🐾 愛猫の「いびき」や「呼吸の変化」、見逃さないで! 🐾
最近いびきをかく、呼吸音が変わった、鼻水やくしゃみが続く…それは鼻咽頭・喉頭の病気(ポリープ、腫瘍、慢性炎症など)のサインかもしれません。特に、くしゃみや鼻水が抗生剤を使ってもなかなか治らない場合も注意が必要です。
早期発見と適切な診断・治療が、愛猫の健康のために非常に大切です。ここでは最新情報(2025年現在)をお届けします。
🌟 1. こんな症状に注意!
以下のような症状が見られたら、動物病院に相談しましょう。
- くしゃみ、鼻水(膿っぽい、血が混じるなど)が続く
- いびき、ズーズー・ガーガーといった異常な呼吸音
- 口を開けて呼吸する(口呼吸)
- 鼻血が出る
- 顔(特に鼻の周りや目の下)が腫れる
- 目やにや涙が多くなる
- 食欲不振(特に食べにくそうにする、食べる量が減る)
- 口呼吸による胃の膨張や嘔吐
- 抗生剤で鼻炎症状が改善しない、または繰り返す
※これらの症状は、腫瘍だけでなく、ポリープ、感染症、アレルギー、歯周病など様々な原因で起こりえます。
🔬 2. 見えない場所を見るために:画像診断法
- ■レントゲン検査: 基本的な検査。骨の変化や大きな腫瘤、胸部(転移等)を確認。小さな病変は見えにくいことも。
- ■CT検査: 標準的検査法へ。詳細な断層画像で腫瘤の位置・大きさ・骨への影響を鮮明に評価。腫瘍の種類推測にも役立つ。
- ■MRI検査: 軟部組織(神経など)に優れる。脳への広がり確認や腫瘍の性質評価(DWI)に有用。リンパ腫と癌の鑑別にも期待。
- ■内視鏡検査: 直接観察と生検(組織採取)が可能。確定診断に重要。ポリープなら摘出も。低侵襲な手技も登場。
- ■超音波検査: 首周りのリンパ節や、鼻腔内腫瘍(特にリンパ腫)の転移先となりやすい腎臓などの腹部臓器を評価。生検時のガイドにも活用。
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CT検査は鼻腔内の詳細な観察に不可欠です
🎯 3. より確実に病気を見つけるために:診断精度向上の技術
- ■基本の流れ: 症状と身体検査 → 画像検査 → 生検(バイオプシー)による組織採取 → 病理検査で確定診断(良性/悪性、腫瘍の種類特定)。
- ■画像所見の活用: CT/MRIで腫瘍の種類(リンパ腫か癌か)をある程度推測し、治療方針立案の参考に(最終診断は病理検査で)。
- ■CTガイド下生検: CTで確認しながら深部や狙った場所から安全かつ確実に組織を採取。診断精度向上、猫の負担軽減。
- ■内視鏡と迅速細胞診: 検査中に細胞を簡易評価し、治療方針の仮決定に役立てる(最終診断は病理検査)。
- ■疾患ごとの診断ポイント:
- リンパ腫: 猫の鼻腔内腫瘍の約30%。多くはFeLV/FIV陰性。腎臓への転移も考慮し腹部超音波検査も重要。タイプ(B/T細胞)特定が治療や予後に関わる(後述)。
- 上皮性腫瘍(癌): 生検による組織診断が必須。扁平上皮癌は表面の炎症が強く細胞診では難しいことも。
- 鼻咽頭ポリープ: 若い猫に多い良性のできもの。CTで中耳病変を確認、内視鏡で診断・摘出。
- 炎症性疾患: カビや細菌(耐性菌含む)、慢性炎症が原因。抗生剤が効かない場合、細菌培養・薬剤感受性検査で適切な薬を選択したり、腫瘍など他の原因を疑う必要あり。感染検査や生検で腫瘍を除外して診断。
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内視鏡で直接観察し、組織を採取(生検)します
