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膵炎

膵臓の働き

膵臓の機能:ご飯が胃に運ばれたとき、膵臓は消化酵素であるリパーゼを十二指腸に分泌します。リパーゼは脂肪を分解する酵素で、消化管内の食物を分解し、体内で栄養素が吸収されることを助けます。

膵炎とは

膵炎の定義と原因:高脂肪食や交感神経の興奮により血流が低下すると、膵臓は炎症を起こすことがあります。この炎症によって、リパーゼが消化管の外に漏れ出し、周囲の臓器を消化してしまうことがあります。結果として腹膜炎に進行し、重症化することがあるため、初期の炎症を抑える治療が非常に重要です。

膵炎による症状

症状の概要:リパーゼによって消化管や他の臓器が影響を受けることで、様々な症状が現れます。主な影響を受ける臓器と症状は以下の通りです:

  • 胃:嘔吐、腹痛
  • 腸:下痢、血便、腹痛
  • 心臓:不整脈

腹痛のサイン:特に膵臓のある右上腹部に腹痛が生じやすく、抱き上げた際に痛みを示す場合や、お腹を押すと反応がある場合があります。「お祈りポーズ」をすることも痛みの一つのサインです。

膵炎の診断に用いる検査

血液検査:膵炎マーカー(LIP)、炎症マーカー(CRP)が上昇することが特徴的です。さらに、腎臓や肝臓の機能を示す数値(BUN、CRE)、全身の状態や脱水状態も評価します。

便検査:下痢がある場合、細菌や寄生虫の感染を除外するために実施します。

超音波検査:膵臓や消化管、周辺臓器の状態を観察し、炎症や腫瘍の有無を確認します。

膵炎の治療

静脈点滴:全身および膵臓の循環を改善するために実施します。これにより、膵臓の機能をサポートし、回復を促進します。

蛋白分解酵素阻害薬:ガベキサートを使用して、消化管外に流出しているリパーゼの活動を遮断し、さらなる組織へのダメージを防ぎます。

膵炎用抗炎症剤:ブレンダZを使用して好中球の動きを抑制し、炎症を抑制します。

鎮痛剤:腹痛が酷い場合、適切な鎮痛剤を投与して痛みを管理します。これにより、患者の苦痛を軽減し、回復過程をサポートします。

膵炎における食事管理

食事管理:膵炎を管理するため、吐き気止め(例: マロピタント)を投与した後に低脂肪の食事を提供します。これにはロイヤルカナン低脂肪、ヒルズ i/dローファット、コンフォート、W/d、Dr’s care ストマックケアなどが含まれます。膵炎は再発しやすいため、長期的に低脂肪の食事を続けることが推奨されます。

強制給餌方法

強制給餌:食欲がなく自力で食べられない場合、ロイヤルカナンの低脂肪リキッドなどの流動食を使用して給餌します。4kgの動物には1日200mlを目安に、2時間毎に30mlずつ分けて与えます。これはエリザベスカラーやタオルを使用して行うと安全に給餌できます。また、広口のシリンジを使用すると、給餌がしやすくなります。

膵炎の投薬治療

ディアバスター:下痢を抑制する治療薬。1日2回。

プロナミド(モサプリド):消化管運動改善薬で、消化管の動きを促進し、消化を助ける効果があります。1日2回。10㎏で1錠。

カモスタット:リパーゼの抑制薬で、膵臓からの過剰な酵素放出を抑えることで、膵臓自身と周囲の組織を保護します。

  • 投与回数:bid, 用量 1/8 ;<2.5kg,  1/4; 2.5〜5kg,  1/2; 5〜10kg。

セレニア(マロピタント):吐き気を抑える薬で、膵炎に伴う吐き気や嘔吐を管理するために使用されます。吐き気がなければ休薬も可能。経口投与の場合は 2 mg/kg。1日1回。

これらの薬剤は、膵炎の症状を緩和し、動物が快適に過ごすために重要な役割を果たします。軽度の膵炎の場合は、短時間の皮下点滴と自宅でのケアで管理することが可能ですが、重症の場合には入院と静脈点滴が必要になることがあります。

慢性膵炎の管理

慢性膵炎の概要:慢性膵炎は通常、急性膵炎の再発によって引き起こされる疾患です。病状が進行すると、膵臓の線維化が進み、一度この状態になると完全な治療は困難です。しかし、適切な管理により再発や悪化を防ぐことが重要です。

膵炎 プロトコル

  • 静脈留置:IVD ×3bw ml/hr (LR 250ml+ガベキサート1V+PP1A)。5kg以上でLR 500ml+ガベキサート2V+PP2A。PPのみSC可能。
  • セレニア:0.1ml/kg SC。
  • ブレンダ:0.1ml/kg IV SC。ブレンダ1vを注射用水1mlで溶解して使用。
  • 強制給餌:低脂肪リキッド体重量。セレニアSC後1時間から開始。
  • 下痢ありの時:ディアバスター注射薬0.15ml/kg SC。
  • 腹痛重度の時:ブプレノルフィン0.1ml/kg。
  • 退院時の処方:カモスタット、セレニア、プロナミド、ディアバスターを1週間分を処方。

ブレンダについての詳細情報

  • ブレンダの特性:免疫抑制がなく、糖尿病併発に使用可能。併用禁忌がない。
  • 使用方法:SC(皮下)でも使用可能。犬では周術期に、術前30分、術後にもう一回投与することで術後膵炎を予防。
  • 用法及び用量:5日間静脈内に投与。1バイアル=犬の体重10kgの用量。20kgの場合、1回の投与で2バイアルが必要です。
  • 副作用:アレルギー反応、ムーンフェイス。特定の状況下(点眼として、ブドウ膜炎、結膜炎(ドライアイ))(SIRS、ARDS、肺炎、椎間板ヘルニアなど)での効能外使用もあり。

膵炎のリスク因子

高脂血症や高カルシウム血症、炎症性腸疾患などが慢性膵炎のリスク因子として知られています。これらの因子を明確にすることで、適切な治療方針を定めることが可能です。リパーゼの上昇は必ずしも膵炎を意味しないことがあり、腹水や低アルブミン血症の存在もリパーゼの上昇を引き起こす可能性があります。コッカースパニエルでは自己免疫性疾患の膵炎の関連も報告されています。

猫の膵炎治療と予防

猫の膵炎治療には抗生物質が必要であり、新規タンパクを用いた低アレルゲン食が推奨されます。これにより、膵炎の症状を管理し再発を防ぐことができます。猫の場合、ブレンダは、半減期が短いため、投与間隔に注意が必要です。(0.4mg/kg tid、1.2mg/kg bid)

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