上昇、複数関節腫脹)→ 血液検査、関節液検査
  • 神経疾患(姿勢反応異常、背部・頸部痛、末梢神経腫大)→ X線検査、MRI検査

非負重性跛行(患肢を挙上、体重がかけられない)と負重性跛行(体重がある程度かかる)を区別。大型犬での完全挙上は腫瘍など重大な疾患を疑う。

小型犬・大型犬、若齢・成犬ごとの主な特徴

小型犬(若齢)の特徴

  • 家具の飛び降りや肥満による関節負担に注意。

小型犬、若齢(前肢)

  • 外傷性:橈尺骨の骨折、上腕骨骨幹の関節内骨折
  • 先天性:肩の脱臼、変形(形成不全)。トイプードルに多い。ブルドッグ、シーズー、ペキニーズは先天性の肘脱臼が多い。
  • 成長異常:前腕の変形、湾曲、捻転が非常に多い。

小型犬、若齢(後肢)

  • パテラ
  • レッグペルテス
  • 外傷例:股関節の脱臼
  • MDHの成長異常(脛骨の形成異常で肢が内側に曲がる。最近は減少傾向)
  • 両側性なら跛行を示さないが、片側なら跛行を示す。
    MDH成長異常例1MDH成長異常例2MDH成長異常例3

大型犬(若齢、前肢)の特徴

  • 肘関節形成不全(肘関節がうまくはまっていない。特にFCP(内側鉤状突起離断)が最も多い。)
  • 肩関節のOCD(離断性骨軟骨症)
  • 汎骨炎(シェパード、ワイマラナーなどドイツ系の犬に多く、成長中の大型犬に好発。前肢だけでなく長管骨に広がることが多い。)

成犬の特徴

成長・発育期に伴うものは考えにくく、慢性的な経過や変性性疾患などを疑います。

  • 橈尺骨の骨折も含めて、上腕骨遠位の骨折

小型犬(成犬~老犬)の特徴

  • パテラ
  • 前十字靭帯断裂(パテラとの併発が多い)
  • 脊髄疾患(MDH、シーズー)※必ず神経学的検査は行う。
  • 手根関節の免疫介在性疾患が目立つ(全ての関節に生じ得る)

大型犬(成犬、前肢)の特徴

  • 骨肉腫などの腫瘍性疾患
  • 肩の滑膜由来の腫瘍、腕神経叢の腫瘍
  • 肘の慢性・進行性の関節炎
  • 肩関節周囲の腱鞘炎、滑膜炎、腱炎(二頭筋、棘上筋)
  • 頸部の椎間板疾患、脊髄疾患

大型犬(成犬~老犬)の特徴

  • 骨肉腫
  • 慢性関節炎
  • 前十字靭帯断裂
  • 椎間板ヘルニアなどを考慮

子猫の場合

  • 通常、子猫は骨折が少ない傾向ですが、成長板骨折が多いです。
  • ワクチン接種後の関節炎(カリシウイルス)が、接種後1週間ほどで起きやすいです。