診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-19:00
手術時間12:00-15:00
水曜・土日午後休診
今日お話ししたいこと
本日は、若齢の小型犬(ミックス犬)の患者さんにおける「左膝蓋骨脱臼(通称:パテラ)」の外科手術の経緯と目的について報告します。初診日において、この患者さんには明確な足の引きずり(跛行)は認められませんでした。しかし、触診により左膝のパテラが外れる状態であることが確認されたため、将来的な関節炎の進行を防ぎ、ドッグラン等での正常な活動能力を生涯にわたって維持することを目的に、外科的介入を行いました。
各種検査の結果、左膝蓋骨が本来収まるべき大腿骨の溝(滑車溝)から脱臼しやすい状態でした。「現時点では普通に歩けている」という事実があっても、骨格が定着していく過程の若齢期において、脱臼状態を放置することは関節の不可逆的な変形を招きます。関節機能がまだ温存されている今の段階が、外科的適応の最適なタイミングであると判断しました。
無症状である今の段階で「様子を見る(手術を見送る)」という選択をした場合、患者さんが将来直面するリスクは極めて深刻です。
若齢であっても、術前の検査では完全に拾い上げきれない潜在的な基礎疾患(隠れた心疾患や臓器の機能低下など)が存在する可能性は否定できず、全身麻酔に「絶対安全」は存在しません。これらは、麻酔中の急激な血圧低下や呼吸抑制、最悪の場合は心停止といった具体的な致死リスクをもたらします。
当院では、このリスクを制御するため、術中の厳密な血圧管理を実施しています。さらに、骨を削る整形外科特有の激痛をコントロールするために局所浸潤麻酔を徹底して併用し、全身麻酔薬の使用量を必要最小限に抑えることで、麻酔の安全域を最大限に広げています。
本症例においては、「大腿骨滑車溝形成術」を選択しました。
当院では、術後の入院期間を原則1〜3日とし、静脈点滴による抗生剤投与や疼痛管理が必要な期間のみに限定しています。これは、動物にとって病院のケージ内は多大な精神的ストレスとなり、早期に家庭内での適切なリハビリ(筋肉の廃用性萎縮の防止)へ移行することが治癒において重要であるという論理的判断に基づくものです。
また、入院期間中の夜間管理については、以下の事実をご理解いただく必要があります。
外科手術とは、患者の体に不可逆的なメスを入れ、将来の利益と目の前のリスクを天秤にかける冷徹な判断の連続です。特に「今は歩けている」という段階での予防的介入は、飼い主様にとっても重い決断だったはずです。しかし、問題を先送りすることは、動物たちに将来の確実な苦痛を約束する行為に他なりません。
私たちは耳障りの良い美談や感情論に流されることなく、常に論理的な根拠に基づき、最善の術式と徹底した疼痛管理を提供します。同時に、自院の物理的な限界や合併症のリスクも正直に開示します。すべては、目の前の動物が将来にわたって自身の足で歩き続けるためです。退院後も、ご家庭での適切な管理とリハビリテーションを引き続きお願いいたします。
This report details the surgical intervention for a young mixed-breed dog diagnosed with left patellar luxation. Although asymptomatic at presentation, surgery (femoral trochleoplasty) was elected to prevent irreversible joint damage, severe osteoarthritis, and potential cranial cruciate ligament rupture. We utilized local infiltration anesthesia alongside strict blood pressure management to minimize general anesthesia risks. The post-operative protocol prioritizes early discharge (1-3 days) to reduce patient stress, coupled with remote overnight monitoring and emergency analgesic intervention by the clinic director. We maintain transparent communication regarding the physical limitations of overnight care and potential surgical complications, prioritizing the animal’s lifelong mobility and well-being.
本报告详细记录了一只确诊为左侧髌骨脱位的年轻混血犬的外科手术过程。尽管初诊时无明显症状,但为了防止不可逆的关节损伤、严重的骨关节炎以及潜在的十字韧带断裂,我们决定进行滑车沟加深手术。术中结合局部浸润麻醉与严格的血压管理,以最大限度地降低全身麻醉风险。术后遵循1至3天内尽早出院的原则,以减少患犬的心理压力。同时,夜间采用远程监控,院长随时待命以处理突发疼痛。我们如实告知夜间无人值守的客观限制及潜在的手术并发症,始终将动物的终生行动能力与福祉放在首位。