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肺炎

犬猫の肺炎治療について

肺炎は深部の感染症であるため、通常より多めの抗生物質を投与します。

使用する抗生物質

犬の場合:

  • アモキシシリン
  • エンロフロキサシン

猫の場合:

  • アモキシシリン
  • ビクタス

アモキシシリンの強化版であるオーグメンチンがあります。犬では投与の切り替えが可能ですが、猫では投与実績が少なく文献データも不足しているため、安全性の観点から慎重に対応しています。この点については飼い主様に説明し、相談の上で決定します。

誤嚥性肺炎と薬の使用

右中葉や右前葉の肺炎は、誤嚥性肺炎の場合があります。特に短頭種では気管と食道の解剖学的な問題により、唾液の誤嚥が起こりやすいです。そのため、以下の薬を処方しています。

  • プロナミド(消化管運動促進薬)
  • マロピタント(嘔吐防止薬)

レントゲンでは

犬は肺胞パターン(気管支周囲に白い陰影が映る)、猫は間質パターンが多いです。

🐱⚠️高齢の猫では肺炎のようにレントゲンで見えたとしても(明確な腫瘤でなくても)肺腫瘍の可能性があります。

 

スクロールして続きの画像が見れます。

診察とフォローアップ

初診日から3〜4日後に以下の検査を行います。

  • レントゲン撮影:肺の状態を確認
  • 犬のCRP検査、猫のグロブリン検査:炎症の評価(CRPは大きく上昇)
  • 基本的な臓器のチェック

症状が落ち着いている場合は、飼い主様のご都合に合わせて1週間後に再度チェックを行います。

ただし、高齢の猫では肺炎に見える症状が、実は肺腫瘍である場合もまれにありますので、慎重な評価が必要です。

症状が悪化している場合

症状が悪化している場合、以下の高度な検査を二次施設で受けることが望ましいです。

    • 気管支洗浄液の回収(BAL):麻酔下で気管チューブに生理食塩水を注入し、吸引して回収します。麻酔のリスクが大きいため、当院では実施せず、麻酔科医がいる施設での受診をお勧めします。
    • CT検査:断層撮影により肺の影を詳しく評価し、がんか炎症かを判断します。

これらの検査はすべて麻酔が必要で、50万〜100万円近い費用がかかることもあります。経済的なご負担や麻酔リスクについてもご相談いただき、治療方針を決定します。

二次施設での高度診断を受けずに、抗生物質の治療のみを続ける場合、診断が外れるとリスクが高まります。

肺腫瘍について

肺腫瘍の場合、転移性肺腫瘍が多く、診断後も治療につながらないことがしばしばあります。トセラニブ(分子標的薬)が使用されることもありますが、効果は限定的で、積極的な治療とは言えません。

サプリメントについて

「きのこ系サプリメント」などの代替療法を検討される飼い主様もいらっしゃいますが、現時点では科学的な根拠が十分ではありません。ペットが苦しいときは、そばにいて安心させてあげることが大切です。

薬のリスクと注意点

  • アモキシシリン製剤:胃腸障害や、まれにアナフィラキシーショックのリスクがあります。
  • エンロフロキサシン、ビクタス:耐性菌のリスクがあり、フルオロキノロン系全体に耐性ができる可能性があります。フルオロキノロン系抗生物質は、抗生剤自体の遺伝子が似ているため、一つの耐性を獲得すると他の仲間の抗生物質も効かなくなってしまいます。

胃腸薬の使用

  • ガスター(ファモチジン):他の薬と併用すると薬効を弱めることがあるため注意が必要です。(10kgあたり1錠を投与)
  • プロナミド:通常は10kgあたり1錠ですが、猫では2倍の量が必要な場合もあります。
  • マロピタント:説明書では連続投与は5日までとされていますが、1日休薬して再開することも可能です。

苦しい症状の緩和

ベトルファール:処方可能ですが、鎮静作用があるため少量から開始します。効果の持続時間は約4時間で、1日最大4回まで投与可能です。

酸素室のレンタル

酸素室はレンタルをお勧めしています。月ごとの上限額が設定されており、入院するよりも経済的です。特にテルコム社の酸素室は迅速な設置が可能で、実際の使用経験からも信頼しています。

ネブライザーの使用

小児用のネブライザーがインターネットで購入できます。抗生物質のアンプル(アンピシリンやビクタスの注射液)や血管収縮剤のボスミンを生理食塩水と混ぜて使用します。量は少しずつ調整しながら使用します。決まった量はありません。注射針やシリンジも一緒にお渡しし、1日2回程度の使用を推奨しています。

治療期間の目標

可能であれば2週間程度で治療を完了させたいと考えています。

レントゲンの評価ポイント

心臓の輪郭がきれいに出ているかも重要な評価ポイントです。

肺炎の原因

肺炎はウイルス性(例: 犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス1型と2型)、細菌性(例: パスツレラ菌、大腸菌)、真菌性(例: アスペルギルス、アクチノミセス)、寄生虫性(例: トキソプラズマ、肺吸虫)など様々な病原体によって引き起こされます。