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猫の心筋症 🩺肥大型心筋症🫀

🐱 猫の肥大型心筋症(HCM)について詳しく知ろう 🐱

こんにちは。今回は、猫の心臓病の一つである肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)について、最新の情報を交えながら詳しく解説します。


🐾 肥大型心筋症(HCM)とは?

HCMは、猫の心臓の筋肉(心筋)が異常に厚くなる病気です。この心筋の肥大により、心臓内の空間が狭くなり、血液を十分に送り出せなくなります。その結果、全身への血液供給が滞り、さまざまな症状を引き起こします。

📋 診断基準

    • 心筋の厚さ:心エコー検査で、拡張期に心室中隔や左室自由壁の厚さが6mm以上の場合、HCMが疑われます。
    • 弁の異常:僧帽弁逆流(MR)や大動脈弁逆流(AR)の有無を確認します。

🔍 SAM現象とその影響

収縮期前方運動(Systolic Anterior Motion:SAM)とは、心臓の収縮時に僧帽弁の一部が大動脈内に引き込まれる現象です。

💡 SAM現象のポイント

  • 血流への影響:SAMが起こると、大動脈への血流が妨げられ、血圧が不安定になります。
  • 腎臓への影響:血圧の変動により、腎臓への血流が低下する可能性があります。そのため、血液検査で腎機能を確認することが重要です。
  • 血圧測定の注意点:猫は病院内で緊張しやすく、血圧が高めに出る傾向があります。正確な血圧を把握するために、可能であれば自宅での測定やリラックスできる環境での測定を検討します。

💊 治療方針

1. 薬物療法

🟣 ベナゼプリル(商品名:ベナゼハート)

  • 作用:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬で、血管を拡張し、心臓の負担を軽減します。
  • 用量:0.5mg/kgを1日1回(Sid)投与します。
  • 副作用:一般的に副作用は少ないとされていますが、まれに食欲不振や嘔吐、腎機能の変化が見られることがあります。

🔵 ジルチアゼム

  • 作用:カルシウムチャネル拮抗薬で、心筋の弛緩を促し、心臓の拡張を助けます。
  • 使用条件:ベナゼプリルで十分な効果が得られない場合に追加します。
  • 注意点:血圧を下げる作用があるため、投与前に血圧を測定し、低血圧にならないよう注意します。

🟢 アテノロール(β遮断薬)

  • 作用:心拍数を抑制し、心臓の酸素消費量を減少させます。
  • 適応:大動脈の閉塞が見られる場合に使用します。
  • 注意点:
    • 心不全のリスク:心不全が進行している場合、心機能を急激に低下させるリスクがあります。
    • 副作用:ぐったりしたり、活動性が低下することがあります。慎重な投与と経過観察が必要です。
  • 当院での対応:リスクを考慮し、当院ではアテノロールの処方はあまり行っていません。

2. 呼吸状態の管理

🌊 胸水のチェックと対応

  • 胸水貯留の確認:レントゲンや胸部エコーで胸水の有無を確認します。
  • 胸水の処置:
    • 胸腔穿刺:胸水が溜まっている場合、針を刺して胸水を抜きます。
    • 通院の頻度:胸水は再発しやすく、週に何回も通院が必要になることがあります。
    • 根治は難しい:胸水を抜くことは一時的な改善策であり、根本的な解決にはなりません。
  • リスクと費用:
    • 猫への負担:処置時に猫が暴れると、肺を傷つけて気胸を起こすリスクがあります。
    • 費用面:頻繁な通院と処置により、経済的負担が大きくなります。
  • 飼い主さんへの提案:
    • 生活の質(QOL)の向上:酸素室のレンタルや在宅ケアを検討します。
    • 終末期ケア:猫ちゃんの状態や飼い主さんの意向に合わせて、最善のケア方法を一緒に考えます。

