診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
最近の研究によると、
2050年にはがんよりも細菌感染症が多くの命を奪う可能性
が 出てきました。なぜかというと、私たちが抗生物質を正しく使わないことで、
細菌がこの薬に耐性を持ってしまうからです。
特に、感染が皮膚の上でなく、体の中に起きた場合、
広域スペクトラムの抗生物質
が必要になります。しかし、適切な薬を選ぶには、細菌の種類や薬に対する感受性を
確認するテストが不可欠です。
最近、人とペット両方に感染する細菌が増えてきました。
特に1ヶ月以内に抗生物質を使った場合、
その薬に耐性を持つ細菌が増えることが 知られています。
薬剤感受性のテストでは、細菌がどの抗生物質に効くかを確認します。
「S」は効くことを、
「R」は効かないことを示しています。
特に多剤耐性菌は
ほとんどの薬に効かず、治療が難しくなります。
🌸
広域スペクトラムは万能ではありません
広域=抗菌作用が強い、というわけではありません。
なんとなく広域の抗菌剤を使うのは間違いで、できるだけ
スペクトラムが狭い抗菌薬
を選ぶほうが理想的です。
(ただし、狭いスペクトラムの薬は種類が限られているため、
ペニシリン系やセフェム系の1世代・2世代をうまく使います。
そうすることで正常な細菌叢を破壊しにくくなります。)
🌸
殺菌性と静菌性の抗菌剤を組み合わせると効果が低下
細菌の増殖を抑える薬と、 細菌を直接殺す薬が互いに打ち消し合う場合があり、
実際の臨床現場ではあまり推奨されません。
敗血症とは、
「感染が全身へ波及し、臓器障害を引き起こす病態」
を指します。犬や猫でも、肺炎・尿路感染・膿瘍などの局所感染が制御できず、
細菌や毒素が血液中に広がることで、重篤な症状を呈することがあります。
ヒト医療では「Sepsis-3」と呼ばれる基準が導入され、qSOFAやSOFAスコアで
評価しますが、犬や猫の領域では
完全には当てはまりません。
ただし、「
感染症+臓器障害
」という大枠は共通しており、以下のような臓器障害が
2項目以上認められれば
敗血症を強く疑います。
また、ヒト医療で使われる
乳酸値(ラクテート)2mmol/L超
という指標も、犬や猫では近似的に参考にされますが、
正確なカットオフ
は症例ごとに異なる場合があります。
敗血症性ショックは、
十分な輸液負荷でも血圧維持が困難で、血管作動薬の使用と
高乳酸値(2mmol/L超)を伴う状態です。死亡率は
40%以上
と非常に高く、早期介入が重要になります。
例:
イミペネムシラスタチン+
ノルアドレナリン+
ダルテパリン
mini fluid challengeでは、
3mL/kgを1分かけて投与し、
心拍数の低下と血圧の上昇
を評価します。
Warm shock
(hyper dynamic state)は粘膜が暗赤色で、
血管抵抗低下
による血圧維持と心拍出量増加が特徴。進行すると
cold shock
(hypodynamic state)に移行し、
末梢血管が収縮
して血圧が急激に低下します。
代償性(早期)ショックでは発熱や頻脈、“跳ねる”ような脈拍、
高血圧/正常血圧で粘膜が赤黒いなどが見られますが、
非代償性(後期)ショックになると
四肢の寒冷、
虚脱、
乏尿、血圧低下、点状出血などが起こり、
死亡率が急上昇
します。
ヒトのSepsis-3同様、犬や猫でも
「感染+臓器障害」
という考え方で早期に敗血症を疑い、
早期介入
(抗菌薬、輸液、昇圧剤など)がポイントです。
最近は多剤耐性菌対策として、
広域抗菌薬の乱用を避け、感受性試験で適切な薬を選ぶ
ことが一層重視されています。
また、乳酸値や血圧、尿量などを
集中的にモニタリング
し、効果が乏しければ
6〜24時間ごとに治療方針を再評価
