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診察時間
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手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診

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NEWS&BLOG
麻酔前の注意事項と当日の流れ

外科手術を受けられる患者様へ

手術は完全予約制です。

絶食・絶水のお願い

  • 日付が変わったらごはんは与えないでください(絶食)。
  • 当日朝、起きたら水も下げてください(絶水)。

来院時間

手術当日は9時〜11時までにご来院ください。

麻酔前の安全評価

  • 麻酔は全身に作用し、肝臓・腎臓で代謝・排泄されます。
  • 麻酔中は心臓・呼吸器系を抑制するため、血液検査・胸部レントゲンで安全性を評価します。
  • 心臓病リスクの場合、心エコー検査を追加することがあります。
  • 手術日1週間以内に検査済みの場合は再検査はありません。

感染予防のため、ノミ・ダニ予防や混合ワクチン接種を推奨しています。
当日検査がある場合、検査後にお電話で結果報告いたします。

麻酔後の覚醒

  • 手術終了後、ガス麻酔を止めて自然な覚醒を待ちます。
  • 約15分で反射が戻り、自力呼吸が安定します。
  • 回復室で点滴下に安静、しっかり立てるようになれば終了です。(1時間〜数時間程度の差あり)
  • 覚醒後、一度飼い主様へお電話します。

手術台の準備

犬への静脈麻酔

アトロピン(ATR)、ブプレノルフィン(BPRE)、プロポフォール(PROP)を使用します。
BPREは手術1時間前に投与することも、PROPは約60秒かけて静注します。

猫の筋肉注射麻酔

  • 筋肉注射で麻酔を行います。痛みで飛び跳ねる可能性があるため、ネットでしっかり保定します。
  • 効果不十分な場合、マスクでイソフルラン(設定5、酸素3L/min)を吸入補助します。

気管挿管

チューブサイズ目安

  • 猫:3.5〜4.5
  • 小型犬:4.5〜5.5
  • ダックス:6.0〜7.5
  • 大型犬:7.5〜9.0

手順

  • PROP投与後、動物がウトウトしたらカラーを外し横向きに寝かせます。
  • 呼吸停止や顎力低下を確認、頭を前方へ伸ばし気管をまっすぐに。
  • 術者が開口させたら気管チューブ挿入。

麻酔中モニタリング

接続・準備

バイトブロック:チューブ上に挿入し噛み防止

気管チューブ固定:後頭部で蝶々結び

カフ調整:耳たぶ程度の硬さまで膨らませる

呼吸回路接続:ジャ管接続後、バルブを「クローズ」「自動」に

酸素流量:猫1L/min、犬は5kg未満1L/min、5kg以上2L/min

イソフルラン管理

  • 犬:心拍安定(80〜100)ならイソフル2%前後
  • 猫:ケタミン併用で1%前後(心拍100〜120)
  • 低血圧・徐脈時:イソフル濃度を下げる
  • 痛みが少ない処置は浅めで可
  • 痛む処置部位(開腹、神経、抜歯等)は事前に濃度UP
  • 痛がったら犬は最大5%まで一時的に上げ、落ち着いたら0.5〜1%ずつゆっくり下げる

自動呼吸器(ベンチレーター)設定

  • 送気量:体重(kg)×10ml目安(3.4kg→約40ml)
  • 状態により2倍まで増やせる
  • INSP.TIME(吸気時間)で適正換気量調整
  • 肺圧20以上は肺損傷リスク

心電図装着

右前肢:赤 / 左前肢:黄 / 右後肢:黒 / 左後肢:緑
アルコールで湿らせ波形確認

SpO2センサー

舌に装着が基本。難しい場合は指間や耳へ。被毛部位は水で湿らせる。

体位調整

  • 気管チューブがねじれないよう注意
  • 首が曲がらないよう支える
  • 体軸は左右対称、コード類を動物の上に跨がせない

体温管理

  • 基本は直腸温計
  • 肛門周囲オペ時は食道温計使用

血圧管理

  • 留置カテーテルのある肢には血圧カフはつけない
  • カフサイズや締め具合を調整し、モニター測定

MAP(平均血圧)は65mmHg以上を目標。
60mmHg未満は低血圧で、脳・心臓・腎臓が低酸素に陥るリスク、
術後感染、心筋障害、急性腎不全、肺炎・敗血症リスクが上がります。

