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**「肝酵素上昇」- 何を知り、どう対処するべきか**

肝臓は、私たちの体において中心的な役割を果たす臓器の一つです。しかし、時にはこの肝臓の酵素値が正常範囲を超えて上昇することがあります。では、その原因と対処法はどのようなものでしょうか。

**1. 肝酵素上昇とは**

肝酵素上昇とは、肝臓の機能や健康状態を示す指標となる肝酵素の値が、正常範囲よりも高くなる状態を指します。これは肝臓だけでなく、他の疾患や状態からも引き起こされることがあるので注意が必要です。

**2. 肝酵素が上昇する原因**

肝酵素の上昇は、原発性の肝障害だけでなく、犬の場合クッシング症候群や甲状腺機能低下症、猫では甲状腺機能亢進症や膵炎、腸炎などの疾患や歯周病など、二次的な原因からも引き起こされることがあります。

**3. 肝酵素上昇の診断と処置**

臨床症状がない肝酵素上昇の診断において、問診と身体検査が最も重要です。食事内容、薬の摂取歴、ワクチンの接種歴などを詳しく確認することで、原因を突き止める手がかりを得ることができます。

また、特定の年齢、特に中年齢以降の症例では、内分泌疾患や肝腫瘍のリスクが高まるため、超音波検査などのスクリーニング検査を推奨されています。

**4. 精密検査の進め方**

肝酵素が長期間にわたり上昇し続ける場合、肝胆道系の詳細な検査が求められます。これにはX線検査や超音波検査、CT検査などが含まれます。必要に応じて、肝生検や外科的な治療も検討されます。

**5. 猫での対応**

猫の場合、肝酵素の半減期が短いため、早期の検査が推奨されます。特に肝リピドーシスや胆嚢の異常など、超音波検査での観察が必要とされています。

**まとめ**

肝酵素上昇の原因は様々ですが、それぞれの原因をしっかりと診断し、適切な対応をとることで、より良い治療や経過観察を進めることができます。特にペットを飼っている方は、定期的な健康診断を受けさせ、異常が見られた場合は専門家の意見を求めることが大切です。


犬と猫の肝疾患

症状
肝疾患の特徴的な症状としては、黄疸、食後肝性脳症(意識障害)、肝肥大、肝萎縮が見られます。非特異的な症状としては沈鬱、体重減少、食欲低下、嘔吐、腹水が見られます。
ただし猫の黄疸の原因は肝疾患以外に、腸管感染やタンパク質不足などもあります。

検査
まずスクリーニング検査として血液検査を行います。肝臓から排出される酵素のALT、AST、ALP、GGTに異常があれば、肝臓に関する追加検査を行います。
追加の血液検査として、BUN、Alb、Glu、TCho、TBil、アンモニア、総胆汁酸の測定や、凝固検査、尿検査を行います。
また、細胞診断、超音波検査やX線検査での画像診断を行い、詳しく診断していきます。

⚪︎ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
肝臓の異常細胞数を反映します。肝機能についてわかる訳ではありません。
抗痙攣剤やステロイド剤などの薬剤によっても上昇します。

⚪︎AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
こちらも肝機能でなく、異常細胞数を反映します。
腫瘍に対して特異的に上昇します。

⚪︎ALP(アルカリフォスファターゼ)
胆管から排出される酵素です。ステロイド剤によっても上昇します。
猫での特異性が高いです。

⚪︎GGT(グルタミントランスフォスファターゼ)
胆管肝炎で上昇します。肝リピドーシスでも微増します。
犬での特異性が高いです。

⚪︎BUN(尿素窒素)/CRE(クレアチニン)比
CREが高値でなければ、BUNは肝臓で生産されるので肝機能を評価できます。低値の場合は重度の肝障害が疑われます。

⚪︎Alb(アルブミン)
肝細胞の60%が障害されると低下します。半減期が8〜9日なので慢性肝障害には非特異的です。

⚪︎Glu(グルコース)
肝細胞の70%が障害されると低下します。その場合は予後不良でしょう。門脈シャントでも低下します。

⚪︎TCho(総コレステロール)
胆汁鬱滞で上昇します。低下した場合は肝細胞障害で予後不良です。

⚪︎TBil(総ビリルビン)
高ビリルビン血症で、溶血性貧血の場合は肝前性障害、エコーで肝臓細胞障害が認められたら肝性障害、エコーで肝外胆管障害が認められたら肝後性障害です。

⚪︎アンモニア
肝障害には非特異的ですが、上昇した場合、尿素サイクル酵素異常、門脈シャント、肝細胞異常が疑われます。

⚪︎総胆汁酸(TBA)
食前と食後の数値を測定します。
肝不全や門脈シャントで上昇しますが、数値の大小で病状が評価できるわけではありません。

⚪︎凝固検査
異常が見られた場合はビタミンK吸収不全が疑われます。

⚪︎尿中ビリルビン
肝前性、肝性、肝後性の肝疾患全てで上昇します。犬ではわずかな上昇なら正常です。

治療
肝臓の再生を促すために安静、栄養補給を行うのが基本です。抗酸化作用のあるビタミンE、SAMEやNアセチルシステイン、シリマリンという抗酸化物質のサプリメントなどで肝臓細胞の分化や成長を促します。
給餌が難しい場合には胃ろうチューブや食道チューブを設置することもあります。

犬に多い肝障害
⚪︎薬物性肝障害
若い犬に多いです。抗痙攣剤やステロイド剤によって起きることがあります。
⚪︎感染性肝障害
レプトスピラ、アデノウイルス、トキソプラズマ、その他の細菌、真菌などによって起きます。
⚪︎中毒による肝障害
ガムなどに入っているキシリトールや、衣類防虫剤に入っているパラジクロロベンゼンを過剰摂取すると起きます。少量なら問題ないのですが、ガムのボトルをひっくり返して何粒も食べていた、防虫剤の用法用量を間違えて過剰に使用していた、という場合は注意が必要です。
⚪︎銅蓄積症
テリア系やドーベルマンの遺伝病でもあります。
⚪︎慢性肝炎
中年犬、大型犬、コッカー、テリア系に多いです。
食事は高カロリー、高タンパク、ビタミンK、亜鉛を摂らせるようにします。肝性脳症を発症 している場合には、タンパク質を植物性のものにします。
⚪︎胆泥症
発症する原因は不明です。エコーで外科切除が必要か診断します。
⚪︎胆汁鬱滞、胆管閉塞
黄疸が出ます。エコーで診断でき、細菌が原因の場合もあります。胆管閉塞は外科的処置を行います。
⚪︎門脈シャント
先天性のものと、原発性のものがあります。外科的な処置が必要です。
⚪︎反応性肝障害
肝臓以外の疾患が原因で起こります。原因には膵炎、腸炎、貧血、糖尿病などがあります。
⚪︎腫瘍による肝障害
高齢の犬に多いです。

猫に多い肝障害
⚪︎肝リピドーシス
肥満の猫に多いです。
⚪︎感染性肝障害
トキソプラズマやFIPによって起きます。トキソプラズマは外出先で感染したり、生の豚肉を食べて感染します。
⚪︎胆管炎、胆管肝炎
細菌感染や胆管周囲の炎症、肝吸虫の寄生などが原因の場合もあります。また、ペルシャ猫に多いです。
⚪︎反応性肝障害
猫では甲状腺機能亢進症が原因の場合があります。
⚪︎腫瘍による肝障害
高齢の猫に多いです。