するアプローチが推奨されています。飼い主さんは
「予後がシビアな病態である」
ことを理解し、獣医師の指示に従いながら連携して治療を進めてください。
敗血症の指標 | 犬 | 猫 |
---|---|---|
心拍数 | >120 (47%) | <140 (30%) または >225 (0%) |
呼吸数 | >20 (93%) | >40 (52%) |
体温 | <38.1 (5%) または >39.2 (70%) | <37.8 (14%) または >40 (50%) |
白血球 | <6 または >16 (>3% バンド) | <5 または >19 |
定義 | 上記のうち2つ以上 | 上記のうち3つ以上 |
% | 犬 | 猫 |
---|---|---|
分葉核好中球の増加 | 75 | 57 |
桿状核好中球の増加 | 58 | 54 |
単球数増加 | 50 | 22 |
グルコース増加 | 27 | 73 |
低アルブミン血症 | 29 | 21 |
高ビリルビン血症 | 44 | 48 |
高ALP | 58 | 3 |
ペニシリン系抗生物質は、犬や猫の
一般的な細菌感染に
広く使われる薬です。ただし、
眼の感染に対しては、
組織移行性が十分でないため
効果が乏しい
とされています。
ペニシリン系を含む
βラクタム系抗菌薬
は
時間依存性
の特性を持ちます。
すなわち、
投与量を増やすより、投与間隔を守ることが
効果発現のうえで重要です。
血中濃度が最小発育阻止濃度(MIC)以上を保つ
Time above MIC
を長くするため、回数(間隔)に留意しましょう。
短時間(30分~1時間)の
CRI(持続点滴)
は、IVショット(静注)より血中濃度の上昇が緩やかで
安全性が高い
といわれます。
ただし、24時間ずっと流しっぱなしの
長時間CRI
は代謝速度を把握しづらく
過剰投与
になりやすいため
推奨されません。
また腎排泄型であるため、
腎機能が変動
しやすい症例(利尿中など)では、
用量調整を検討する必要があります。
アモキシシリン・アンピシリン
は犬猫の一般的な細菌感染に広く利用される
第一選択薬ですが、
眼の感染にはあまり効かない点や
時間依存性を踏まえた投与設計が
必要です。
最新の文献でも、多剤耐性菌の増加への懸念から
適切な間隔管理・投与方法・腎機能の考慮
が強調されており、
獣医師の判断・飼い主の協力
が不可欠です。
クラブラン酸や
スルバクタムは、
アモキシシリンや
アンピシリンと組み合わせることで
細菌が産生するβラクタマーゼ酵素
を阻害し、
抗生物質の効果を維持する働きがあります。
多剤耐性菌にも一定の対応力が期待される組み合わせです。
多剤耐性菌の増加に伴い、
βラクタム系+βラクタマーゼ阻害薬の組み合わせは
さらに注目されています。
ただし、すべての耐性機構をブロックできるわけではないため、
感受性試験を行い、
有効性を確認することが望ましいです。
アモキシシリン・クラブラン酸
の経口製剤は使いやすい反面、
下痢などの
消化器症状
を起こしやすいと報告されています。特に利尿中など、
腎排泄が変動している動物では、
一方的にクラブラン酸が蓄積して副作用を起こすケースがあるため
注意が必要です。
クラブラン酸やスルバクタム
は、βラクタム系抗生物質の弱点である
βラクタマーゼ分解
を防ぎ、
耐性菌への対応
を強化する重要な役割を担います。
最新の文献でも、
多剤耐性菌対策の一環として
感受性試験を行い、下痢などの副作用に配慮しながら
投与設計
を最適化することが推奨されています。獣医師と相談のうえ、
正しい使用方法を守りましょう。
モニタリング:
治療中はクレアチニン値を定期的にチェックし、
creが0.4 mg/dL以上上昇した場合は使用を中止します。
個体の状態に応じた用量調整が重要です。
