免疫介在性関節炎(関節リウマチ・IMPA)について
犬の免疫介在性関節炎は、体の免疫システムが自分自身の関節を攻撃する病気で、「関節リウマチ」と「特発性免疫介在性多発性関節炎(IMPA)」の2種類があります。どちらも早期に発見し治療することが重要です。
● 症状の特徴
・前肢跛行から症状が出る。手根関節の破壊により前肢にかかる60%の体重負荷に耐えられないため。
① 関節リウマチの特徴
- 小型犬に多く、左右対称に手首や足首が腫れる。
- 進行すると関節の変形や歩行困難が起こり、排泄時の介助が必要になることもあります。
- 関節液や血液検査、X線・超音波・CT/MRIなどを使用して診断します。
診断のポイント:関節液検査では
好中球が顕著に増え、血液検査では
CRPやリウマチ因子が高値を示します。X線検査で
骨びらんが見られれば確定的です。

● 関節液検査
・正常:無色透明で粘稠性が高く、好中球10%未満
・免疫介在性関節炎:好中球が12%以上と顕著な増加、液体が混濁・有色化
感染性関節炎を除外するために細菌培養検査も行う。
特発性免疫介在性多発性関節炎(IMPA)について
IMPAは中~大型犬で多く、複数の関節が突然腫れて痛み、発熱や元気消失など全身症状が目立つことがあります。
診断のポイント:IMPAは骨の破壊(骨びらん)がなく、X線検査では関節が正常に見えます。関節液の炎症は認めますが、明確な骨破壊が見られない点がリウマチとの違いです。
免疫介在性関節炎の治療法と注意点
治療の基本は、免疫反応を抑えるためのステロイド薬(プレドニゾロン)です。
- ステロイドで効果が不十分なら、シクロスポリン、レフルノミド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を追加します。
- MMFは消化器症状、アザチオプリンは肝毒性や骨髄抑制など、副作用管理が重要です。
- 感染症が併発しやすいため、尿路感染などを事前に確認・治療しておくことが必須です。
飼い主さんが気をつけるべきポイント
治療期間は半年以上かかる場合が多く、再発や薬の継続が必要になることがあります。
- 関節の負担を減らすため運動制限が必要です。
- サポーターや装具を利用すると関節保護につながります。
- プレドニゾロンを服用しても炎症反応(CRP)が完全に下がらない場合や、貧血がある場合は特に治療が難しくなることを理解しておきましょう。
- 約14%は1年以内に薬をやめられますが、多くは長期治療が必要になると認識しておくことが重要です。
免疫介在性関節炎は長期戦になることが多いですが、正しい診断と治療、適切な生活管理によって、愛犬の生活の質(QOL)を高めていくことができます。一緒に治療を頑張りましょう。