診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
※手術の写真があります。
口腔内メラノーマ(悪性黒色腫、メラノーマ)は口腔内にできる悪性腫瘍で、口腔内腫瘍は進行度が早く、高い転移率を持ちます。転移先としては肺や脳などの全身の臓器があり、肺では呼吸困難、脳では発作などの神経症状が見られます。腫瘍が見つかった段階で、リンパ節などの組織に転移していることが多いとされています。早期診断が必要ですが、口腔内の奥に発症すると発見が遅れがちです。
犬ではメラノーマが最も多く、転移速度が速く発見時には多くの子が転移していることがあります。腫瘍が大きくなるのも早く、顎骨に浸潤し、疼痛や食事困難、出血や感染を繰り返すことがあります。猫では扁平上皮癌が多く、顎骨に癌細胞が浸潤します。
流涎、口臭、腫れ、痛みがあり、腫瘍が大きくなると眼球や鼻腔、頭蓋骨など周囲組織に影響を及ぼし、呼吸障害や嚥下障害を引き起こすことがあります。また、腫瘍浸潤による骨破壊から顎骨の病的骨折が起こることもあります。
腫瘍を切除する際には、近くのリンパ節も切除し、腫瘍の転移を評価します。腫瘍のみを小さく取る手術では癌細胞が残るため、多くの場合再発し、再手術が繰り返されることが多く、再発した腫瘍がより攻撃的なため、初回手術で腫瘍と正常組織を含めて広範囲に切除することが重要です。舌根部まで浸潤している場合、嚥下機能障害が出るため手術が困難で、顎骨を含めた切除が必要です。また、術前には肺のレントゲンを撮り、肺転移の有無も確認します。口腔内腫瘍のサイズによって外科手術後の生存期間は大きく変わり、2cm未満で切除できれば1年以上の生存が期待されますが、そのサイズで発見するのは難しいことが多いです。下顎にできた腫瘍は外観の変化が少ないため、発見が遅れることが多いです。犬の場合は、翌日から食事の給餌を開始することが多いですが、猫は術後の疼痛から食べられないことが多いため、食道チューブの設置も併用することがあります。
外科手術後の再発率は0〜40%であり、生存期間の中央値は半年〜1年で、1年生存率は35%以下です。実験レベルの免疫療法はありますが、有効な内科療法はありません。手術の目的は緩和治療であり、生活を楽に送るためのもので、寿命を大きく伸ばすものではありません。初期であれば完全切除が可能なこともありますが、痛みからの解放や食事の確保、出血や悪臭などの不快感からの解放、呼吸困難の防止が主な目的となります。
1.口峡部の切開
バブコック鉗子を使って口峡粘膜をつかみ、助手が下方に押し下げて視野を広げ、視野確保のためにゲルピー、リトラクターも使用します。
2.腫瘍の処理
メラノーマなどの腫瘍はガーゼで優しく持ち、飛び散らないように倒すように操作しながら切除を進めます。
3.初期切開
最初にメスで皮膚を切開し、出血が多い場合はすぐに電気メスに切り替えて止血します。
腫瘍の周囲には1cmのマージン(安全域)を確保しながら切開を進め、口唇部や硬口蓋まで切り込みます。
4.血管の処理
大きな血管はリガクリップで止血します。
眼窩下孔から鼻に向かう血管も、骨に沿ってメッツェンで剥離し、電気メスで止血します。
5.骨の切除
ラウンドバーを使用して、切除ラインに沿って皮質骨を削ります。
骨を削りながら進め、鼻腔に到達するまで切開します。
眼窩下孔近くの骨が特に厚いので、この部分をしっかり貫通させます。
骨鋏を使用して硬口蓋をカット。硬口蓋は薄いため、鋏でのカットが可能です。
6.出血管理
骨を切る際に深部から出血する場合、ガーゼをモスキート鉗子で押し込み、クリッツで止血します。
切除後、硬口蓋を横断する血管や大口蓋動脈の出血をモスキートで止め、その下をリガクリップで止血します。
7.腫瘍の摘出
バブコック鉗子で腫瘍をつかみ、牽引しながら残った組織を鋏で切り離します。
鼻腔内の腫瘍を引っ張りながら剥離し、同時に膿も排出します。
1.口腔粘膜の縫合
口唇粘膜を剥離して引き寄せ、硬口蓋と縫合します。
切歯周辺は離開しやすいため、細かく丁寧に縫合します。
2.ドリルによる補強
縫合がうまくいかない場合や離開しそうな時は、硬口蓋に2箇所ドリルで穴を開け、口腔粘膜をしっかりと固定して縫合します。