アミノグリコシド系抗生物質は
高い抗菌効果
を持つ一方で、副作用リスクもあるため、
犬種特性や個体の腎機能
を考慮しながら
慎重に使う
ことが大切です。
皮膚感染症や歯の感染症など、犬猫でよくみられる病態の治療に用いられる
リンコサミド系抗生物質
です。以下では、最新情報を踏まえたポイントをわかりやすくまとめています。
クリンダマイシンは
皮膚感染症や
歯の感染症などに有効で、
犬猫の日常診療でも使用頻度が高い抗生物質のひとつです。
クリンダマイシンは
食事の影響
を受けないため、
食事とのタイミングを気にする必要が少なく
安定した効果
が期待できます。
EM耐性の有無をあわせて確認し、
治療選択を行うことが重要です。
クリンダマイシン
は、皮膚や歯の感染症に有用なリンコサミド系抗生物質ですが、
MRSP耐性やEM耐性
との交差耐性リスクを踏まえ、
事前の感受性検査
を行うことが望まれます。
犬猫それぞれの感染状況を把握し、獣医師の指示のもと
適切な選択・使用
を行うことが大切です。
テトラサイクリン系は、グラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌など
幅広い病原体に対して
有効な抗生物質です。さらに、
リケッチアや
マイコプラズマ、
バベシア
などの原虫感染にも効果が報告されています。
適応例:リケッチア感染症(例:ブルセラ症・エールリヒア症)や
マイコプラズマ感染、バベシアなど幅広く使用されます。
ドキシサイクリンと似た作用を持ちますが、
耐性菌が疑われるケースや
MRSP
などでドキシサイクリンが効かない場合、
ミノサイクリンが選択されることもあります。
嘔吐リスク:
脳圧亢進との関連が指摘され、
投与時に嘔吐が起こりやすいため、
制吐剤の併用が推奨されるケースがあります。
ドキシサイクリン・ミノサイクリンは
超広域スペクトラムを持ち、
様々な感染症に活躍します。しかし、
妊娠動物・幼齢動物への投与や
猫の食道炎など、
注意点も多く、耐性菌のリスクも懸念されています。
感染症や動物の状態に合わせ、
獣医師の指示
のもとで適切に使用してください。
TC | DOXY | MINO | |
---|---|---|---|
経口吸収 | 60-80% | 90-100% | 90-100% |
分布 | CSF以外 | CSFには一部不十分 | どこでもOK |
排泄 | 腎臓 (未変化) |
便 (~75%)、 腎臓 (~25%) 胆汁 |
便 (80%) 腎臓 (20%) |
半減期 | 5~6時間 | 10~12時間 | 7時間 |
耐性菌が出やすいため慎重に使用します。MRSPには適さず、耐性が確認された場合は交差耐性も考慮する必要があります。
🌷ニューキノロン系は、緑膿菌が出た時に使えるように残しておくこと
多用により耐性ができてきている
🌷キノロンの注意点
基本的にグラム陽性の連鎖球菌には効果が低い
嫌気性菌にもあまり効果はない
オルビフロキサシンはある(クロストリジウムに効果的)
前立腺に効果的な薬は少ないが、ニューキノロンは効果的
緑膿菌に経口投与で対抗できる数少ない抗菌薬‼️
緑膿菌は他の薬も効きにくくする多剤耐性菌を作りやすいのですごく嫌な菌❗️
キノロンの中には、関節軟骨に影響を及ぼす事がある。子犬と妊娠中にも要注意
フルオロキノロン系
・殺菌的。
・濃度依存性。 ・副作用:幼犬において関節障害。
ニューキノロン系は、緑膿菌が出た時に使えるように残しておくこと多用により耐性ができてきているマキノロンの注意点
基本的にグラム陽性の連鎖球菌には効果が低い
嫌気性菌にもあまり効果はない
オルビフロキサシンはある(クロストリジウムに効
果的)
前立腺に効果的な薬は少ないが、ニューキノロンは
効果的
緑膿菌に経口投与で対抗できる数少ない抗菌薬!!
