診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
細胞診と組織生検: リンパ節や腫瘍組織の
細胞診(FNA)は、造血器腫瘍が疑われる場合にまず行われる
簡便かつ有用な検査です。細い針を用いてリンパ節や腫瘍から細胞を採取し、顕微鏡下で
異常リンパ球(大型のリンパ芽球など)の形態を観察します。
細胞診で約80~90%の症例で診断可能とされていますが、高分化型リンパ腫や特殊型では
確定が難しい場合もあります。腫瘤性病変がある場合などは
外科的切除で組織生検を行い、リンパ節構造の消失や腫瘍細胞の浸潤パターンなどを評価します。
このように組織生検によってWHO分類に基づく詳細な亜型診断が可能となり、
最適な治療選択や
より正確な予後判定に繋がります。
免疫表現型の検査 (Immunophenotyping): 採取したリンパ腫細胞が
B細胞性か
T細胞性かは
診断と予後予測の両面で非常に重要です。
CD3(T細胞マーカー)や
CD20/CD79α(B細胞マーカー)などを調べ、フローサイトメトリーや免疫染色で判定します。
リンパ腫の約60%はB細胞性高悪性度で、T細胞性高悪性度は約20%。
B細胞性の方が化学療法に対する奏効率が高く予後良好とされ、
T細胞性は高カルシウム血症を伴いやすく予後不良といわれています。
例えば犬の高悪性度リンパ腫では、B細胞性に比べT細胞性の方が
有意に生存期間が短いことが報告されています。
画像診断 (Imaging): がんの
病期(staging)把握には、X線・超音波・CT・MRIなどの画像検査も行います。
胸部X線では
縦隔リンパ節の腫大や胸水の有無を確認し、
腹部超音波では
肝臓・脾臓への浸潤、
腹腔内リンパ節の腫大、消化管壁肥厚(消化器型リンパ腫を示唆)を評価します。
鼻腔内リンパ腫や脳への浸潤が疑われる場合はCT/MRIが診断に有用で、
骨の溶骨性病変があれば多発性骨髄腫も疑うなど、画像所見は腫瘍の種類判別にも役立ちます。
こうしてリンパ腫の
病期(ステージI~V)を決定し、
治療計画を立案します。病期判定は
予後にも直結する重要な要素です。
PARR検査による確定診断:
PARR(PCR for Antigen Receptor Rearrangement)検査は、
リンパ球の抗原受容体遺伝子の再構成をPCRで解析し、
クローン性(腫瘍性)か多クローン性(反応性)かを判定する方法です。
リンパ球は個々で異なる配列を持ちますが、腫瘍性リンパ球は同一クローン配列となるため、
遺伝子レベルでリンパ腫をサポート診断できます。
とくに低悪性度リンパ腫や炎症との鑑別が難しい場合、
猫のIBDとの比較などでPARRが役立ちます。結果の解釈は
細胞診・組織診と合わせて行います。
低悪性度 vs 高悪性度での予後:
一般に低悪性度リンパ腫は進行が遅く比較的長い生存が期待できますが、
治癒は困難とされます。
高悪性度リンパ腫は放置すれば数週間~数ヶ月で致死的となりますが、
化学療法で寛解を得れば生存期間を大きく延長できます。
例として犬の
低悪性度T細胞リンパ腫(Tゾーン)は
無治療でも平均1.7年の生存報告がありますが、
高悪性度の末梢性T細胞リンパ腫は治療しても
5~6ヶ月に留まるなど、腫瘍の種類で予後は大きく異なります。
WHOステージ分類と予後因子:
犬の多中心型リンパ腫では、
Stage I~Vの病変範囲と
サブステージA/B(症状の有無)を組み合わせた臨床病期が予後を左右。
高カルシウム血症や重度の貧血、治療開始後に寛解(特にCR)を得られるかどうかも
生存期間を大きく左右する因子です。