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【症例紹介】「数日の様子見」が招いた組織の壊死…猫の尿閉と「腹壁尿道瘻」手術について

猫ちゃんと暮らす中で、トイレの回数や滞在時間をどれくらい意識されていますか?

「おしっこが出にくそうにしているけれど、もう少し様子を見ようかな…」

もしそう思ったことがあるなら、ぜひこの記事を読んでいただきたいのです。今回は、数日の「様子見」が思わぬ重症化を招いてしまった猫ちゃんの事例をご紹介します。

排尿トラブルは、猫ちゃんにとって一刻を争う緊急事態です。このお話が、大切な家族を守るきっかけになれば幸いです。


「様子見」が招いた組織の壊死

【今回の患者様】

尿が出ない状態(尿閉)に気づいてから、1週間以上が経過して来院された猫ちゃんです。

飼い主様のお話では、来院の3〜4日前から食欲がなくなり、まったくご飯を食べられていない状態でした。

診察の結果、事態は私たちが想像する以上に深刻でした。

尿道が完全に詰まっており(完全閉塞)、おしっこが出せない状態が長く続いていました。さらに、時間が経過しすぎていたため、陰茎(おちんちん)の先端が変色し、「壊死(組織が死んでしまうこと)」を起こしていたのです。

「あと少し早く来てくれていれば…」

悔やまれる状況でしたが、今はとにかく命を救うことが最優先です。

緊急手術:「腹壁尿道瘻」という選択

通常、尿道が詰まった場合はカテーテルを通したり、お尻のあたり(会陰部)で尿道を広げる処置を行います。しかし、今回は陰茎の壊死が進んでおり、通常のルートでおしっこを出せるようにすることが困難でした。

そこで、緊急で「腹壁尿道瘻(ふくへきにょうどうろう)」という手術を行いました。これは、お腹の皮膚に新しい尿の出口(排尿口)を作る手術です。

手術は無事に成功。術後は、心配されていた腎臓の数値(腎不全の指標)も改善し、自分でご飯を食べ、自力でおしっこができるまで回復しました。

手術は「ゴール」ではなく「スタート」

命は助かりましたが、これで「完治して終わり」ではありません。この手術には、生涯付き合っていかなければならないリスクがあります。

新しく作った尿の出口は、構造上、外から細菌が入りやすくなります。そのため、今後は以下の感染症リスクが高まります。

  • 細菌性膀胱炎
    膀胱に菌が入って炎症が起きる病気
  • 腎盂腎炎(じんうじんえん)
    菌がさらに奥へ進み、腎臓に感染してしまう怖い病気

せっかく助かった命を長く守り続けるためには、たとえ元気そうに見えても、定期的な尿検査と腎臓の検診が欠かせません。

飼い主様へ大切なお願い

猫ちゃんは、痛みをギリギリまで隠して我慢する健気な動物です。
もし、以下のようなサインが見られたら、数日様子を見るのではなく、「その日のうちに」動物病院へご相談ください。

  • トイレに何度も行く
  • トイレでうずくまって出てこない
  • おしっこが少ししか出ない、または全く出ない
  • 陰部を気にして舐めている
  • 急に食欲が落ちた

今回の事例のように、「もう少し様子を見よう」という数日の迷いが、組織の壊死や、命に関わる腎不全につながることがあります。

「おかしいな?」と思ったら、迷わず病院へ。

その判断と早期発見が、大切な家族の未来を変えます。


Summary for International Readers

🇺🇸 English Summary
This post details a severe case of feline urinary obstruction where a one-week delay led to penile necrosis, necessitating an emergency “Abdominal Urethrostomy”. We urge owners to seek immediate vet care if their cat strains to urinate. Post-surgery, life-long monitoring for bacterial cystitis and kidney infection (pyelonephritis) is essential.

🇨🇳 中文摘要
本文介绍了一例因拖延一周导致阴茎坏死的严重猫尿闭病例,最终实施了紧急“腹壁尿道造口术”。我们呼吁主人一旦发现猫咪排尿困难应立即就医。术后猫咪面临细菌性膀胱炎和肾盂肾炎的风险,因此终身定期的尿检和肾脏检查至关重要。