緑膿菌は他の薬も効きにくくする多剤耐性菌を作り
🌼濃度依存性
1回量を増やす
キノロン、アミノグリコシド、マクロライド系
一部感染に有効ですが、猫では腎障害リスクが高いため投与は禁忌です。
耐性菌に対して有効ですが、急速投与により中枢神経症状を引き起こす可能性があるため、投与は30分以上かけて行います。
消化器疾患や嫌気性菌感染に用いられますが、神経症状リスクがあるため、低用量でも十分注意が必要です。
🌸メトロニダゾール
抗原虫薬ですが
耐性菌ができにくいが、分割すると苦いので飲ませにくい
日本でも注射薬が出たよ❗️
神経症状リスクあり。可逆的だが低用量でも注意が必要
横隔膜より下の嫌気性菌に効果的☞横隔膜より上の嫌気性菌ならクリンダマイシン
副作用で神経症状が出ることがある
🌸マクロライド系
あんまり使わないけど
ペニシリン系にアレルギーがある場合に使用(ターゲットはG+菌)
💡エリスロマイシン
低用量で消化管が動く(消化管運動改善薬
下痢することも
💡アジスロマイシン
組織内投与が保たれる
1日1回で3日間投与→10日間ほど組織内濃度が保たれる(ヒト)
食餌の影響をあまり受けないらしい
静脈用は2時間くらいかけてゆっくり投与
猫ひっかき病(ヒト:500mg Sid 3日間)
💡クラリスロマイシン
空腹時投与が推奨
ピロリ菌、カンピロバクターなど
マクロライド系
・静菌作用。高濃度では殺菌的。
・グラム陽性菌に有効。 ・時間依存性。肝臓や肺にもよく移行する。 ・エリスロマイシンは組織親和性が高く、肝臓や脾臓、腎臓、 肺、心臓では血中濃度の5~8倍に到達。 ・脳や脳脊髄液への分布は乏しい。
🌸バンコマイシン
MRSAの特効薬
グラム陽性菌がメイン、陰性菌にはほとんど効かない
腎毒性があり、トラフ値測定を行った方が良い薬剤(薬が切れる直前の血中濃度を測定)
消化管からきちんと吸収されない。
選択しない
外耳炎
🌷耳のグラム染色はしっかりやりましょう
緑膿菌がいればゲンタマイシンが適応になります。
※膿はpHが低く、GM(ヒビクス軟膏)が失活するため、洗浄は必須です。
緑膿菌に効くもの☞アミノグリコシド、フルオロキノロン、カルバペネム
腎盂腎炎の起炎菌
尿路感染症にさせないために、日常的なキノロンの使用は控える
細菌性膀胱炎
白血球を認めたら治療が必要
耐性菌が出ていても、症状がなければ治療は必要ない
膀胱結石 犬
βラクタム系→ニューキノロン系→培養検査→ミノサイクリン系orファロペネム系
#前立腺炎
前立腺肥大に次いで多い
石灰化を伴う場合は前立腺癌の可能性が上がる
☞前立腺炎はめちゃくちゃ痛い
血液前立腺関門があるので抗菌薬透過性が異なる
前立腺炎で使用できる抗菌薬
塩基性が弱い
脂質溶解性が高い
☞
ST合剤
エンロフロキサシン
(マルボフロキサシン)
❌
マクロライドやクリンダマイシン☞腸内細菌への感受性が乏しい
クロラムフェニコール☞前立腺移行率60 %
テトラサイクリン系☞前立腺移行率20 %
シプロフロキサシンは
バイオアベイラビリティ
前立腺への到達が
どの程度かわからない
オルビフロキサシンも前立腺炎への選択薬とならない可能性
急性前立腺炎;4週間
慢性前立腺炎;4~6週間
膿瘍や去勢がされていないと治療期間が伸びる傾向
※嚢胞や膿瘍がある場合はホルモン治療も推奨されない
去勢手術により,去勢後3週間以内にサイズ縮小
☞臨床症状は2~3か月以内に減退する。
前立腺炎のフォローアップ
超音波検査による前立腺の再評価;治療後8~12週後
☞できる場合は経直腸触診も併用
治療反応が不十分な場合は診断の再評価
☞BRAF検査も検討される
フルオロキノロン
⭕️エリスロマイシン
クロラムフェニコール
サルファ
➕
塩基性の薬剤
エリスロマイシン
⭕️クリンダマイシン
最初に⭕️2つ(間に培養検査)4wk投与後、去勢手術へ
クロラムフェニコール
G+- 嫌気性菌、クラミジア マイコプラズマ リケッチア
広域 MRSP
40-50mg/kg tid
胃腸障害、体重減少
CYP450阻害→シクロスポリンの併用に注意
肝障害、可逆性の骨髄抑制
・静菌的。高濃度の場合や感受性のある菌に対しては殺菌的。 ・代謝酵素CYP阻害作用を有するため、CYPで代謝される併用 薬の作用を変化させてしまう可能性がある。 ・副作用:可逆的な骨髄抑制。腎機能や肝機能が低下した症例 では薬物が蓄積する可能性があるため、血中濃度をもとに投与 量調整をした方がよい。
抗生物質の適切な使用はペットの健康維持に非常に重要です。各薬剤には効果と注意点があるため、獣医師・看護師の指導のもとで、適切な投与方法や副作用のチェックを行ってください。また、服薬後に異常が認められた場合は、速やかに動物病院へ相談しましょう。