💧 点滴の制限

    • 左心房の拡大がある場合:点滴による液体負荷が心臓に負担をかけるため、点滴は基本的に避けます。

3. 心不全時の対応

  • 呼吸状態が悪化した場合:肺水腫や胸水貯留が疑われます。速やかに診察し、適切な処置を行います。
  • 酸素療法:自宅での酸素室の利用を検討します。酸素濃度の高い環境で、猫ちゃんの呼吸を楽にします。
  • 鎮静剤の使用:ストレスや苦痛を軽減するために、必要に応じて鎮静剤を使用します。

🗓 定期的な診察とフォローアップ

  • 診察頻度:
    • 初回診察後:1週間後に再診。
    • その後:1か月後、3か月後に定期的なチェックを行います。
  • モニタリング内容:
    • 心エコー検査:心筋の厚さや心臓の動きを評価します。
    • 血液検査:腎機能や電解質のバランスを確認します。
    • 血圧測定:自宅での測定も検討します。

💌 飼い主の皆さんへのメッセージ

肥大型心筋症は進行性の病気であり、完全な治癒が難しい場合があります。しかし、適切な管理と治療により、猫ちゃんの生活の質を維持・向上させることが可能です。

  • 治療の選択:治療法にはさまざまな選択肢があります。猫ちゃんの状態や飼い主さんのご希望に合わせて、一緒に最適なプランを考えましょう。
  • 費用面の相談:治療には費用がかかります。無理のない範囲で続けられるよう、費用面でのご相談も承ります。
  • 終末期ケア:必要に応じて、在宅でのケアや看取りの方法についてもサポートいたします。
  • 不安や疑問の解消:どんな些細なことでも構いません。不安や疑問があれば、遠慮なくご相談ください。

📝 最新の知見と補足情報

🔹 拡張型心筋症(DCM)との違い

  • DCMの特徴:心筋が薄くなり、心臓が拡張してしまう病気です。過去にはタウリン欠乏が原因の一つとされていましたが、現在はフードの改善により激減しています。
  • 治療:タウリン欠乏が原因の場合、タウリンの補充により心機能の改善が期待できます。

🔹 拘束型心筋症(RCM)

  • 特徴:心筋の弾力性が失われ、心臓が硬くなる病気です。心房が拡大し、血栓ができやすくなります。
  • 治療:利尿薬やACE阻害薬の使用、抗凝固療法が検討されます。

🔹 分類不能心筋症

  • 定義:他の心筋症の特徴が明確でない場合に診断されます。
  • 治療:症状に応じて、肥大型心筋症や拘束型心筋症と同様の治療を行います。

💡 使用される主な薬剤とその注意点

🩺 抗凝固薬

🔸 アスピリン

  • 作用:血小板の凝集を抑制し、血栓形成を予防します。
  • 注意点:消化器症状や出血リスクがあります。投与量と頻度を守りましょう。

🔸 クロピドグレル

  • 作用:強力な抗血小板作用があります。
  • 注意点:苦味が強いため、投薬が難しい場合があります。カプセルに入れるなど工夫が必要です。

🩺 β遮断薬

🔸 アテノロール

  • 作用:心拍数を下げ、心臓の負担を軽減します。
  • 注意点:低血圧や低血糖を引き起こす可能性があります。

🩺 カルシウム拮抗薬

🔸 ジルチアゼム

  • 作用:心筋の弛緩を促し、心臓の拡張を助けます。
  • 注意点:過度の血圧低下や徐脈に注意が必要です。

🩺 ACE阻害薬

🔸 エナラプリル、ベナゼプリル

  • 作用:血管を拡張し、心臓の負担を軽減します。
  • 注意点:腎機能や電解質バランスの変化に注意します。

🩺 ピモベンダン

  • 作用:心筋の収縮力を高め、心臓のポンプ機能を改善します。
  • 注意点:肥大型心筋症では使用に慎重さが求められます。主に拡張型心筋症での使用が推奨されています。

🐾 まとめ 🐾

肥大型心筋症は、猫の心臓病の中でも一般的な疾患であり、早期発見と適切な管理が重要です。獣医療チームと飼い主さんが協力して、猫ちゃんの健康と幸せな生活を支えていきましょう。


📚 参考文献

  • 猫の心臓病に関する最新の獣医療文献
  • 心臓病治療ガイドライン

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