✨ 4. 最新の治療法:より効果的に、より負担を少なく
- ■リンパ腫: 抗がん剤(多剤併用)と放射線療法が中心。喉など局所なら放射線が効果的で長期寛解も期待。ただし、リンパ腫のタイプ(B細胞/T細胞)により抗がん剤の効き目が異なるため、タイプの特定が重要(後述)。分子標的薬などは研究段階。
- ■上皮性腫瘍(癌): 集学的治療(手術、放射線、抗がん剤)。鼻腔内は手術困難なことが多く、放射線が中心。特に高精度放射線治療(SRT)は効果と副作用軽減を両立。手術は限定的、術後放射線も。分子標的薬(トセラニブ等)の効果報告も。
- ■鼻咽頭ポリープ: 摘出で治癒期待(良性)。牽引抜去が一般的だが再発も(10-40%)。再発時や根治目指すならVBO(中耳外科)やPTT(低侵襲内視鏡手術)も選択肢。
- ■炎症性疾患: 原因(カビ、細菌)に対する薬物療法。細菌培養・感受性検査に基づき適切な抗生剤・抗真菌薬を選択。原因不明の慢性炎症なら抗炎症薬等で症状管理。呼吸困難時は内視鏡で腫れた組織を一部切除することも。
📈 5. 病気のゆくえ:予後に関する最新データ
- ■リンパ腫: 適切な治療(タイプに合わせた)で比較的良好。鼻咽頭・喉頭は局所性が高く治療反応が良い傾向。生存期間中央値約2.5年、5年以上の生存例も報告。再発の可能性はあり。
- ■上皮性腫瘍(癌): 一般に厳しいが、積極的治療(特に高精度放射線)で1~2年以上の延命も期待できるケースあり。種類や進行度で大きく異なる。
- ■鼻咽頭ポリープ: 予後極めて良好。適切に摘出すれば完治が期待できる(良性)。再発時は再手術で対応可。
- ■炎症性疾患: 原因が特定できれば治癒も。特定できなくても長期的に症状コントロール可能な場合が多く、予後良好。
🧬 6. 診断の精度を高めるために:病理診断・細胞診の技術革新
- ■免疫組織化学(IHC): 特殊な抗体染色で細胞タイプや性質を正確に特定。リンパ腫のB細胞/T細胞分類や癌/肉腫鑑別、悪性度評価に不可欠。診断の質が向上。
- ■細胞診と分子診断:
- 少ない細胞から多くの情報を得る技術(フローサイトメトリー等)が診断困難例での精度向上に貢献。
- リンパ腫の場合、クローナリティ解析(遺伝子検査、PARR法など)を外部検査センターに依頼し、B細胞性かT細胞性かを正確に鑑別することが治療選択に重要。
- 麻酔が困難な場合、負担の少ない鼻腔粘膜の細胞診と癌遺伝子検査を組み合わせる検査法も。
- ■予後マーカーの研究: 病理結果から治療効果や予後を予測するマーカー(例: Ki-67)の研究が進む。個別化治療への応用期待。
- ■デジタル病理とAI: 病理画像をデジタル化しAIで解析する技術が研究中。客観的・高精度診断への期待(まだ研究段階)。
💡 7. まとめ
猫の鼻咽頭・喉頭の病気(腫瘍、ポリープ、難治性鼻炎など)は、診断・治療が難しい面もありますが、画像診断(CT, MRI, 内視鏡等)や病理診断(IHC, 遺伝子検査等)、そして治療法(低侵襲手術, 高精度放射線治療, タイプ別抗がん剤, 適切な抗生剤選択等)は近年大きく進歩しました。
愛猫の呼吸の様子(いびき、呼吸音の変化、鼻水、くしゃみ等)に気づいたら、特に抗生剤で改善しない場合は、早めに動物病院を受診し、原因を突き止めるための適切な検査を受けることが、早期発見・早期治療への第一歩です。
最新の知識と技術に基づいた正確な診断と、個々の状態に合わせた適切な治療により、多くの猫ちゃんがより長く、より快適に過ごせる可能性が広がっています。