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“犬と猫の尿路感染症:無症候性細菌尿から再発性膀胱炎まで”

無症候性細菌尿について

無症候性細菌尿とは、症状を伴わない状態での細菌尿を指します。健康な犬では2-12%、病気の犬では15-74%、健康な高齢猫では1-13%の発生率があります。特に、糖尿病、肥満、パルボウイルス感染症、急性の脊髄障害(IVDD)、麻痺、シクロスポリンやステロイド投与などがある犬で見られます。

細菌尿の定義
・試験紙で陽性ではない
・顕微鏡で見つかることではない
・培養で生えてくることが診断の基準
細菌尿の感度と特異度
・未染色:感度76%、特異度77%
・グラム染色後:感度96%、特異度100%
培養基準
・膀胱穿刺:10³ CFU/ml以上
・カテーテル導尿(雄犬):10⁴ CFU/ml以上
・自然排尿:猫で10⁴ CFU/ml、犬で10⁵ CFU/ml以上
管理
取った尿は即座に分注し、冷蔵保存して24時間以内に検査機関に送付します。
(24時間以上かかる場合はキャリアーを使用)
尿検体採取、輸送用キット(日本ベクトンベッキンソン)
治療判断
多剤耐性菌の出現や、下部尿路徴候のない尿は治療の対象となりません。
治療が推奨されるケースとしては、上行性感染や全身性感染リスクが高い場合、膀胱が尿路外の感染症の病巣になる可能性がある場合、膀胱炎徴候を示せない患者で臨床症状がある場合(脊髄損傷など)、ウレアーゼ産生菌やプラーク形成をする菌の感染があります。

無症候性細菌尿は基本的に治療は推奨されませんが、膀胱炎が症状の原因であるかが明らかでない場合、散発性として治療し、 3-5日間の抗菌薬の投与が考慮されます。

白血球の評価基準
⭕️顕微鏡学的に白血球を認めた場合は膀胱炎と診断します。
(❌顕微鏡学的に移行上皮を認めることは膀胱炎と関連しません。)
高倍率で1視野あたり3-5個(膀胱穿刺)
高倍率で1視野あたり5-10個(カテーテル導尿)

無症候性細菌尿は基本的に治療は推奨されませんが、膀胱炎が症状の原因であるかが明らかでない場合、3-5日間の抗菌薬の投与が考慮されます。

散発性細菌性膀胱炎とその治療について

散発性細菌性膀胱炎は一過性の膀胱炎で、犬と猫で治療アプローチが異なります。

犬の治療🐶

初期段階で尿培養を取ります。培養結果を待つ間に、抗菌薬の初期投与が推奨されます。
しかし、3-4日後に症状が持続または悪化した場合は、さらに抗菌薬を追加します。
最初はNSAIDsを処方し、必要に応じて抗菌薬を追加します。(腎盂腎炎のフォローアップ)
また、痛みを和らげるために鎮痛薬を使用します。

猫の治療🐱
初期の抗菌薬投与は控え、尿培養結果に基づいて治療を進めます。
飲水量を増やすことで膀胱炎の再発を予防します。

尿培養をする理由としては抗菌薬耐性があります。
ドキシサイクリン、エンロフロキサシン、アモキシシリンクラブラン酸に耐性を持つ菌が多いです。
🌷30日前までに投与されていた抗菌薬に耐性を有する事が多いです。

ガイドラインによる治療
・抗菌薬の投与期間
3-5日間の抗菌薬投与が推奨されます。
・推奨される薬剤
AMPC(11-15 mg/kg TID)
ST合剤(15 mg/kg BID)
AMPC/CVA(12.5-25 mg/kg TID)※AMPC/CVAの処方はややオーバーかも
治療後の評価
・薬剤感受性
臨床症状の改善が見られた場合の治療の変更、改善が見られない場合でも追加の治療は不要です。
症状が悪化する場合は治療の変更が必要です。
臨床反応のチェック
48時間以内に臨床反応を確認します。来院する必要はありません。
改善が見られない場合は再度評価を行い、複雑化する要因を特定する追加検査を考慮します。
試験的に抗菌薬を変更することは推奨されません。

再発性細菌性膀胱炎とその治療について

再発性細菌性膀胱炎は1年に3回以上発生する膀胱炎です。
まず、可能であれば尿培養結果を待つことが推奨されています。
重症の症状がある場合は未使用の抗菌薬を投与することが適切です。

