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【外科症例報告】繰り返す尿道閉塞からの解放。会陰尿道瘻造瘻術の選択と周術期管理

今日は、重度の排尿障害と尿道閉塞に対し「会陰尿道瘻造瘻術(えいんにょうどうろうぞうせつじゅつ)」を実施した、14歳の去勢雄の猫ちゃんの症例についてお話しします。

過去に急性脊髄梗塞を発症し、下半身麻痺に伴い自力での排尿が困難となりました。ご自宅での毎日のカテーテル導尿で命を繋いできましたが、次第に尿道の炎症や狭窄が進行し、物理的にカテーテルが挿入不可能な状態に陥りました。内科的・保存的治療の限界を迎え、外科的介入に踏み切った経緯と、当院の周術期管理について解説します。


※実際の外科症例に基づく医療記録です。

検査の結果と「外科的適応」の判断

  • 来院時のエコー検査では、尿が排出できず膀胱がパンパンに拡張している状態でした。
  • 無理にカテーテルを通そうとすれば尿道損傷の危険があり、かといって膀胱穿刺(針を刺して尿を抜く処置)だけで維持し続けることは現実的ではありません。
  • カテーテルが通過しない完全な尿道閉塞は、待ったなしの「絶対的な外科適応」です。

もしこのまま様子を見たら(放置した場合の残酷なリスク)

  • 尿道が詰まった状態を「少し様子を見よう」と放置した場合、尿として排出されるべき老廃物が体内に蓄積し、急性腎不全(尿毒症)を引き起こします。
  • 早ければ2〜3日以内に全身状態が急激に悪化し、激しい嘔吐、痙攣、そして耐え難い苦痛の末に命を落とします。
  • また、極限まで膨れ上がった膀胱が破裂する危険性もあります。尿道閉塞において「手術をしない=死」を意味する残酷な現実があります。

選択した術式とその根拠(周術期の鎮痛管理を含む)

  • 会陰尿道瘻造瘻術の選択:雄猫特有の細く長い尿道(陰茎部)を切除し、より太い骨盤部の尿道を会陰部(おしりの下付近)に引き出して縫い付け、新しい尿の出口を作る手術です。これにより、尿道が物理的に太く短くなり、閉塞のリスクを劇的に下げることができます。
  • 麻酔・ペインコントロールについて:外科医として、痛みの管理には一切妥協しません。当院では、α2作動薬(メデトミジン)や解離性麻酔薬(ケタミン)などを組み合わせたマルチモーダル鎮痛を採用しています。
  • これに局所麻酔ブロック(仙尾部硬膜外麻酔など)を併用することで、術中の痛みを極限まで抑え込み、動物の身体的負担を最小限に留めるプロトコルを組んでいます。

術後管理と夜間監視について

  • 早期退院の方針:術後の入院は原則1〜3日とし、静脈点滴が必要な期間のみとしています。動物にとって病院のケージは決して安らげる場所ではありません。精神的なストレスを長引かせないためにも、医療管理の目処が立ち次第、早期に住み慣れた家庭でのリハビリへ移行することが回復への近道だと考えています。
  • 夜間監視とペインコントロール:夜間の病院は、スタッフ不在(無人)となります。これは包み隠さずお伝えしている事実です。しかし、動物をただ放置するわけではありません。
  • 院内には高画質のペットカメラを設置し、遠隔監視を徹底しています。万が一、術後の疼痛で眠れていない、あるいは異常な挙動を示していると検知した場合は、たとえ深夜であっても院長である私が自ら病院へ赴き、追加の鎮痛剤投与を行います。動物の「痛み」を絶対に見過ごさない、それが当院の夜間管理の覚悟です。

起こり得る合併症と、術後の見通し

  • 本術式において最も注意すべき合併症は、術後狭窄(傷が治る過程で再び出口が狭くなること)と、細菌感染です。尿道が太く短くなる分、外部からの細菌が膀胱や腎臓に侵入しやすくなります。
  • だからこそ、術後の「食事管理」が命綱となります。エビデンスの乏しい市販の「下部尿路ケア用おやつ」などを安易に与えて結石ができれば、せっかく広げた尿道が再び詰まり、今度はお腹に直接尿の出口を作る「腹壁尿道瘻」という過酷な状態を余儀なくされます。厳格な処方食の維持と、定期的な尿検査が術後の必須条件となります。

当院の外科体制と高度連携について

  • 当院では、本件のような後腹膜より腹側の一般軟部外科や体表腫瘍切除(皮弁含む)など、広く対応可能な体制を整えています。
  • しかし、自院の限界も正しく把握しています。尿管結石の摘出や副腎摘出などの最深部アプローチ、あるいは輸血準備がないため術前に重度貧血が想定される症例に関しては、命を最優先とし、迷わず二次施設(高度医療センター等)へ速やかに紹介するポリシーを貫いています。

院長からのメッセージ

  • 外科手術は魔法ではありません。愛する家族の体にメスを入れる決断は、ご家族にとって身を裂かれるような思いだと思います。
  • しかし、放置すれば確実に苦しみながら命を落とす残酷な現実が迫った時、我々獣医師は論理的な根拠に基づき、最善の術式と徹底したペインコントロールでその命を繋ぎにいきます。
  • 手術を乗り越えた後も、食事管理や感染対策など、ご家族の並々ならぬご協力が必要です。これからも、動物たちが一つでも多くの穏やかな朝を迎えられるよう、私たちは覚悟を持って外科臨床に向き合い続けます。
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English Summary

A 14-year-old male cat suffering from recurrent urethral obstruction underwent a perineal urethrostomy. He had previously suffered from acute spinal cord infarction, requiring daily catheterization. However, due to progressive urethral inflammation, catheterization became physically impossible.

Without surgery, complete urethral obstruction leads to fatal acute renal failure (uremia) or bladder rupture within days. To prevent this, a perineal urethrostomy was performed to create a wider, shorter urethral opening.

We implement a strict multimodal analgesia protocol, including local anesthetic blocks, to minimize surgical pain. Postoperative hospitalization is kept short (1-3 days) to reduce stress, supported by intensive remote monitoring via pet cameras at night. If pain is detected, our director personally intervenes immediately, even late at night. Postoperative success relies heavily on strict dietary management to prevent stone formation and bacterial infections.

中文摘要

我们为一只患有反复尿道梗阻的14岁雄性猫咪实施了会阴尿道造口术。该患者曾因急性脊髓梗死导致下半身瘫痪,一直依赖导尿管排尿。但随着尿道炎症的加重,导尿管已无法插入。

如果不进行手术,完全的尿道堵塞将在几天内导致致命的急性肾衰竭(尿毒症)或膀胱破裂。为了挽救生命,我们通过手术为其建立了一个更宽、更短的新尿道出口。

我们严格采用多模式镇痛和局部麻醉阻滞,以最大限度地减少手术疼痛。术后住院时间原则上缩短至1-3天以减少动物的心理压力,夜间通过宠物摄像头进行严密的远程监控。一旦发现动物有疼痛迹象,院长即使在深夜也会立即进行镇痛干预。术后必须严格控制饮食,以防止新的结石形成和细菌感染。