低血圧時の対処

  • 点滴流量:通常5倍、最大7倍まで増量(ただし心負担に注意)
  • 痛みがなければイソフルラン濃度を下げて血圧上昇を図る
  • 痛くて麻酔濃度が下げられず、流量増加も限界ならドパミン追加
  • ドパミン添加量:
    ・250mlバッグにドパミン0.45ml添加
    ・500mlバッグにドパミン0.9ml添加
    流速5ml/kg/hrで投与
  • オペ終了後はドパミンなしバッグに戻す

点滴管理

  • 点滴が届かない場合は延長チューブ使用
  • 流量は通常5倍、最大7倍まで(心負担に注意)
  • 心臓病の場合、ドパミン入りパックを別途用意(上記添加量参照)

毛刈り・消毒

モニターが安定したら、手術部位を毛刈り・消毒します。

ドレープ・電気メス準備

  • ドレープをタオル鉗子で固定
  • 電気メス(モノポーラ、バイポーラ)を器具敷上にセット
  • 獣医師がペダルでモード切替、介助者は触らない

麻酔で最も大切なこと

気道を確保し、全身へ酸素を供給することが最重要です。

  • チューブ抜けそうなら空気漏れ音がする→カフ・紐確認
  • 肩甲骨より後方にチューブを入れない(片肺挿管防止)

機械任せではなく、五感で異常察知。ジャ管の破損音(シューシュー音)などあれば即交換します。

EtCO2(呼気終末CO2)管理

  • EtCO2は55mmHgまで許容
  • 波形なし→気管挿管不良や機器トラブルの可能性

EtCO2が45以上(低換気)

  • 10秒に1回バギングでCO2排出促進
  • 呼吸回数(BR)増やす、酸素0.5〜1L増
  • 肺圧(Tidal Volume)12前後まで上げる(最大20ml/kg)

EtCO2が低すぎる(過換気)

  • 酸素を下げる
  • 換気回数減らす

心電図・心拍管理

P波(心房)→R波(心室)の順で正常

HR<60/minならアトロピン0.01mg/kg IV

徐脈性不整脈→イソフルランを下げる

頻脈性不整脈→リドカイン0.1ml/kg IV

R波なしの房室ブロック→イソフルランカット(稀)

脈拍・心拍不一致時は不整脈考慮、イソフル調整

低体温・血管拡張時の対策

イソフルラン濃度上昇、低体温、CO2上昇で血管が拡張し血圧低下が生じます。
低血圧が続くと術後腎不全リスクが高まります。

  • 痛くないときはイソフル下げ、血圧維持
  • 過剰CO2時はバギングや呼吸回数増でCO2低減
  • 体温低下時:湯たんぽ(250mlを約1分加熱)をタオルで巻いて四肢・腹部・輸液ライン保温
  • 開腹時、人肌温度の生理食塩水(500mlを約1分半加熱)を使用し、保温パッドと併用
  • 術野ガーゼや消化管が冷えないよう温生食を無菌的に定期的にかける

酸素ボンベ残量アラーム対応

  • 「GAS SUPPLY」アラームは酸素残量低下
  • 使用中ボンベ閉→予備ボンベ開→札かけ替え→術後に注文

まとめ

  • 手術前:絶食・絶水、来院時間厳守
  • 麻酔前:血液・レントゲン検査、必要に応じて心エコー
  • 感染予防:ワクチン、ノミダニ予防推奨
  • 麻酔中:気道確保、麻酔深度・血圧・心電図・SpO2・体温・EtCO2総合管理
  • 低血圧時:点滴増量、イソフル調整、ドパミン追加
  • 不整脈時:アトロピン、リドカイン対応
  • 体温低下時:湯たんぽ・温生食で保温
  • 覚醒後:飼い主様にご連絡