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【同意書】開腹下消化管生検

大切な家族であるわんちゃん・ねこちゃんの検査や手術を控えている飼い主様へ。
「お腹を開ける検査(開腹下消化管生検)」が必要と言われたとき、多くの不安を感じられることと思います。

「カメラ(内視鏡)じゃダメなの?」「お腹を開けるなんて可哀想」

そう思われるのは当然のことです。このページでは、なぜ内視鏡ではなく開腹手術が必要なのか、そしてどのようなリスク(合併症)があるのかについて、包み隠さず解説します。
正しい知識を持つことが、後悔のない選択への第一歩です。

1. なぜ「内視鏡」ではなく「手術」なのか

内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)は、お腹を切らないため身体への負担が少ない優れた検査です。
しかし、今回のケースで私たちが「開腹手術」をご提案するには、明確な理由があります。

▼ 内視鏡検査(カメラ)の特徴

腸の「内側の表面(粘膜)」しか採ることができません。
もし病気が腸の壁の奥深く(筋肉の層など)に隠れている場合、表面だけを検査しても「異常なし」と診断されてしまい、病気を見逃す(誤診する)可能性があります。

▼ 開腹手術(全層生検)の特徴

お腹を開けて、腸の壁を「外側から内側まですべて(全層)」切り取って検査します。
これにより、奥深くに潜んでいる腫瘍や、特殊な腸炎などを確実に見つけ出し、診断を確定させることができます。

つまり、「負担は少ないが、病気を見逃すかもしれない検査(内視鏡)」よりも、リスクをとってでも「確実に病気の正体を突き止める検査(手術)」が必要な状況にある、とご判断ください。

2. 手術を行わず、様子を見た場合のリスク

では、怖いからといって手術をせず、お薬だけで様子を見続けるとどうなるのでしょうか。
診断がつかないままの治療は、病状の悪化を許し、以下のような「緩やか、かつ確実な命の危険」を招きます。

  • 進行性の飢餓・衰弱(餓死に近い状態)
    腸が機能せず栄養が吸収されません。身体は自分の筋肉や脂肪を分解し始め、最後は呼吸をする筋力さえもなくなり、衰弱してしまいます。
  • 呼吸困難(溺れるような苦しみ)
    血液中のタンパク質が低下し、水分がお腹や胸に漏れ出します(腹水・胸水)。肺が圧迫され、陸上にいながら溺れているような呼吸困難に陥ります。
  • 消化管穿孔(せんこう)による破裂
    最も恐ろしいケースです。病変が進行して腸の壁を突き破ってしまうことです。この時点で手術をしようとしても、既に体力が限界で麻酔に耐えられず、手出しができないまま見送らざるを得なくなります。

3. 手術に伴う重大なリスク

上記のような最悪の事態を避けるために手術を行いますが、消化管の手術は「便や細菌の通り道にメスを入れる」ため、感染リスクが高いのが特徴です。
以下の合併症は、命に関わる可能性があるため、包み隠さずご説明します。

最大のリスク:縫合不全(ふごうふぜん)

腸を切り取った後、糸で縫合しますが、術後数日経ってからその傷口が開いてしまうことです。
栄養状態の悪さや炎症で組織が脆くなっている場合に起こりやすく、以下のような「死への連鎖」を引き起こす危険があります。

  • ▼ STEP 1:汚染物質の漏れ
    開いた穴から、強力な消化液や、細菌を含んだ便がお腹の中へ漏れ出し続けます。
  • ▼ STEP 2:劇症型腹膜炎
    お腹全体が細菌と消化液で炎症を起こし、激痛や高熱が生じます。
  • ▼ STEP 3:敗血症(はいけっしょう)
    細菌や毒素が血管に入り込み、全身を巡ります。身体が暴走状態(サイトカインストーム)になり、自分の正常な細胞まで攻撃し始めます。
  • ▼ STEP 4:多臓器不全
    心臓・肺・腎臓などの機能が次々と停止します。この段階になると、緊急再手術を行っても回復は極めて困難で、数時間〜数日以内に命を落とす可能性があります。

4. その他のリスクについて

  • DIC(播種性血管内凝固症候群)
    身体の「血を固める仕組み」が壊れる状態です。全身の血管で小さな血栓ができると同時に、必要な場所で血が止まらなくなり、制御不能な出血により死に至る病態です。
  • 血栓塞栓症
    血液がドロドロになりやすい状態の場合、大きな血栓が血管に詰まることがあります。肺や足の血管に詰まると、突然死の原因となります。

それでも、手術を推奨する理由

ここまで、非常に怖い可能性についてお話ししました。
「そんなに危険なら手術したくない」と思われるのは当然のことです。

しかし、内視鏡では診断がつかない可能性があり、かつ手術を行わずに様子を見ることも、確実に命を縮める選択となってしまうのが現実です。

私たちは、リスクを十分に認識し、万全の対策を講じた上で、
「原因を突き止め、完治あるいは症状改善の可能性」に懸ける価値がある
と判断し、この手術をご提案しています。

不安な点、分からない点は、どんなに些細なことでも構いません。
納得できるまで、何度でも私たち獣医師にご質問ください。一緒に大切なご家族のための最善の道を考えましょう。