047-700-5118
logo logo

診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診

banner
NEWS&BLOG
腹水

 

 

腹水がたまると

胃や腸が圧迫され 食欲の低下・下痢・嘔吐などを引き起こします。

腹水の原因はさまざまで、心疾患、肝疾患、腫瘍、腹膜炎などが考えられます。


**視診・触診**

– 腹部の膨満感や硬さ、痛みの有無を確認します。

腹水が疑われる場合、エコー検査で腹水を確認して、腹腔穿刺を行います。


**FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)**は、腹部や胸部での出血や液体貯留を迅速に評価するためのエコー検査で、特に外傷やショックの患者において、緊急時の診断ツールとして使用されます。腹部用のFAST(AFAST: Abdominal FAST)では、腹水を検出します。


 

主な検査部位(「4-ポイント検査」)

AFASTでは、腹部の4つの主要ポイントにエコーを当て、液体の有無を確認します。液体が溜まりやすい場所に基づいています。

1.横隔膜・肝臓ポイント(DHポイント)

 

2.膀胱ポイント(膀胱三角: CCポイント)

 

3.脾臓・腎臓ポイント(SRポイント)

 

4.腎臓・腸間膜ポイント(HRポイント)


**腹腔穿刺**

– 針とシリンジを使い、腹腔内から液体を採取します。

– **注意点**:エコーガイド下で充分に臓器と離れた部位に針を刺して吸引します。 内臓器官や血管への損傷を防ぐ必要があります。膀胱頭側が大きな血管や臓器から離れているので穿刺に適しています。


貯留液検査

比重測定: 屈折計を使用して、液体の比重とタンパク質濃度を測定します。

1. 漏出液(Transudate)

•外観: 透明で水のようにさらさらしています。色はほとんどなく、淡黄色または無色が一般的です。

•比重: 低い(<1.017)

•総タンパク質濃度: 低い(<2.5 g/dL)

•細胞数: 低い(<1,000 cells/µL)

•関連病態: 主に血管内圧の増加や血漿タンパク質の減少によって引き起こされるものです。

•低アルブミン血症(例: 肝硬変、蛋白漏出性腸症)

•門脈圧亢進(例: 右心不全、肝疾患)

2. 変性漏出液(Modified Transudate)

•外観: やや濁っており、透明度が減少しています。色は淡黄色からやや赤みがかかることもあります。

•比重: 中間(1.017~1.025)

•総タンパク質濃度: やや高め(2.5~5.0 g/dL)

•細胞数: 中程度(<5000 cells/µL)

•慢性の右心不全

•腫瘍性疾患

•炎症の初期段階

3. 滲出液(Exudate)

•外観: 濁っており、膿性(黄緑色や白濁)、血性(赤色)、または粘性が強いことがあります。

•比重: 高い(>1.025)

•総タンパク質濃度: 高い(>3.0 g/dL)

•細胞数: 高い(>5,000 cells/µL)

•関連病態: 感染や炎症、腫瘍による血管透過性の増加や、組織損傷が主な原因です。

•細菌性腹膜炎

•膵炎

•腫瘍性病変(例: 腺癌、リンパ腫)


FIP(猫伝染性腹膜炎)の腹水の特徴

FIPはコロナウイルスによる猫の致命的な病気で、腹水が特徴的にみられる湿性型FIPが存在します。この腹水は、通常の滲出液や変性漏出液の性質を持ちながらも、以下の特徴を示します。

•外観: 黄色く、粘性が高く、しばしば糸を引くことがあります。

•比重: 高い(>1.017)

•総タンパク質濃度: 非常に高い(>3.5 g/dL)

•細胞数: 滲出液と比較するとやや低めで、中等度の細胞数が見られる(2000-6000 cells/µL)。炎症性細胞(特に好中球とマクロファージ)が主体です。

•アルブミン:グロブリン比: 低いことが多く、<0.4が強くFIPを示唆します。

FIPの腹水は、慢性の炎症性プロセスによるものですが、一般的な滲出液とは異なり、強い粘稠性が特徴です。診断の際には、RT-PCRによってコロナウイルスの存在を確認します。


**細胞診検査**

1.採取した腹水を遠心分離器にかけ、沈殿した細胞成分をスライドガラスに塗抹します。

2.ギムザ染色やディフクイック染色を用いて細胞を染色します。

3.顕微鏡で観察し、細胞数と種類(好中球、リンパ球、マクロファージ、腫瘍細胞など)を確認します。


**培養感受性検査**

– 腹水が感染性疾患によるものと疑われる場合、腹水を培養して細菌や真菌などの病原体を同定し、効果のある抗菌剤を選択します。(外注検査)


生化学検査

腹水中の化学成分を血清と腹水の両方で測定し、比較する事で、病態をさらに絞り込むことができます。

胆嚢破裂: ビリルビン、ALP、γ-GT

•膀胱破裂(尿腹症): クレアチニン、尿素窒素、カリウム

•膵炎: アミラーゼ、リパーゼ

•細菌性腹膜炎: グルコースの低下

胆嚢破裂

胆嚢破裂では、胆汁が腹腔内に漏出し、腹膜炎を引き起こすことがあります。この際に、腹水中に胆汁由来の成分が増加します。

•ビリルビン(Bilirubin):

•検査項目: 腹水中のビリルビン濃度を測定し、血清中のビリルビン濃度と比較します。

•腹水中のビリルビン濃度が血清中のビリルビン濃度よりも2倍以上高い場合、胆嚢破裂や胆管損傷が強く疑われます。

•アルカリフォスファターゼ(ALP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT):

•検査項目: 肝酵素の上昇は、肝胆道系の損傷や胆汁鬱滞を示します。

•腹水中および血清中のこれらの酵素の上昇は、胆管閉塞や胆嚢破裂の可能性を示唆します。

尿腹症

膀胱破裂や尿路の損傷により、尿が腹腔内に漏れ出すことで尿腹症が発生します。

•クレアチニン(Creatinine):

•腹水中のクレアチニン濃度が血清中のクレアチニン濃度よりも2倍以上高い場合、膀胱破裂や尿管損傷を強く示唆します。

•尿素窒素(BUN):

•腹水中の尿素窒素濃度が血清中の濃度と比較して高い場合、膀胱破裂や尿路損傷が疑われます。

•カリウム(K⁺):

•膀胱破裂による尿の漏出で、カリウム濃度が上昇することがあります。特に、腹水中のカリウム濃度が高い場合、尿腹症の診断に有用です。

•リパーゼ(Lipase):

•診断ポイント: 膵炎の場合、腹水中および血清中のリパーゼが著しく上昇します。膵炎による腹水は通常滲出液の性質を持ちます。

•グルコース(Glucose):

•検査項目: 腹水中および血清中のグルコース濃度を測定します。

•腹水中のグルコース濃度が血清中の濃度よりも著しく低い場合、細菌性腹膜炎などが疑われます。細菌はグルコースを消費するため、腹水中の濃度が低下することがあります。


高齢動物に多いタイプ

•出血性腹水: 肝臓や脾臓の腫瘍(特に血管肉腫)が破裂し、腹腔内に出血することが多いです。

•滲出液: 消化管腫瘍が穿孔し、腹膜炎を引き起こすことで、滲出液が多く見られます。

– 画像診断(超音波検査やX線検査)を併用し、腹腔内の腫瘍や、小肝症(肝不全により肝臓が萎縮)、心臓病などの検出も同時に行い、原因を絞って行きます。