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【獣医師解説】避妊手術、なぜ「卵巣だけ」取るの?医学的根拠と安全へのこだわり

避妊手術(不妊手術)は、多くの動物病院で行われている一般的な手術ですが、実は「全身麻酔」「開腹」「太い血管の処理」を伴う、外科の基本にして奥義が詰まった非常に重要な手術です。

「どこで手術しても同じ」と思われがちですが、見えないお腹の中でどのような処置が行われているかによって、数年後の健康状態や、万が一のトラブルのリスクは大きく変わります。

当院では、医学的な安全性と動物への負担軽減を熟考した結果、原則として「卵巣摘出(OVE)」を選択しています。

🎀 当院が「卵巣摘出」を選ぶ3つの理由


  • 尿管損傷のリスクが高い「危険地帯」を触らない
  • 合併症の原因となる「子宮断端」を作らない
  • 卵巣を確実に取ることで病気予防効果は同じ

1. 尿管を守るための「解剖学的アプローチ」

避妊手術で最も怖い事故の一つが、おしっこを運ぶ管である「尿管」を誤って傷つけてしまうことです。

解剖学的に、膀胱へ向かう「尿管」と子宮へ血液を送る「子宮動脈」は、骨盤の奥深く(膀胱の背側)で交差しています。これをCross-over(交差)と呼びます。

  • リスクの正体:
    子宮を全て取ろうとして引っ張り出すと、繋がっている尿管も一緒に引っ張られてしまい(フック効果)、血管を縛る位置に危険なほど近づいてしまいます。特に猫ちゃんはこの距離が非常に近いため、リスクが高まります。


当院が選ぶ「卵巣摘出」なら、この尿管と血管が複雑に絡み合う危険地帯を触る必要がありません。「リスクの高い場所は触らない」ことが、尿管損傷を100%防ぐための最大の予防策なのです。

さらに、以下の確認作業も怠りません。

  • 視認(Visualize):血管処理前に背側の脂肪をかき分け、尿管を目視確認します。
  • ドロップ(Drop):組織を持ち上げた際、尿管が含まれていないかピンセットで落とし、安全圏にあることを確認します。

2. 最新機器と素材で「異物」を残さない

かつての獣医療では、手術に「絹糸(シルク)」が使われていましたが、これが体内で異物反応を起こし、数年後に「縫合糸反応性肉芽腫」というしこりや癒着を引き起こすケースがありました。

✨ シーリングデバイス(血管閉鎖システム)の導入


当院では、最もトラブルが起きやすい卵巣動静脈の処理に、「シーリングデバイス」を使用しています。

従来は糸で縛っていた太い血管を、特殊な電気エネルギーで瞬時に一体化(シール)させて止血します。

  • 体内に糸を残さない(異物ゼロ)
  • 確実な止血
  • 手術時間の短縮(動物への負担減)

また、腹壁などどうしても糸が必要な箇所には、必ず「PDS」などの合成吸収糸を使用します。これらは数ヶ月で水のように溶けて吸収されるため、異物が一生残ることはありません。

3. 「1ミリも残さない」徹底した技術

「卵巣だけ取るなら簡単なんでしょ?」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。卵巣組織が少しでも残ると(卵巣遺残)、再び発情が来て再手術になってしまいます。

当院では「遺残ゼロ・出血ゼロ」のために、以下のプロトコルを徹底しています。

  • ● 1cmルール
    卵巣を取り残さないよう、卵巣の実質から必ず1cm以上離れた位置で血管を処理します。
  • ● 貫通結紮(かんつうけっさつ)
    太い血管や組織を縛る際は、ただ糸を巻くだけでなく、針を組織に通して固定します。これにより、糸がツルッと抜ける(滑脱する)事故を防ぎます。
  • ● 4分画探索法
    万が一の出血がないか、お腹の中を4つのエリア(左右の腎臓周り、膀胱周り、腸周り)に分けて、順番に確実にチェックしてから手術を終えます。

【専門詳細】万が一の出血時のプロトコル

手術において最も恐ろしい「予期せぬ出血」に備え、当院では高度な外科解剖学的アプローチを定めています。

🚑 右側からの出血(Duodenal Maneuver)
十二指腸を左側へ大きく寄せることで、術野を展開し、右側の出血点を安全に露出させます。

🚑 左側からの出血(Colonic Maneuver)
結腸を右側へ寄せることで、左側の出血点を露出させます。

これらはパニックにならず冷静に対処するための必須の手技であり、常にシミュレーションを行っています。


見えないお腹の中だからこそ、妥協のない知識と技術で。
大切なご家族の手術は、解剖学的根拠に基づいた当院にお任せください。

English Summary: Our Safety Protocols

Why We Choose Ovariectomy (OVE) & Vessel Sealing

  • Avoiding Ureteral Injury: By choosing OVE, we avoid the risky “cross-over” area where the ureter and uterine artery intersect. We also visualize and “drop” the ureter before any ligation.
  • No Foreign Bodies: We use a vessel sealing device for major vessels to avoid leaving sutures. For other areas, we strictly use absorbable sutures (e.g., PDS) to prevent granulomas.
  • Emergency Readiness: Our team is trained in advanced maneuvers (Duodenal/Colonic Maneuvers) to safely manage any unexpected hemorrhage.

中文摘要:我们的安全方案

为什么我们选择卵巢摘除术 (OVE) 和 血管闭合系统

  • 避免输尿管损伤: 选择OVE可以避开输尿管和子宫动脉交叉的高危区域。我们在结扎前会目视确认并将输尿管分离。
  • 无异物残留: 我们使用血管闭合系统(Sealing Device)处理主要血管,不留缝线。其他部位严格使用可吸收缝线(如PDS)以防止肉芽肿。
  • 紧急应对: 我们的团队熟练掌握高级外科急救方案(如十二指肠/结肠游离术),能够安全应对任何突发出血。