主な原因
・尿石症
・前立腺炎
・糖尿病
・クッシング症候群
・神経異常
・解剖学的異常(異所性尿管、膣前庭遺残)
治療方針
可能であれば、尿培養結果を待ってから治療を開始します。経験的な治療から始めてもOK
状態が悪い場合、未使用の抗菌薬を投与します。
マクロライド系は膀胱内で不活性化されるため使用しません。
重症でなければ、NSAIDsから開始することも可能です。
基礎疾患(例:糖尿病)があっても長期投与は適さないため、単なる再感染の場合は3-5日間の投薬で十分です。
腎不全などで抗菌薬の反応が阻害される場合(腎不全で尿が濃縮されないなど)は、1-2週間の投与が考慮されます。
治療の評価
臨床反応のチェックは48時間以内に行い、改善が見られない場合は再検査や抗菌薬の変更を検討します。

追加投薬の必要性
治療の効果判定は3-5日間の院内鏡検で行い、症状が改善していれば、細菌が出ていても追加の投薬は不要です。
改善が見られない場合には、膀胱炎が実際に存在するかを再判断し、複雑化する要因を特定するための追加検査を考慮します。

猫の特発性膀胱炎(Feline Idiopathic Cystitis: FIC)

FICは猫においてよく見られる膀胱炎の一種で、主にストレスが原因とされています。
症状
・膀胱壁の痛み
・出血
・過敏反応
・交感神経の興奮
・視床下部、下垂体、副腎の機能低下によるストレス対処の困難
治療法
第1選択
1.ストレス管理:ストレスを軽減する環境作りが重要です。
2.水分補給:ウェットフードや皮下点滴による水分補給を行います。
3.疼痛管理
・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
・メタカム(猫用の非ステロイド性抗炎症薬)
・オピオイド(強力な鎮痛薬)
 →ブプレノルフィン:口腔粘膜投与が可能ですが2-3日で食欲不振を引き起こすことがあります。
 →ブトルファール:鎮静作用があり、天井効果も見られます。
・セレニア:鎮痛効果があります。

第2選択
1.抗うつ剤
・アミトリプチン
・クロミプラミン
・NSAIDsやオピオイドとの相乗効果が期待できます。
2.尿道痙攣薬
・プラゾシン
・ダントロレンナトリウム:尿道筋を弛緩させます。
・フェノキシベンザミン:排尿筋の過緊張を軽減します。
サプリメント
・Lトリプトファン:セロトニンに合成され、気分の改善につながります。
・ミルク由来デカペプチド(ジルケーン):鎮静作用があります。
特定のフード
・C/dマルチケア
・NATURAL WU
・ユリナリーS/O CLT

サルファ剤とそのアレルギー反応について

サルファ剤(ST合剤)は広範囲に作用する抗菌薬で、尿路感染症の治療に用いられますが、一部の犬(特にドーベルマンやブラックタン系)ではアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

これらの反応は通常、抗菌薬の投与開始から平均12日後に発症し、発熱、血小板減少症、急性肝障害などの症状が見られます。そのため、サルファ剤の使用は慎重に行われ、アレルギー反応の症状が見られた場合は速やかに治療が開始されます。

特徴
・剤型:粒、粉、注射液(トリブリッセン)
・分布:全身に良く分布しますが、肺への分泌はやや悪いです。
    犬において半減期は人とほぼ同じです。
・排出:主に尿路を通じて未変化のまま排出され、肝臓で代謝されます。
・トリメトプリム:組織内で高濃度を維持します。
         酸性環境でも変化せず、脂溶性が高いため、膿瘍や前立腺炎などで有効です。
・アレルギー:
犬(特にブラックタン系)でアレルギーを引き起こすことがあります。
ドーベルマンでは無菌性多発性関節炎を引き起こしやすく、平均12日で発症します。
主な症状:発熱(50%)、血小板減少症(50%)、急性肝障害(30%)
サルファ剤アレルギーの治療方法
・基本的な治療:支持療法が中心です。
・具体的な治療:
 →静脈輸液
 →ビタミンC:90 mg/kg/day IV
 →N-アセチルシステイン:140 mg/kg IV、その後70 mg/kgを6時間毎に7回IV
 →肝庇護剤:
  ウルソデオキシコール酸
  グリチルリチン
  SAMe(S-アデノシルメチオニン)
・食餌管理:胆汁の流出障害を防ぐため、低脂肪食を推奨します。
・血小板減少症や溶血性貧血が出現している場合:プレドニゾロンの投与が必要です。

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