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【症例紹介】パテラ手術後の「足のしこり」。インプラント(骨釘)によるトラブルと、当院が目指す手術のカタチ

こんにちは。今回は、他院様にて膝蓋骨脱臼(パテラ)の手術を受けた後に発生したトラブルと、そのリカバリー手術、そしてそこから考える「術式の選択」についてお話ししたいと思います。

手術後の合併症や、再手術についてご不安な方の参考になれば幸いです。

今回の症例紹介


  • 犬種・年齢:トイプードル(2歳・男の子)
  • 主訴:他院でのパテラ手術後、足にしこりができ、皮膚に穴が開いている。
  • 診断結果:インプラント(骨釘)に対する反応性の炎症性肉芽腫

1. 足にできた「しこり」の正体とは?

「手術をした場所から、何かお肉のようなものが飛び出している」
そんなご相談を受けて診察を始めました。

診察してみると、確かに右足のすねの骨(脛骨)にある手術痕付近に、1〜2cmほどのしこり(腫瘍状の隆起)が確認できました。皮膚の一部には穴(瘻管)が開き、炎症を起こしている状態でした。

「手術後にできたしこり」と聞くと、悪い腫瘍(ガン)ではないかと心配される飼い主様も多いですが、病理組織検査の結果、今回の正体は「炎症性肉芽組織」であることが分かりました。

  • 炎症性肉芽組織とは?
  • これは悪性の腫瘍ではなく、以前の手術で骨を固定するために入れた「ピン(インプラント)」や「縫合糸」に対して体が過剰に反応し、防御反応として組織が盛り上がってしまったものです。

2. 治療:原因を取り除く手術

悪いものではないとはいえ、このままにしておくと炎症が続き、ワンちゃん自身も気にして患部を舐め壊してしまいます。そこで、根本的な原因を取り除くための外科処置を行いました。

  • 原因となっているピンの抜去
  • 形成されてしまった肉芽腫(しこり)の切除

手術は無事に成功しました。
術後は足の腫れも引き、歩き方にも問題はありません。これでもう、痛い思いや違和感を感じることなく過ごせるようになります。

3. 獣医師としての想い:体に優しい手術を目指して

ここからは、少し専門的な「手術の方法」についてのお話です。

パテラ(膝蓋骨脱臼)の手術にはいくつかの方法があります。その中でも、今回のワンちゃんが以前受けていた「脛骨粗面転移術(TTT)」は、非常に一般的で効果の高い術式です。

これは、変形してしまった骨の位置をずらしてピンで固定し、筋肉のラインを真っ直ぐに整える方法です。多くの場合は問題なく経過し、元気に歩けるようになります。

しかし、今回のように「体内に残ったピン(異物)」が刺激となり、数年後にしこりを作ったり、トラブルの原因になったりすることが稀にあるのも事実です。

こうした症例に直面するたび、私は外科医として強く思うことがあります。

「可能な限り、大腿骨滑車溝形成だけで治してあげたい」

大腿骨滑車溝形成(だいたいこつかっしゃこうけいせい)とは、お皿(パテラ)が収まる溝を深く掘り直してあげる手術です。

もちろん、骨の変形が重度な場合はピンを使った骨の移動が必要不可欠です。しかし、グレードや症状によっては、金属を体内に残さず、この「溝を作る処置」だけで対応できるケースもあります。

「体内に異物を残さないこと」は、将来的なトラブルのリスクを最小限に抑えることにつながります。

4. 最後に

当院では、ワンちゃんの足の状態をしっかりと見極め、現在の症状を治すことはもちろん、「将来のリスクまで考えた術式」を第一に提案していきたいと考えています。

他院で手術を受けた後のトラブルや、セカンドオピニオンも随時受け付けております。
「術後の傷がなかなか治らない」「足にしこりができた」など、気になる症状があればお一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

今回のワンちゃんも、これからは違和感なく、思いっきり走り回れることを願っています!