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【症例報告】繰り返す猫の尿道閉塞に対する「会陰尿道瘻造設術」の選択と周術期管理

【症例ハイライト】
慢性的な腎臓病と結石の既往歴があり、重度の尿道閉塞を引き起こした猫に対する外科的介入(会陰尿道瘻造設術)と、当院の徹底した周術期ペインコントロール、および夜間監視体制についての論理的な解説です。

今日お話ししたいこと

今回は、慢性的な腎臓病とストルバイト結石の既往歴があり、尿道閉塞を繰り返していたオスの猫ちゃんの外科症例についてお話しします。

数ヶ月前よりおしっこの出が悪い症状が見られ、食事療法やサプリメント、内服薬による内科的治療を継続していましたが、重度の尿道閉塞を引き起こしました。外科医として、いかにしてこの命の危機を脱し、術後の痛みを管理したか、論理的な見地から解説いたします。

検査の結果と「外科的適応」の判断

来院時の状況と検査結果から、直ちに外科的介入が必要であると判断しました。

  • 全身状態の悪化:食欲や元気が完全に消失し、胃液を嘔吐している状態でした。
  • 完全な尿道閉塞:トイレに行っても尿が全く出ておらず、触診で膀胱が硬く大きく膨れ上がっていることが確認されました。カテーテルによる導尿を試みましたが、尿道内で物理的な閉塞が起きており開通させることができませんでした。
  • 重篤な内科的数値:検査の結果、尿が排出されないことによる「重度の腎後性腎不全」に陥っており、体温も35.0℃まで極端に低下していました。

緊急避難的に膀胱に直接針を刺す「膀胱穿刺」を複数回行い、尿を抜去して減圧を図りましたが、根本的な解決には至らないため、直ちに手術が必要と判断しました。

もしこのまま様子を見たら(放置した場合のリスク)

「少し様子を見よう」という選択は、この疾患においては「死」へのカウントダウンを意味します。

  • 尿道が詰まり尿が出なくなると、本来体外に排出されるべき老廃物や毒素が血液中に溢れ返り、腎臓の組織が不可逆的(二度と元に戻らない)なダメージを受けます。
  • 血液中のカリウム濃度が異常に高まることで致死的な不整脈を引き起こします。
  • 最悪の場合、パンパンに膨れ上がった膀胱が破裂し、数日以内に極度の苦痛を伴いながら命を落とす非常に残酷な結果を招きます。

選択した術式とその根拠(周術期の鎮痛管理)

今回選択した術式は「会陰尿道瘻造設術(えいんにょうどうろうぞうせつじゅつ)」です。

  • オスの猫の尿道は先端(陰茎部)に向かって非常に細くなっており、ここで結石や炎症性の産物が詰まります。
  • 手術では、閉塞の原因となっている部分を切除し、骨盤側のより太い尿道を引っ張り出して皮膚と縫合し、新たな尿の出口(瘻孔)を作成します。術中の所見でも、尿道粘膜は激しく爛れ、炎症の跡が確認されました。

【鎮痛プロトコルについて】

重度の腎不全状態での手術は非常にハイリスクです。そのため、当院では術中・術後の痛みを最小限にするため、非ステロイド性消炎鎮痛剤や適切な抗生剤を組み合わせ、動物が苦痛を感じないよう徹底したペインコントロールを実施しています。

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術後管理と夜間監視について(当院のリアルな体制)

  • 早期退院の方針:当院では、術後の入院は原則1〜3日間の静脈点滴が必要な期間のみとしています。動物にとって病院のケージは強い精神的ストレスとなります。早期に住み慣れた家庭環境へ戻すことが、治癒力を高める最善の策であると論理的に考えているからです。
  • 夜間監視体制:包み隠さずお伝えしますが、当院の夜間はスタッフ不在(無人)となります。しかし、入院中の動物を放置することは決してありません。高画質のペットカメラによる遠隔監視を徹底しており、深夜帯であっても「痛みのサイン(鳴き続ける、姿勢がおかしい、眠れていないなど)」を検知した場合は、院長である私が深夜であっても病院へ駆けつけ、直ちに追加の鎮痛剤投与を行います。動物の痛みを絶対に見過ごさないことが、当院の術後管理の絶対的なルールです。

起こり得る合併症と、術後の見通し

この手術によって「尿が詰まる」という直接的な命の危機は大幅に回避されます。しかし、以下のリスクと合併症を隠さずにお伝えします。

  • 細菌性膀胱炎のリスク:尿道が太く短くなり、かつ肛門に近くなるため、術後は細菌感染を起こしやすくなります。
  • 新尿道口の狭窄:縫合部が癒着して再び狭くなることがあり、その場合は再手術が必要になる可能性があります。
  • 持病の継続治療:この患者さんはもともと慢性腎臓病を抱えています。手術はあくまで「尿の通り道」を作るものであり、腎臓そのものが治ったわけではありません。今後も内科的な腎臓のケアは生涯継続が必要です。

当院の外科体制と高度連携について(適応と限界)

当院では、皆様の動物の命を第一に考え、自院で行うべき手術と、二次診療施設へ紹介すべき手術の境界を明確にしています。

  • 【軟部・腫瘍外科】後腹膜より腹側の一般軟部外科、および体表の腫瘍(皮弁形成を含む)は広く対応可能です。また、肝臓腫瘍は主要血管を巻き込まない辺縁切除まで適応としています。
  • 【適応外・完全紹介対象】今回のような下部尿路ではなく、腎臓に近い尿管結石の摘出や、副腎摘出などの最深部へのアプローチ、また術前に重度の貧血が想定され輸血の準備が必要な症例は、当院では執刀しません。命を最優先とし、設備が整った専門の二次施設へ速やかにご紹介いたします。

院長からのメッセージ

外科手術は魔法ではありません。メスを入れる以上、必ずリスクが伴います。しかし、「今、手術をしなければ確実に命を落とす」という状況において、感情論を排し、冷静なデータと論理に基づいて決断を下すことが我々獣医師の責任です。当院は、動物の痛みと命に真正面から向き合い、飼い主様にとって最も誠実な医療を提供し続けます。


English Summary

This post discusses a surgical case of a male cat suffering from recurrent urethral obstruction due to chronic kidney disease and struvite stones. To save the patient from life-threatening post-renal failure, a perineal urethrostomy was performed. We explain our strict pain management protocols, our policy of early discharge (1-3 days) to minimize stress, and our 24/7 remote monitoring system where the director personally responds to any signs of pain at night. We also clarify our surgical capabilities and referral policies to secondary facilities, emphasizing our commitment to honest and logical veterinary care.

中文总结 (Chinese Summary)

本文讨论了一只有慢性肾病和鸟粪石病史的公猫因反复发生尿道阻塞而接受手术的病例。为了挽救患猫免于致命的肾后性肾衰竭,我们实施了会阴尿道造口术。文章详细解释了我们严格的镇痛管理方案、为减少动物精神压力而采取的早期出院(1-3天)政策,以及24小时远程监控系统(如果在夜间发现动物有疼痛迹象,院长会亲自赶赴医院处理)。我们还明确了本院的外科适应症及向二级医院转诊的原则,强调了我们致力于提供诚实且符合逻辑的兽医诊疗服务。