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肛門嚢切除(肛門腺の手術)について:当院の外科的アプローチと最新の知見

お尻を気にする、地面に擦り付けて歩くといった行動が見られる場合、肛門嚢(肛門腺)にトラブルを抱えているサインかもしれません。通常、排便時に外肛門括約筋が収縮することで分泌物は自然に排泄されますが、内容物が硬かったり導線が細かったりすると、炎症や破裂を引き起こす恐れがあります。

本記事では、慢性的な肛門嚢疾患に対する外科切除の必要性と、当院での標準術式、そして獣医学における最新のアプローチについて詳しく解説いたします。

【当院の治療方針】


慢性的な肛門嚢炎に対し、単なる対症療法ではなく、再発を防ぎ感染リスクを根本から断ち切るための「外科切除」を治療の選択肢として提案しています。

なぜ内科治療だけでなく外科切除を提案するのか

初期の肛門嚢炎であれば、内科的な洗浄や抗生剤の投薬で治療します。しかし、内科治療を長期にわたって繰り返すと、以下のような重大なリスクが生じます。

  • 薬剤耐性菌の発生リスク: 繰り返し抗生剤を使用することで薬が効きにくくなり、人獣共通で警戒が必要な耐性菌が検出されるケースが増加しています。
  • 著しいQOLの低下: 慢性的な痛みや破裂のリスクは、動物にとって大きなストレスとなります。

当院の標準術式:「閉鎖式」による安全な摘出

肛門嚢の切除にはいくつかのアプローチがありますが、当院では術野の清潔さを保ち、感染リスクを最小限に抑える閉鎖式(Closed technique)を標準術式として採用しています。

  • 汚染の防止: 袋を開けずに摘出することで、細菌を含む内容物が術野に漏れ出すのを防ぎます。
  • 解剖学的構造の保護: 電気メスを用いた緻密な組織剥離を行い、重要な筋肉(外肛門括約筋)や神経を確実に保護しながら精密な手術を行っています。

「様子を見る」という判断が招いた肛門括約筋壊死に対し、両側肛門嚢摘出および壊死組織の切除を行った11歳小型犬の実際の手術経過です。

👉 横にスクロールして実際の術野経過をご覧いただけます

現在の重篤な内科疾患が顕在化する以前(体力のある段階)に実施された、肛門嚢切除および腹壁腫瘤摘出の実際の手術経過です。

👉 横にスクロールして実際の術野経過をご覧いただけます

【獣医学の最新知見】新しいアプローチ「Inside-Out法」

当院では、より安全で動物に負担の少ない医療を提供するため、常に最新の獣医学的知見のアップデートに努めています。近年、学術誌で新たに報告され注目を集めている「Inside-Out法(反転摘出術)」という新しい術式をご紹介します。

  • 組織の反転: 肛門嚢の開口部から鉗子を挿入し、袋の底を掴んで外側へと完全に裏返して(反転させて)から切除を行います。
  • 境界の可視化: 組織を裏返すことで、摘出すべき肛門嚢と、温存すべき周囲の筋肉との境界線がはっきりと露出します。
  • 括約筋の保護: 境界を直視しながら切除できるため、括約筋へのダメージを最小限に抑えやすく、手術時間も短縮できると報告されています。

予想される合併症とご自宅での管理タスク

手術の精度をいかに高めても、生体の回復過程として起こり得る術後の変化があります。これらを正しく理解し、管理することが重要です。

  • 排便回数の増加・しぶり: 術後2週間から1〜2ヶ月にかけて、傷が治る過程で組織が瘢痕化(硬い組織になること)するためです。時間の経過とともに自然に改善していきます。
  • ご自宅での物理的タスク(必須): 術後は傷口を舐めないよう、エリザベスカラーの装着が必須となります。また、痛みを適切にコントロールするための処方薬を指示通りに投薬してください。

English Summary: Anal Sacculectomy

For chronic anal sac diseases, we recommend surgical removal to prevent recurrent infections and the development of antimicrobial resistance. Our clinic standardly performs the “closed technique,” which effectively prevents surgical site contamination and meticulously protects surrounding anatomical structures such as the external anal sphincter. Furthermore, we continuously adapt to the latest veterinary advancements, including the newly reported “Inside-Out” (eversion) technique, to ensure our procedures remain as precise and minimally invasive as possible. Strict postoperative management, including the mandatory use of an Elizabethan collar and multimodal pain management, is essential for a safe recovery.

中文总结:肛门囊切除术 (Chinese Summary)

对于慢性的肛门囊疾病,我们建议进行外科切除,以防止反复感染和耐药菌的产生。本院标准采用“闭合式”手术技术,能够有效防止术区受到污染,并精密保护肛门外括约肌等周围的重要解剖结构。此外,我们紧跟兽医学的最新进展,例如近期备受关注的“由内而外(反转摘除)”技术,致力于提供创伤最小的医疗服务。术后的家庭护理至关重要,饲主必须让宠物严格佩戴伊丽莎白圈,并配合处方药进行充分的疼痛管理,以确保顺利康复。

 

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