診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
犬や猫の胸水とは、肺と胸壁の間(胸腔)に液体が貯留した状態です。重度になると肺が圧迫されて呼吸困難を引き起こすため、迅速かつ的確な診断と対処が求められます。胸水は多くの疾患で二次的に発生しうるため、原因の見極めが非常に重要です。
胸腔穿刺による胸水採取後の分析(総タンパク量・細胞数など)に基づき、胸水はいくつかのタイプに分類できます。以下が代表的な分類です。
胸水が確認されたら、胸腔穿刺により液体を採取し、下記の検査を行います。
胸水が認められる場合、下記のような疾患が原因となることが多く、それぞれで治療方針と予後が異なります。
・犬では拡張型心筋症や三尖弁不全で右心不全 → 胸水や腹水が貯留しやすい
・猫では肥大型心筋症をはじめとする左心不全でも胸水が認められる
・変性漏出液や乳び胸として現れる例もあり、心エコー検査で確定診断
・治療は利尿薬や強心薬で内科管理。胸水が多い時は穿刺で除去
・予後は心疾患の重症度次第。慢性管理が必要なケースも多い
・リンパ腫、中皮腫、肺・胸壁の転移性癌など多彩
・胸水はしばしば滲出液や血性。乳び胸を呈するリンパ腫もある
・細胞診で腫瘍細胞が出れば診断的だが、検出率は低い場合も
・画像検査(X線、CT)や生検が必要になることも
・治療は化学療法や外科切除、もしくは対症療法。再発しやすい場合が多く、予後は病態による
・猫で比較的頻度が高い(咬傷、異物の刺入など)
・胸水は膿性滲出液(混濁・臭気)で細胞診で好中球優勢、培養で細菌検出
・治療:胸腔ドレナージ + 広域抗生物質投与(培養・感受性に基づき長期投与)
・胸腔チューブ留置し、洗浄排液を数日~1週間行う場合も
・予後は適切治療なら比較的良好。治療開始の遅れや全身敗血症化は重篤
・若い猫に好発するコロナウイルス感染症
・ウェットタイプでは黄~淡琥珀色の粘稠液(高タンパク滲出液)を胸腔・腹腔に貯留
・確定には胸水中コロナウイルス遺伝子PCRや免疫染色
・近年、抗ウイルス薬(GS-441524など)で改善する例あり
・未承認薬のため対症療法が中心だが、治療介入により予後改善が期待される
・交通事故、高所落下などで肺や血管が損傷し血胸や滲出液が発生
・横隔膜ヘルニアでは腹腔液が胸腔に移行。外科的整復で根治可能
・低アルブミン血症(タンパク漏出性腸症やネフローゼ症候群など)による漏出液も稀に認められる
・いずれの場合も全身状態の安定化が最優先。原因に応じて外科手術や内科管理を行う
犬と猫の胸水は、多種多様な疾患が背景にある可能性があり、ひとつの検査だけでは原因を特定できないことも多々あります。
しかし、総タンパク値・細胞診・微生物培養・生化学検査などの総合的な評価により、かなりの手掛かりを得ることが可能です。
近年ではFIPの新たな治療薬など、アップデートが求められる分野でもあります。
胸水を認めたら諦めず、早急な原因究明と適切な治療に取り組みましょう。