診察時間
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手術時間12:00-15:00
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リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が異常に増殖し、リンパ節に腫瘍を形成する病気です。犬のリンパ腫は主に「多中心型リンパ腫」で、複数のリンパ節が関係しています。
リンパ節、特に下顎リンパ節と膝窩リンパ節が最初に腫れる傾向があります。家庭での触診により、早期発見が可能です。
リンパ節の腫れが進行すると、肝臓や脾臓、骨髄への転移が見られます。発熱や食欲不振などの一般的な症状が出ることがあります。
リンパ腫の治療には抗がん剤が用いられます。進行している場合や症状が出ている場合(サブステージb)、T細胞型リンパ腫では抗がん剤の効果が限られることがあります。
早期診断は、腫れたリンパ節の細胞診または病理診断により行われます。リンパ腫はステージに分類され、ステージが上がるほど病状が悪化します。
リンパ腫の診断は全身を視察し、触診によって行われます。血液検査、レントゲン検査、超音波検査などにより全身の状態を把握します。
病理組織診断、免疫染色、遺伝子診断(クローナリティ)を組み合わせてT、B分類と高分化型、低分化型のグレードにより診断されます。
センチネルリンパ節は、病巣から最初にリンパ液が流れ込むリンパ節で、特定の領域リンパ節と必ずしも一致しないことがあります。リンパ節は、炎症や外傷後にリンパ管が新生しやすいため、その位置は変化し得ます。特に再発症例では、瘢痕組織によってセンチネルリンパ節の同定が困難になることがあります。
リンパ節転移のリスクが高い腫瘍には、肥満細胞腫、肛門囊腺癌、乳がん、悪性黒色腫、扁桃の扁平上皮癌、組織球肉腫、前立腺癌、膀胱癌、猫の乳腺癌などがあります。
リンパ節の探索: リンパ節は必ず血管に沿って存在し、これが重要なランドマークとなります。鼠径リンパ節は浅後腹壁静脈に沿っています。
通常2-3個で下顎角の腹側、下顎腺の吻側に位置し、顔面静脈に沿います。大きいリンパ節は容易に認識できますが、小さいリンパ節は血管沿いに探す必要があり、不安がある場合は顔面静脈を露出して探索します。血管を巻き込んでいる場合には、慎重に剥離して血管を保護します。下顎リンパ節を摘出した時は、術後に顔の浮腫が起きることがあります。口腔内メラノーマのリンパ節生検は他の治療よりも先に行うことが推奨されます。
内側咽頭後リンパ節は頭部の深在領域に位置し、舌口腔壁、鼻道、咽頭、唾液腺、外耳深部、甲状腺から流れるリンパが集まります。このリンパ節は通常は1個で、下顎腺の内側に位置しています。
内部では内頚静脈と総頸動脈終部が接近しており、周囲には舌下神経、迷走神経、交感神経が存在します。リンパ節が見つかりにくい場合は、下顎腺を外すくらいの覚悟で下顎腺内側面を露出することが求められます。
浅頸リンパ節は通常2個存在し、肩甲骨の頭側、肩甲横突筋の下で浅頸動静脈に沿って位置します。副神経も同じ経路に沿って存在します。このリンパ節からは、後頭部の皮膚、咽頭部、耳介の一部、頸部の外側、前肢(上腕と前腕の内側の一部を除く)、肩部、および胸壁の前部へとリンパが流れます。
体の左側のリンパ節からは胸管へ、右側のリンパ節からは気管リンパ本幹へとリンパが流入します。浅頸リンパ節を探索する際には、その解剖学的位置が気管よりも背側にある点に注意が必要です。この位置は意外と腹側にあると誤解されがちです。
腋窩リンパ節と副腋高リンパ節: 外側胸動静脈(神経)に沿っています。通常、触診では感じることができませんが、腫大した場合には痛みの原因となることがあります。腋窩リンパ節は、前肢の唯一のリンパ節で、通常は1個存在しますが、場合によっては2個見られることもあります。これらのリンパ節は、肩関節の尾側および内腹側、第1肋骨の外側に位置しています。皮下というより深胸筋、広背筋の間にあります。副腋リンパ節は、すべての個体に存在するわけではなく、存在する場合は外胸静脈の周囲、第3肋骨のレベル前後の胸壁に沿って見られます。このリンパ節が腫大すると、触診で感じることが可能になります。
輸入リンパ管は胸壁、乳腺、前肢の深部、および上腕・前腕の内側の一部の皮膚から来ます。これらの管は、副腋リンパ節へと流れ込みます。
輸出リンパ管は、体の左側では胸管、左気管リンパ本幹、左外頭静脈に流れる一方で、右側では右気管リンパ本幹、右リンパ本幹、右外頭静脈に流れます。
猫の場合(乳腺腫瘍と一緒に摘出する)
乳腺から腋窩に伸展する外側胸動静脈を探す
乳腺を剥離している途中で、深胸筋尾側と広背筋との間から伸展している外側胸動静脈を探す。多くの場合、外側胸動静脈は第1~2乳腺間外側の皮下組織内に認められる。
外側胸動静脈をガイドにする
副腋窩リンパ節、腋窩リンパ節および輸入・輸出リンパ管は、外側胸動静脈に併走しているため、これらを目印にする。
なお、外側胸神経も外側胸動静脈に併走する。
腋窩リンパ節は深胸筋、または広背筋の内側に張り付くように存在することが多い。
腋窩リンパ節は深胸筋あるいは広背筋の内側に張り付くように存在することが多く、助手に筋肉を持ち上げてもらい、もしくは切開して腋窩を覗きながら、血管神経とともに剥離を深化させる。
大動脈に沿ったリンパ節は、尾側から順にたどることができます。
肝門部から始まり、少し右側の門脈を中心に尾側へ、左側下腹部に向かってリンパ節を探索します。脾静脈周辺にはいくつかのリンパ節が存在します。
胃リンパ節は、胃の小弯側に位置しており、膵十二指腸リンパ節は幽門部周辺の腹側にあります。肝リンパ節は左側が大きい特徴があります。
空腸リンパ節は前腸間膜静脈を挟んで位置しており、下腹部の少し左側を横断する形で前腸間膜静脈を追いながら遠位にたどります。2重の膜に包まれているため、膜を切開して脈管を確認し、剥離操作を進めていきます。リンパ節に入る血管(空腸動静脈)が貫通しているため、可能な限りこれらの血管を温存する必要があります。