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【獣医師解説】治らない猫の膀胱炎。実際の症例から読み解く「本当の原因」と「現実的な治療戦略」
「また何度もトイレに行っている」「血尿が出た」「抗生剤を飲ませても、やめるとすぐに再発してしまう」……。
猫ちゃんの繰り返すおしっこのトラブルは、見ているご家族にとっても本当に辛く、先が見えない不安に駆られることと思います。
「とりあえず、いつものお薬(抗生剤)を出しておきますね」
もし、そんな治療を繰り返しているのなら、少し立ち止まる必要があるかもしれません。
今回は、当院で実際に治療を行っているある猫ちゃんのケースを通じて、治りにくい膀胱炎に対して獣医師がどのような考えに基づいて診断を下し、治療の選択をしているのかを、専門的な知見も交えながら詳しく解説します。
プロフィールとこれまでの経過
今回の来院時の状況
「数日前に血尿が出て抗生剤を飲ませたら血尿は止まったが、今日からまたおしっこが少ししか出ず、何度もトイレに行く」という主訴でご来院されました。
このように何度も再発する子を診る際、私たちは決して「とりあえず薬を変えてみよう」とは考えません。以下のステップで慎重に推論を進めます。

獣医学の専門書のデータは、多くの飼い主様にとって驚くべき事実を示しています。
FICは、膀胱そのものの病気というより、ストレスや生活環境(外要因)と、猫自身の神経系や内分泌系の乱れ(内要因)が複雑に絡み合って起きる「痛みを伴う炎症」です。つまり、細菌がいない以上、抗生剤は全く効きません。ここが、治らない膀胱炎の最大の落とし穴です。
FICと診断された子に対する次の一手は、「痛みを和らげること」と「尿を薄めること」です。ご家族からは「痛み止めや他のお薬を出してほしい」とご要望をいただくことも多いのですが、獣医師が投薬に慎重になるのには、「猫ならではの代謝の仕組み(薬への異常な弱さ)」という極めて重要な理由があります。
猫は人間や犬とは異なり、肝臓での薬の解毒機能(グルクロン酸抱合など)が非常に特殊で、一部の薬に対して重篤な副作用や致死的な毒性を示します。専門書に記載されている「猫で禁忌(または要注意)となる代表的な薬剤」をリストアップします。人間の風邪薬などを安易に与えることがいかに危険か、ぜひ知っておいてください。
🚫 【絶対的禁忌】猫に絶対に使用してはいけない薬
これらは命に関わるため、いかなる場合も使用されません。
⚠️ 【相対的禁忌・要注意】副作用が強く、慎重な減量や代替が必要な薬
以下の薬も、強い副作用が出るため極力使用を避けるか、投与間隔を延ばしたり減量したりして厳重な管理下で扱われます。
このように、猫にお薬を使うこと自体が常に綱渡りです。
今回の症例でも、FICの痛み止めとして消炎鎮痛剤(NSAIDs)の処方を検討しましたが、NSAIDsには「腎機能低下や胃炎のリスク」があります。エコー検査で「片側の腎臓の萎縮」が見つかっていたこの子にとって、投薬は通常よりもリスクが高い状態でした。そのため、ご家族にしっかりとリスクをご説明し、納得いただいた上で、どうしても必要な時だけ慎重に使用する方針をとりました。
薬のリスクが高い猫だからこそ、専門書でも推奨されており当院でも最重要視しているのが「MEMO(多面的な環境改善)」です。ご自宅で以下の生活環境を見直すことが、FIC治療の根本となります。
特発性膀胱炎(FIC)は、「いかに再発をコントロールし、上手く付き合っていくか」が目標になります。もし再発のサインが出たら、すぐには来院せず、まずはご自宅で1〜2日間積極的にお水を飲ませてみてください。それでもダメなら来院する、というスタンスが理想的です。
今回は特発性膀胱炎(FIC)を中心に解説しましたが、猫ちゃんの排尿トラブルには、他にも命に関わる重要な疾患が隠れていることがあります。専門文献や当院の治療方針をもとに、代表的な疾患とそのアプローチをご紹介します。
これらの場合、飼い主様による「圧迫排尿」の習得や、尿道カテーテルの管理、膀胱の収縮を助けるお薬による長期的な治療が必要になります。
「治らない膀胱炎」に悩まれている方は、お家の環境に改善の余地はないかを見直しつつ、人間のお薬を絶対に与えないこと、そしてしっかりとした検査とリスク説明をしてくれるかかりつけ医と二人三脚で、愛猫の快適な毎日を守っていきましょう。
[English]
Recurrent urinary issues in cats, such as frequent urination or blood in the urine, are often misdiagnosed as bacterial infections. However, research shows that over 50% of these cases are actually Feline Idiopathic Cystitis (FIC), an inflammation primarily triggered by stress and environmental factors, meaning antibiotics are entirely ineffective. Furthermore, veterinarians must be extremely cautious when prescribing medications to cats due to their unique metabolism; common human drugs like acetaminophen are strictly contraindicated and can be fatal. The most effective and safe treatment for FIC is Multimodal Environmental Modification (MEMO), which focuses on increasing water intake, optimizing litter box conditions, and reducing stress. In life-threatening emergencies like urethral obstruction (commonly seen in male cats), immediate veterinary intervention is required. If catheterization fails, life-saving surgical procedures such as perineal urethrostomy may be necessary.
[中文]
猫咪反复出现的排尿问题(如尿频或血尿)往往被误诊为细菌感染。然而,数据显示超过50%的病例实际上是猫自发性膀胱炎(FIC)。这是一种主要由压力和环境因素引发的炎症,这意味着抗生素对此完全无效。此外,由于猫咪独特的代谢系统,兽医在开具药物时必须极其谨慎;常见的绝大部分人类药物(如对乙酰氨基酚)属于绝对禁忌,甚至可能致命。治疗FIC最安全有效的方法是多方面环境改善(MEMO),主要包括增加饮水量、优化猫砂盆环境以及减少压力源。对于尿道阻塞(常见于公猫)等危及生命的紧急情况,必须立即进行兽医干预。如果导尿失败,可能需要进行会阴尿道造口术等挽救生命的外科手术。