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【外科症例報告】大腿骨骨折治癒後のプレートおよびスクリュー一部抜去

大腿骨骨折治療後のプレートおよびスクリュー一部抜去


本日は、長期間にわたり足に金属プレートが入ったままになっている患者さんにおける、固定具の一部抜去について解説します。

今日お話ししたいこと(疾患概要と目的)

過去に大腿骨の骨折治療を受け、骨折を整復し、治癒するまで骨を固定することがプレートの役割ですが、骨が繋がった後にそれを体内に残すか外すかについては、明確なリスク評価が必要です。

検査結果と「外科的適応」の判断

初診日におけるレントゲン検査および触診の結果、大腿骨の骨折はすでに完全に癒合(骨が再生し繋がること)していました。しかし、骨を固定するために6本のスクリューとプレートが長期間留置された状態が続いており、患者さんは患肢に違和感を覚え、足を挙げるなどの症状を示していました。

すでに骨の再生は完了しており、固定具としての目的は終えていること、そして後述する放置によるリスクを重く見て、外科的な抜去の適応であると判断しました。



もしこのまま様子を見たら(放置の残酷なリスク)

  • 骨と筋肉の菲薄化(ストレス・シールディング):
    骨を支えるための筋肉を使わない状態が続くと、適度な負荷(ストレス)が骨にかかりません。プレートが強固に骨を支え続けることで、本来の骨や筋肉が薄くもろくなってしまう現象が進行します。
  • 将来的な感染源とQOLの低下:
    体内に存在する巨大な異物(金属)は、将来的な免疫低下時に細菌の温床となり、難治性の骨髄炎を引き起こす感染源になるリスクを抱え続けます。また、違和感による慢性的な跛行(足を引きずること)が改善せず、歩行機能が永続的に低下する恐れがあります。

基礎疾患による麻酔リスクと当院の鎮痛プロトコル

長期間の違和感や慢性痛を抱える動物は、自律神経のバランスを崩しており、全身麻酔下での循環動態の悪化(重度な低血圧や不整脈)を引き起こすリスクが高まります。麻酔中の低血圧は、術後に取り返しのつかない急性腎不全や脳死状態を招く原因となります。

このリスクを制御するため、当院では全身麻酔の用量を極限まで減らし、切開部や骨膜周囲への「局所浸潤麻酔」を徹底して活用しています。術中は持続的な血圧測定による循環管理を徹底し、痛みによるショックや急変を防ぐための安全域を論理的に広げています。

選択した術式(治療法)とその根拠、および致死的合併症

  • 術式の選択根拠:
    本症例では、固定されている6本のスクリューのうち、「半分を抜去する」という段階的な術式を選択しました。一度にすべてのスクリューとプレートを抜去した場合、スクリューの空いた穴に応力が集中し、わずかな衝撃で「再骨折」を引き起こす危険性が極めて高いためです。残した半分のスクリューを支えとし、リハビリを行いながら自身の骨強度を取り戻す期間を設けます。同時に、膝関節の異形(変形)がないか、靭帯が切断されていないかの関節内確認を実施しました。
  • 術中の技術的注意点:
    長期間埋設されたスクリューは骨と強固に癒着しています。癒着したスクリューを力任せに回せば、大腿骨そのものが縦に割れ、取り返しのつかない医原性骨折を招くため、慎重な操作が要求されます。
  • 致死的・重篤な合併症:
    術後のスクリュー抜去孔からの再骨折、深部組織での重度感染(骨髄炎や敗血症性ショック)、および骨周辺の神経損傷による永久的な後肢麻痺の可能性があります。

術後管理と夜間監視の「リアルな限界」について

  • 早期退院の方針:
    術後入院は原則1〜3日とし、静脈点滴による厳密な循環管理が必要な期間のみとします。病院という環境は動物にとって強い精神的ストレスであり、治癒を阻害します。そのため、早期にストレスのない家庭内でのリハビリへ移行する方針を徹底しています。リハビリは継続することが大切なので、ご家庭でも無理なく実施できる内容でご案内しています。
  • 夜間監視の物理的限界:
    当院の夜間は「スタッフ不在(無人)」となります。ペットカメラを用いた遠隔監視を行い、異常検知時や追加鎮痛が必要な深夜には院長が駆けつける体制をとっています。しかし、翌日の診療に向けた仮眠時間や、自宅からの移動時間(約30分)によるタイムラグが必ず存在します。術後出血や血栓症など、数分を争う急変には物理的に即時対応しきれない限界がある事実を、包み隠さずお伝えしておきます。

当院の外科体制と紹介ポリシー(整形外科)

  • 対応可能な範囲:
    医療用ドリル設備を備えており、膝蓋骨脱臼(パテラ)の滑車溝形成術や、大腿骨頭切除術までの関節・整形外科には対応可能です。
  • 機材レンタルの制約による即応不可(重要):
    今回のようなプレート抜去やプレート固定に必要な特殊機材(専用ドライバー等)は、当院に常備しておりません。すべて専門業者から事前に機材を予約・レンタルして手術を行うため、即日や緊急での対応は不可能です。
  • 適応外・完全紹介対象:
    プレート固定が必要な複雑骨折、TPLO(脛骨骨頭水平化骨切り術)、および骨変形の矯正骨切りなどは、当院では対応せず、専門医が在籍する高度医療機関(二次診療施設)へご紹介いたします。

院長からのメッセージ

手術は、完了すればすべてが解決する美談ではありません。長期間体内に入っていた異物を除去することは、将来的な感染や機能不全のリスクを摘み取るための論理的な選択ですが、同時に再骨折や新たな合併症のリスクを背負う行為でもあります。「連携すれば必ず乗り越えられる」といった無責任な保証はできません。我々は冷徹な事実に基づき、リスクを正確に評価し、限界を共有した上で、患者さんにとっての最善を追求し続けます。


Summary / 摘要

[English] Partial Removal of Screws and Plate after Femur Fracture Repair
We discuss a case involving the partial removal of orthopedic implants (plate and screws) left in the femur after a previous fracture healed. While removing implants eliminates the risks of stress shielding and future infection, it presents severe risks of re-fracture. We removed half of the six screws to prevent stress concentration, simultaneously confirming the integrity of the knee joint and ligaments. Thorough local infiltration anesthesia and strict blood pressure monitoring were implemented to manage the risks associated with chronic pain. We prioritize early discharge for home rehabilitation due to the stress of hospitalization. Night-time monitoring relies on remote cameras and emergency on-call visits, with an inherent physical time lag. Specialized procedures requiring implants or specific drills necessitate advance equipment rentals and cannot be performed immediately.

[中文] 股骨骨折修复后钢板及螺钉的局部取出
本文探讨了在骨折愈合后,对长期滞留于股骨内的骨科植入物(钢板和螺钉)进行部分取出的病例。尽管取出异物可避免应力遮挡及未来感染的风险,但同时也伴随再次骨折的严重隐患。为避免应力集中,我们取出了6颗螺钉中的一半,并同步确认了膝关节及韧带的完整性。术中通过彻底的局部浸润麻醉及严格的血压监测来控制与慢性疼痛相关的麻醉风险。考虑到住院压力,我们主张患者尽早出院进行家庭康复。夜间监护依靠远程摄像头及院长紧急出诊,但存在物理上的时间延迟。涉及植入物或特殊电钻的专科手术需要提前租赁设备,因此无法提供即时的紧急处理。